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俺はマスクドナイト  作者: yamaki
第二部 VS魔法少女
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1-7.


 間野(まの) 朋絵(ともえ)、それが会議室に現れた少女の名前だった。

 わざわざ平井がこの場に間野を呼び出したことからも分かる通り、この少女はただの女子中学生では無い。

 魔法少女、実はこの間野は有情の後に魔法少女としての力に目覚めて、そして有情に敗北してクリスタルを奪われた被害者だったのだ。


「悪いのは周りの馬鹿どもなんです。 あれだけ先輩に守って貰っていたのに、先輩のことを褒める処か馬鹿にして…」

「いやー、でも話によると君もあの有情って子にやられたんだろう?」

「それは私が悪いんです。 私が先輩の気に障ることをしてしまって…」

「なにこの子、あの有情って子の熱狂的なファンなの?」


 間野は一貫して有情側に立っており、彼女を庇うような言葉を繰り返していた。

 平井から聞いた話が本当であれば、この間野という少女は有情に倒されてクリスタルの一部を奪われている。

 クリスタルを完全で無ければ間野の魔法少女としての力が蘇ることは無く、何時かのウィッチと同じ状況になってしまっていた。

 有情に対して恨みを持つのが自然である筈なのに、間野は決して彼女のことを悪くいう事は無かった。


「なぁ…、もしかして今日のことをあいつに知らせたのはあんたか?」

「っ!?」

「間野ちゃん! あなたも言ってたじゃない、あの子をこれ以上は放ってはおけないって…」

「…だからと言って、力尽くで先輩を止めるんですか! こんな人たちまで呼び寄せてまで!!」


 有情の被害者であり魔法少女でもある間野の話を千春たちに伝えたくて、平井は彼女を今日の集まりに呼んでいたのだろう。

 しかしそれは有情の味方であることを隠そうとしない少女に、有情を貶める計画をしていることを伝えることになる。

 半ば勘であったが千春の投げかけた問いに対する反応を見ると、有情の情報源はこの間野であったらしい。

 どうやら平井と間野の意思疎通が不十分だったらしく、今回のようなディスコミュニケーションが起きたようだ。

 それに巻き込まれる形で予期せぬ遭遇戦に巻き込まれた千春たちには溜まった物では無く、自然と平井に対する視線が厳しい物となっていた。











 かつて間野は有情に救われたことがあるようで、それが切っ掛けとなって有情を先輩として慕っているようだ。

 そんな彼女としても流石に今の有情の状態はまずいと感じており、どうにかして有情を救わなければならないと考えていた。

 しかし有情を救うと言う目的までは一致しているが、平井がマスクドナイトNIOHという戦力を使った強硬策に出たことが不満だったらしい。

 有情に対する贔屓目もあってか強硬策にはまだ否定的な間野に対して、平井と先ほど直に戦った千春の意見は対立していた。


「上村さんが言うには、彼女の攻撃的な態度は怯えの裏返しなんです。 今の彼女が未だに自由で居られる理由は、彼女の持つ魔法少女としての能力にあります。

 自分の今の立ち位置を守るために、彼女は自分から能力を奪おうとした魔法少女を返り討ちにした。 それは自分の後釜になろうとした間野ちゃんも…」

「そんなことは…ありません。 先輩は…」

「…どうせあんたも見ていたんだろう。 あの有情って子は問答無用で俺たちを襲ってきた、もう人に向かって力を使うのに躊躇いが無いんだ。

 これ以上エスカレートしたら、あいつは人を殺すところまで行くかもしれない。 今止めてやらないと、あいつは戻ってこれない所にまで落ちてしまうぞ」


 有情を心配するあまり今日の情報を流した間野としても、あの店での出来事は衝撃的だったようだ。

 まさか有情が問答無用で平井たちに襲い掛かり、それまで陰で有情を庇ってきた上村をも病院送りにしてしまった。

 話によると上村の体はそれなりに重傷らしく、暫く入院生活が必要なレベルらしい。

 自身が被害者となっても尚目を背けていた有情の闇、それを目の当たりにした間野の顔色は明らかに曇る。


「…悪いが俺は今度こそ、あいつを倒すぞ。 それでいいですよね、平井さん」

「勿論です、そのためにあなたを呼んだんですから…。 後始末は私の方で何とかします、絶対に千春くんたちを守って見せます。

 だからお願いです、あなたの力で有情 慧を止めて下さい」


 悪いことをした子供を説教するのは、まともな大人としての務めだろう。

 有情の現状を把握した千春は、絶対に彼女を止めなければならないと改めて決意を固める。

 平井はそんな千春に対して深々と頭を下げて、全面的に彼をバックアップすることを誓った。


「でも本当にあの子に勝てるの、千春? あの有情って子の力、予想以上に厄介そうだけど…」

「ふふふ、我に秘策有りだ。 あの有情って子の能力は人間相手ならほぼ無敵だろう、人間相手ならば…」

「ああ…」


 これまで何人もの魔法少女を倒しており、つい先ほどもその力で千春を翻弄して見せた有情に勝つことが出来るのか。

 朱美の問いに対して千春は意味ありげな笑みを浮かべながら、持ってきたバックの方に目を向ける。

 それを見た朱美は何かを察したように、千春と同じような不敵な笑みを見せた。

 両者の視線が重なる会議室の隅に置かれたバックは、バイブレーション機能でもあるかのように一人でに揺れていた。











 自身が狙わていることを知った有情は、あの店での一件を境に雲隠れしてしまう。

 自宅には帰っておらず、事件以降は一度も通っていない学校にも当然姿を見せない。

 有情の情報源である間野が辛うじて連絡を取り合っているようだが、有情は決して自身の居場所を明かさないらしい。

 しかし実は千春たちは有情の行方を捜すことは、余り重要視してなかった。

 何故なら千春たちは、あの有情が絶対に姿を見せるであろう瞬間を把握していたからである。


「はぁはぁ、これで終わりだよ!!」

「■■■■っ!?」


 夜の街、外灯に照らされた街の広場で繰り広げられた少女と異形の戦いに決着が付けられた。

 魔法少女としてそれなりに活動している少女は、自身の非力な攻撃力をを補うための武器を見出していた。

 ホームセンターで調達したらしい釘などの金物、これを念動力で飛ばしてモルドンのクリスタルを破壊したのである。


「…おい、あれって例の犯罪者だろう。 警察を呼ばなくていいのか?」

「馬鹿、警察なんて役に立つか。 下手な真似をしたら、俺たちまで目を付けられるぞ」

「警察官がひとり、病院送りにされたらしいからな…。 くそっ、なんであんなのが野放しに…」


 まだそれほど遅くない時間なので、騒ぎを聞きつけた10名前後の地元住人が有情の戦いを観戦していた。

 見事に街中で暴れるモルドンを倒した有情であるが、残念ながら彼女に対する賞賛の声は皆無である。

 既に有情の悪行は街中で広まっており、幾らモルドンを倒してくれたとしても彼女が危険人物であることは変わらない。

 有情はそんな外野の野次や心の内の思いを無視して、足早とこの場から立ち去ろうとする。


「お疲れさん、意外にやるじゃ無いか。 危なかったら、手伝ってやろうと思ったけど…」

「ちぃ、やっぱり現れたのかよ。 おっさん」

「おっさんは止めろ。 俺はまだ二十歳になったばかりの若造だ」


 しかし広場から立ち去ろうとする有情の前に、広場にバイクごと入ってきた一人の青年が現れる。

 有情の正面でバイクを止めて、ヘルメットを外した千春は気安い態度で有情に話しかけていた。

 魔法少女はモルドンを倒せる唯一の存在であり、魔法少女が居なければモルドンは決して止めることは出来ない。

 今の有情の立ち位置は魔法少女としての役割があっての物であり、それを維持するためには魔法少女の仕事を果たし続けなければならない。

 つまりは有情は魔法少女として必ずモルドンを止めるために現れる、千春たちが探すべきは有情では無くモルドンであった。

 そしてモルドンの出現時間や位置を占うことが出来るウィッチが身内に居る千春たちに取って、それを知るのは容易いことなのだ。


「前回は自己紹介も出来なかったからな…、改めてさせて貰うか。

 俺は矢城 千春、マスクドナイトNIOH! 今からお前を倒す者の名だ!!」

「…うざいうざいうざい! これは私の力だ、私の力なんだ。 奪われてたまるかぁぁぁぁ!!」

「いくぞっ…、変身っ!!」


 既に有情のテレパシー能力を把握している千春は、有情に対する敵意を取り繕うことはしない。

 堂々と有情に対して宣戦布告をしながら、二本の指を魔法のステッキに見立てた変身ポーズを取る。

 マスクドナイトNIOH、青い鎧を纏うUNの型となった千春はヴァジュラを構えながら有情へと向かっていた。



これで連続更新一週間達成です。

この調子で出来るだけ、更新を続けられるように頑張ります。


では。

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