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俺はマスクドナイト  作者: yamaki
第二部 VS魔法少女
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3-4.


 数日後、シロがゲスト出演するファミリアショーはマジマジに投稿された。

 ゲストに他の使い魔を招いた場合のファミリアショーの進行の流れは、凡そ固定化されていた。

 まずはゲストである魔法少女とその使い魔の紹介を行い、次にゲストの使い魔に関するトークである。

 最後にマジゴロウの使い魔であるガロロと共に、ゲスト使い魔の真の力をお披露目するのだ。


「良かったなー、シロ。 マジゴロウがバイクに抱き着く変態じゃ無くて…」

「○○○…」


 何時ものように閉店後の喫茶店メモリーで、千春たちはファミリアショーの視聴を行っていた。

 店内に持って来たパソコンの前で、寺下がサービスで淹れてくれたコーヒーと共にシロの活躍を眺める。

 画面の中でシロは何時ものようにバイクと合体して見せて、千春とマジゴロウとガロロを載せて空を飛んで見せていた。

 ちなみにバイクと一体化したシロは完全に無機物のそれなので、ドラゴンにも抱き着くマジゴロウでも流石にNGらしい。

 そのためこの状態ではマジゴロウに弄ばれないことに気付いたシロが、バイクから出て来なくなり撮影が中断する場面もあったのは関係者だけの秘密である。


「いいなー、お兄さん。 私もファミリアショーに出たかったな…」

「別に俺は変わっても良かったんだぞ」

「駄目だよ。 もう世間的には、シロちゃんの飼い主はマスクドナイトNIOHで決まっている物。 そこで私が出てきても顰蹙を買うだけだって…」


 天羽の言う通り世間一般では、マスクドナイトNIOH姿の千春がシロのバイクで乗っているイメージを持たれているらしい。

 実際にファミリアショーでシロの能力のお披露目の際に、千春も変身をお願いされたマスクドナイトNIOHとなって見せた。

 自分で言うのも何だがマスクドナイトNIOHになった自分が、翼の生えたバイクに乗る絵は完全に特撮物のそれである。

 バイクに少女と言う絵も捨てがたい物があるが、やはりあのシロに一番似合うのは千春であろう。


「ああ、ワンちゃんが大きくなりましたよ!!」

「ガロロの戦闘モードだな。 リューと一緒で、戦いの時には大きくなるんだよ」


 画面の中ではファミリアショーの名物コーナー、ガロロとゲスト使い魔との対決が始まっていた。

 ファミリアショーをまともに見たことの無い彩雲は、小型犬サイズだったガロロが巨大な狼の姿になったことに驚いたようだ。

 魔法少女の役目はモルドンを倒すことであり、そのための戦力である使い魔はただの愛玩物では居られない。

 戦闘モードになったガロロはシロと追いかけっこを初め、バイクの速度に着いて行くほどの脚力を見せつけた。

 こんな風に使い魔同士で張り合わせても問題無いように、ファミリアショーの撮影場所はあの広い牧場で行われているに違いない。


「マジゴロウのガロロは使い魔の元祖みたいな立ち位置だからね。 多分、リューのあれはこのガロロを真似たんでしょう」

「日常モードと戦闘モードの切り替えが無いと不便だろうからな…。 あんな狼が普段から居たら、飼い主の魔法少女は面倒見切れないよ。

 まあこの手の切り替えは漫画やアニメでもある話だし、そこまで珍しい発想でも無いだろうが…」


 古くからマジマジでファミリアショーをやっているマジゴロウは、魔法少女としては最古参に近い筈だ。

 実際にはガロロより古い使い魔も居るであろうが、知名度などを考えればガロロが魔法少女業界における使い魔のスタンダートと言えるだろう。

 普段は可愛らしい日常の友であり、緊急時には頼れる戦力となるガロロ。

 バイクとの合体が必要なシロも変則的ではあるが、このガロロと同じ方針で生み出された使い魔と言えるかもしれない。

 画面の中ではガロロに追い付かれたシロが大人げなく空を飛んでしまい、千春とマジゴロウから文句を言われているシーンが映し出されていた。











 千春は喫茶店メモリーでファミリアショーを見ながら、これを撮影した時の記憶を思い返していた。

 マジマジに公開されている映像は当然のように編集が施されたものであり、カットされたシーンも存在する。

 その公開されなかった場面の一つに、マジゴロウと交わしたシロの生みの親に関する会話の一部があった。


「…それじゃあシロちゃんは捨て犬…、じゃなくて捨て使い魔なんですね。 本当に酷い話です。

 シロちゃんの生みの親である魔法少女からは、何か連絡とかは無いんですか」

「それが全く…。 この子を頼みますって手紙を貰ったきりで、後は全く音沙汰無し。 その魔法少女がどんな奴かも分からないんですよ。

 シロ…、お前の生みの親も薄情だよなー」

「□□□□□!!」


 バイクと合体できる生きたぬいぐるみもどきが尋常な生物である筈も無く、シロという存在は明らかに魔法少女が生み出した物である。

 実際にシロが千春の元で来たあとで、生みの親と思われる魔法少女から一回だけ手紙が来たこともあった。

 しかしその内容はシロを千春に丸投げするような内容であり、実際にその日からシロは常に千春の傍で生活していた。

 コッソリ親元に帰っているという話も無く、本当にシロはその顔も名前も分からない謎の魔法少女との縁が切れているようだった。

「魔法少女業界に颯爽と現れた男性変身者に、その足となる能力を持つ使い魔。 お二人の出会いはまさに運命的ですよね…」

「はははは。 まあ、正直言ってシロには色々と助けられていますよ。 こいつが居なかったら、結構ヤバいことになってたでしょうから…」

「私もシロちゃん目当てでNIOHさんの動画を見させて貰ってますけど、本当にシロちゃん大活躍してますよね。 NIOHさんと一心同体と言う感じで、もうNIOHさんがシロちゃんの飼い主で間違い無いですって。

 もうシロちゃんを捨てた、元の飼い主なんて放っておきましょうよ!!」


 もう千春たちは慣れてしまったが、生みの親に半ば放置されているシロの現状は初めて聞く人に取っては中々重い話だろう。

 生みの親の事など忘れているのではと疑うほどに、千春の元で好き勝手やっているシロの現状も悲劇性を薄めている要因の一つだ。

 マジゴロウの言う通りNIOHチャンネルやこのファミリアショーで共に居る千春とシロは、名実共にパートナーと言える。

 仮に今更生みの親である魔法少女が現れても、シロが千春の元にから離れることに納得する人間は誰も居ない筈だ。


「そうです、使い魔を捨てる魔法少女は本当に軽蔑します。 自分で作り出した物を捨てるなんて、そんな酷いことを…」

「…マジゴロウさん?」

「っ!? はい、この話は終わり。 次は早速、シロちゃんの力を見せて…」


 それまで営業スマイルを絶やさなかったマジゴロウは、このシロの生みの親に関する話をしている時に一瞬だけ素顔を見せたのだ。

 自分のだけでなく他人の使い魔までを強く愛してるマジゴロウとしては、愛らしい使い魔を捨てる魔法少女の事は理解出来ないのだろう。

 顔も名前も分からないシロを作り出した魔法少女に思う所があるのか、マジゴロウは撮影中であることを忘れる程に強い敵意を持ったらしい。

 千春の呼びかけでマジゴロウはすぐに正気を取り戻したが、あの一瞬の変化は衝撃的だったので今でも鮮明に思い出せる。

 結局このやり取りは本番でカットされていたが、こんな彼女であったからこそ千春にあのような話を持ちかけたのだろう。






 一連の撮影が終わった後、牧場内の家屋に案内された千春は此処のサービスで朝絞りの牛乳を出されていた。

 この牧場の牛から搾った牛乳らしいく、千春は物珍し気にその牛乳をチビチビと飲む。

 そんな風に牛乳を味わう千春に対してマジゴロウは、個人的な話があると言いながらある動画を見せてきたのだ。

 それはモルドン同士が戦う奇妙な映像であり、この動画自体はそれなりに興味深い物であった。

 しかし話を持ちかけてきたマジゴロウの真剣な表情からも考えて、これが単なる面白い動画の紹介という訳では無いだろう。

 とりあえず千春は無言のまま動画を最後まで見ており、画面の中で熊のようなモルドンが夜の闇に消えた所でそれは終わりを迎えた。


「あの…、この動画が何か?」

「NIOHさん。 実はこの動画に出てくるモルドンは…、モルドンではありません。 こっちの熊のようなモルドンは、魔法少女が生み出した使い魔なんです」

「…はっ?」

「私も色々と調べたんですが、モルドンと戦うモルドンの話はこれが始めてじゃないんです。 きっと全部、この子の仕業ですよ。

 NIOHさん、お願いです! 私と協力してください、あの可哀そうな使い魔を止めるために…」


 マジゴロウの話が本当であればあの動画はモルドン同士の奇妙な映像ではなく、魔法少女の使い魔とモルドンの戦いという平凡な映像であったらしい。

 しかしあの熊のようなモルドンはどう見てもモルドンのそれであり、使い魔と言われても流石に信じられない。

 とりあえず今回のファミリアショーでシロが呼ばれた理由の一つは、飼い主であり対魔法少女の専門家になりつつある千春を呼ぶ口実があったようだ。

 魔法少女の使い魔という魔法少女絡みの一件へとまた巻き込まれてた千春は、天を仰ぎながら溜息を漏らした。




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