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俺はマスクドナイト  作者: yamaki
第二部 VS魔法少女
53/384

3-1. VS ????


 マスクドナイトNIOHこと千春の二度目のお仕事は、JKの連絡先という報酬と共に無事に完了した。

 街に戻ってきた千春は一晩休んだ後、一応バイトは継続している事になっている喫茶店メモリーへと顔を出す。

 長旅で疲れたのか起きたのは昼頃であり、その後も部屋でダラダラとしていた事もあって時刻は既に夕方時分になっていた。

 千春のテレビ出演などが原因で一時期は賑わった店も、今では常連客しか来ない良く言えば落ち着いた店へと戻っていた。

 一応気を使って店の正面を避けて裏口から店内に入った千春は、関係者限定の休憩室で予期せぬ顔を見付ける。


「あれ、妹。 何でお前が此処に居るんだ…」

「兄さん、帰ってたんですか」

「ああ、NIOH様! 今回も凄かったですね、流石はリアル変身ヒーローです!!」


 そこには千春の妹である彩雲が、クラスメイトである甲斐と共に居たのだ。

 二人とも学校帰りなのかどちらも制服姿であり、仲良く休憩室に置かれたパソコンの画面を覗いていた。

 妹たちの存在も気になるが、それより甲斐の言葉が気になった千春は嫌な予感を覚えながら真っ先にパソコンの方へと顔を向ける。

 そこには予想通り、先日に繰り広げられたあんずと梨歩との戦いの映像が流れているでは無いか。

 どうやら仕事熱心なゲームマスターは早速、千春の仕事振りを世間に広めたらしい。


「うわっ…、予想はしていたけどマジかよ…」

「ねぇ、NIOH様。 連絡先まで交換して、随分とNASAって魔法少女と仲良くなったみたいですが…。 もしかしお二人はお付き合いを…」

「無い無い、別にそういうことは全く…。 …てっ、そこまで撮られているのか!?」

「はい、動画のコメント欄を見るとヒロイン登場って盛り上がってますよ!!

 既にファンの中には、マスクドシリーズのBGMを付けて、エンディング風に改変しているファン動画も上げてますし…」

「勘弁してくれよ…。 うーん、後で佐奈に謝っておこう…」


 彩雲たちに許可を取って軽く動画を確認したところ、以前の有情の時のように先の一件の流れはほぼ網羅されていた。

 今回も千春以外の個人情報には気を付けているようで、佐奈たちの顔には目線が入っており彼女たちをぼかされている。

 NASAと言う魔法少女としての名前は隠されていないので、今後佐奈はNASAとして一躍全国デビューした事だろう。

 動画の中には傍から見たラブコメ展開としか言えない、千春と佐奈のやり取りもしっかり納めらていた。

 確かに千春でも何も関係ない視聴者としてこれを見たなら、"ヒロインイベント来たー"などと勝手なことを考えいたことだろう。

 とりあえず佐奈への初の連絡内容が決まった千春は、天を仰ぎながら溜息を漏らした。






 例の動画の件を佐奈に連絡したところ、数十分後に千春が送った文量の優に10倍のテキストが返ってきた。

 千春がやった事では無いとは言え、無断でNASAとしての佐奈がネタにされた事に対して怒りを覚えてもおかしくは無い。

 しかし当の佐奈は特に怒っている様子は無く、その文面からは何処から喜んでいる節すらあった。

 あんずや梨歩などフォローも佐奈が引き受けてくれたので、とりあえず今回の動画に出演している被害者への対応はこれでいいだろう。

 本当は色々と気にするべきなのだろうが深掘りするとどつぼに嵌りそうなので、見て見ぬふりをして自分の中でこの話を終わらせた。


「何よ、幼馴染は敗北フラグって…。 私とあんたとは、そんなんじゃ無いってーの」

「放っておけ、ネタにしているだけだから。 ネットの反応を真に受けても仕方ないことは、ジャーナリスト志望のお前も理解しているだろう」

「ふん、乙女心は複雑なのよ。 そっちこそ、可愛い女子高校生と仲良くなって良かったわねー。 正義のマスクドナイトNIOHさん、ネットでも評判よー」


 千春の帰還を聞きつけて喫茶店メモリーに顔を出した朱美は、ネット上での自身への扱いに憤っていた。

 前回の有情の動画だけを見れば、千春と行動を共にしていた朱美は密かにマスクドナイトNIOHのヒロインポジションと見られていた。

 しかし今回の動画でNASAと言う強敵が登場したことで、朱美は一気にヒロイン格から引きずり降ろされた扱いになっているらしい。

 元ヒロインとして自身がネタにされている事が受け入れがたいのか、朱美は憤懣やるかたない様子で千春に絡む。


「…それよりいいか、彩雲。 さっきは聞きそびれたけど、何でお前が此処に居るんだ」

「ああ、それは…」

「聞いて下さい、NIOH様! 彩雲さんはNIOHチャンネルのデザイン担当として、チャンネルに投稿するイラストを作成しているんですよ!!」

「それは…、ペンタブって奴か? お前、デジタルイラストもやるのか?」


 例の動画の件と朱美の登場で先延ばしにしていたが、そもそも千春の妹である彩雲が何故喫茶店メモリーの休憩室に居るのか。

 その問いに対して答えようとする彩雲に先んじて、甲斐が自慢するかのように千春に対してある物を見せながら話す。

 甲斐が見せてきたのはペンタブブレットと呼ばれる、デジタルイラストを描くためのアイテムだ。

 どう言う訳か彩雲はこのペンタブを使って、此処でデジタルイラストを描いているらしい。

 一体どのような経緯でそうなったか理解出来ず、千春は思わず妹の顔をまじまじと眺めてしまう。











 彩雲と甲斐の話によれば、そもそもの発端はNIOHチャンネルの主である天羽であったらしい。

 ご存じの通りマスクドナイトNIOHのそもそもの始まりが、彩雲が趣味で描いたスケッチである。

 魔法少女に目覚めた彩雲は自身の思い描いたオリジナルヒーローを形にして、それを千春に授けたのが全ての始まりであった。

 人目に付くの嫌がった彩雲の存在を隠すために、世間的には千春のマスクドナイトNIOHの力は天羽が生み出したことになっている。

 しかしあくまで天羽は魔法少女の力担当であり、マスクドナイトNIOHとしてのデザイン担当は別に居ることはチャンネルでも紹介されていた。


「その証拠として彩雲さんが描いた絵は、度々NIOHチャンネルで紹介されている事はNIOH様もご承知の通りだと思います。

 けれどもそれは全て、天羽さんがアナログイラストをスキャナーで取り込んで公開する形でした」

「天羽さんとしてはネット上で扱いやすいデジタルイラストの方が嬉しいと言うことで、私にデジタルイラストを進めてきたんです」

「それでペンタブまで用意して、デジタルイラストにチャレンジしているのかよ」

「まだ練習中ですけどね。 人に見せらせるようになるには、もう少し時間が掛かりそうです…」


 NIOHチャンネルを通してネット上で公開する場合、スケッチブックで描かれたアナログのイラストでは色々と制限が多い。

 天羽としては彩雲にデジタルイラストを描いてくれる事が理想的であり、それを実現するために彩雲へこのようなお願いをしたのだろう。

 元々絵が描くのが好きな彩雲としても、デジタルイラストと言う新ジャンルを開拓する事には不満は無いらしい。

 楽し気にデジタルイラストに苦戦していると語る彩雲の姿は、兄としては喜ばしい限りである。


「…わざわざ此処で練習している理由は、言われなくても分かったぞ。 スケッチブックならまだしも、こんな物をあの人に見せられないからな。

 当然、今日のことはお袋には…」

「はい、お母さんには甲斐さんと一緒に勉強していることになっています。 実際にこの後で一緒に勉強もするので、嘘では無いですから…。 最近は美術部の活動日で無い時は、何時も此処でデジタルイラストの練習をしてます」

「私としてはこの位は全然問題ありません! むしろNIOH様やNIOHチャンネルに関われる機会ですから、こちから進んで協力しますよ」

「あの寺下さんの事だから、事情を聞けば喜んで此処を貸してくれるか…。 まさか俺の知らない所で、そんな事になっているなんてな…」

「兄妹なんだからコミュニケーションくらい取っておきなさい。 彩雲ちゃんが此処でイラストを始めたのは、結構前からよ…」

「へいへい…」


 母親との折り合いが付かなかったこともあり、高校卒業と同時に家を出た千春と妹の彩雲が顔を合わす機会はそう多くはない。

 最近は魔法少女関連の依頼で忙しかったこともあり、彩雲がデジタルイラストに挑戦しているなど思いも寄らなかった。

 下手をすれば朱美の方が彩雲の事を把握している可能性があり、千春は兄として若干の寂しさを覚えるのだった。




いよいよ第三話開始ですが、今回の相手の話まで行けなかったのでまたネタバレ防止タイトルになっています。

そんなに引っ張る事も無いので、多分次くらいにはタイトルが公開できる筈です。


では。

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