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俺はマスクドナイト  作者: yamaki
第二部 VS魔法少女
36/384

1-3.


 あの平井と言う婦人警官との出会いから数日後、千春と朱美は彼女の職場がある街へと向かっていた。

 今回の相手はモルドンでは無く魔法少女であり、流石にこれを動画のネタにすることは出来ない。

 そのため今回は天羽や寺下は不在であり、お目付け役を称して首を突っ込んできた朱美との二人旅である。

 後ろに朱美を乗せてバイクを運転する千春、二人のタンデムツーリングは数時間の走行を経て目的地まで向かった。


「よし、着いたぞ。 此処が待ち合わせの店だ…」

「あぁぁ、疲れた…。 もう少し丁寧に運転しなさいよ…」

「バイクで無茶を言うなよ、これでもスピードは落としたんだぞ。 婦人警官に会いに行く途中で、スピード違反で捕まるのも洒落にならないしな…」


 平井に待ち合わせ場所とで指定された飲食店へと辿り着いた千春たちは、駐車者でバイクから降りる。

 付き合いが長いこともあり朱美は、何度か千春のバイクの後ろに乗ったことはあったが此処までの長旅は初めてだ。

 途中で休憩も挟んだのだが、ずっと同じ体勢で居たのは辛かったようで朱美は腰付近を擦りながら不満を漏らす。

 千春としても危険な二人乗りということもあり安全運転に努めていたのだが、その気遣いは朱美に届いていないようだ。


「待ち合わせの時間まで、まだ少しあるな…。 ていうか、何で待ち合わせ場所が警察署じゃ無いんだ? 警察からの仕事なんだよな、これ?」

「多分、警察からの仕事じゃ無いのよ。 今回の件は恐らく、あの平井って婦警の個人的な依頼なの」

「えっ、そうなのか!?」

「その位、察しなさいよ…。 普通に考えて警察から直々から依頼が来るなら、あんな小娘が窓口になる訳ないでしょう?

 あの時も別に警察からのお願いなんて、あの婦人警官は一言もは言ってなかったじゃない」


 本気で警察と言う組織がマスクドナイトNIOHに協力を持ちかけるならば、その切っ掛けがあんなメールである筈が無い。

 運よく天羽がメールの内容を信じて千春たちに連絡してくれたから良かった物の、場合によっては悪戯として判断される可能性だってあったのだ。

 その後で平井が直接千春たちに会った時も、彼女はあくまで個人的な依頼という形で話を持ちかけていた。

 流石に婦人警官という肩書までは嘘では無いだろうが、この一件が警察組織からの依頼ではない事は間違い無いだろう。


「すいません、そんな小娘の頼みごとに巻き込んでしまって…」

「あっ…。」

「い、いえっ!? 別にそういう意味では…」


 まだ待ち合わせ時間まであったこともあり、駐車者で会話をしていた千春たちの前に平井が姿を見せる。

 警察官らしく時間前行動で待ち合わせ場所に来た所で、先ほどまでの千春たち話が耳に入ってしまったたようだ。

 話の流れとは言え年上の婦人警官を小娘と言ってしまった朱美は、自身の失言を聞かれていたことに慌てふためく。

 確かに平井は下手をすれば朱美の年下と思われそうな童顔な婦人警官であるが、流石に小娘呼ばわりはあんまりだろう。

 自然と千春たちは互いに無言にあり、駐車場で暫く微妙な空気が流れていた。






 あの駐車者上での微妙な再開の後、再起動した彼らはとりあえず待ち合わせの店へと入った。

 平井と顔見知りらしいウェイターの案内でテーブル席に座った千春たちは、注文をした後で本題の話に入ろうとする。

 しかし注文を受けたウェイターと入れ替わるように突然、中年の男が千春たちの前に姿を現したのだ。


「平井ぃぃぃっ! お前何を勝手なことを…」

「う、上村さん!? どうしてことに…」

「お前が陰でコソコソしている事なんて、俺にはお見通しなんだよ!!」

「すいません、でもこの矢城さんならきっとあの子も…」

「それが勝手なことなんだよ! 警察官が軽々しく、民間人を巻き込むんじゃない!!」


 どうやら平井の知り合いらしい中年の男は、明らかに怒りの表情を見せながら怒鳴りつけてくる。

 それを受けて平井は見るからに狼狽を見せた、両者の力関係は中年の方が上らしい。

 話の流れからして平井の上司らしい中年の男は、平井と同じく警察官なのだろう。

 厳つい顔つき、皺が目立つスーツ姿、まるで昭和の刑事ドラマに出てくるような男だ。


「ご迷惑をお掛けして、申し訳ございません。 この馬鹿のために、わざわざこんな所まで来てもらって…。

 自己紹介が遅れてすいません。 私はこの馬鹿の上司の上村と言います」

「ど、どうも…。 矢城 千春と言います」

「私は八幡 朱美です」


 平井に対して一喝した中年の警察官上村は、今更ながら蚊帳の外に置いていた千春たちと自己紹介を交わす。

 上村の圧力に飲まれてしまった千春たちは、何処か呆然とした様子で自分たちの名前を名乗るのだった。











 朱美の予想通り、今回の一件はこの平井と言う婦人警官の独断による物であった。

 平井という一個人からの依頼では話を聞いてくれないと考えて、婦人警官と言う自身の肩書を利用したのだ。

 ただし根が真面目なのか彼女の偽装は稚拙であり単純な千春なら兎も角、朱美にはすぐに察せられるような物であった。

 そして平井が独断で千春に依頼をするしかなかった理由の一つは、この見るからに頑固そうな風貌の上村という上司にあるらしい。


「…上村さん。 残念ですが魔法少女に対抗できるのは、魔法少女だけなんです。 もうあの子には言葉は通じません、矢城さんの力を借りるしか」

「俺たちは警察官なんだぞ! どんな理由があろうとも、未成年の少女を危険な目に合わせる訳にはいかない。 ただでさえもう被害が出ているんだ、これ以上は…」


 数日前に千春たちに依頼を持ちかけた時と同じように、平井は暴走するこの街の魔法少女を止めるには魔法少女の力を借りるしか無いと主張する。

 しかし上村は魔法少女云々以前に、未成年の少女でしか無い魔法少女を危険に巻き込むことを懸念しているようだ。

 平井の話による既に自主的に動いてくれた魔法少女が返り討ちにあっており、既に犠牲者が出ている状況で更に犠牲者を増やしたくないのだろう。

 どうやらこの上司と部下の意見は互いに平行線になっており、どちらも歩み寄ることが無かったようだ。


「だから矢城さんなんですよ! 見て下さい、彼が未成年の少女に見えますか!!」

「ん、そういえば…」

「ああ、上村さんはあんまりテレビとか見ない人ですからね。 駄目ですよ、少年課の人間ならもっとアンテナを広げてないと、若い人の話に付いていけなくなります」

「五月蠅い。 そういう流行りに付いていくことは、二十年前から俺に向いてないと悟っているんだ。 ようはハートなんだよ、ハー、心が通じ合えば…。

 しかしお前、一体どういうつもりでこの人たちを…」


 平井の言葉に促された上村は、そこで此処に居る千春たちの不自然さに気付いたらしい。

 此処に居るのは平井が密かに呼び寄せた魔法少女である筈なのだが、実際に居るのは二十歳前後の男女だ。

 もしかしたら女の方が老け顔なだけで、実際は高校生くらいの若い娘なのかもしれない。

 しかし平井の自信満々の様子を見るとそれも違うようで、上村は訝しみながら千春と朱美の姿をみていた。


「矢城さん、この石頭にあなたの変身を見せてやってください! お願いします!!」

「えぇぇ…」

「やりなさいよ、バカ春。 そうしないと話が進まないわよ…」


 最近それなりにメディアを騒がせている千春であるが、、この上村はその存在を把握していないらしい。

 未成年の少女の助太刀を拒否する上村でも、一応二十歳を超えている男性である千春の助太刀なら認めるに違いない。

 平井は千春にたいして、魔法少女に対抗できる力を持っていることを上村に証明して欲しいと言う。

 このいざこざを止めるにはそれしか選択肢は無いと、朱美の後押しを受けた千春は渋々と席を立って上村の前に立った。


「ん、なんだ…、これから何を…」

「…変身」

「なっ!?」


 一応お約束として例の二本の指を魔法のステッキに見たてた例の変身ポーズと共に、千春はマスクドナイトNIOHの姿へと変身を果たす。

 目の前の青年の体が光に包まれた途端、鎧を纏った戦士へと変貌を果たしたことに対して上村をは度肝を抜かれたようだ。

 それは頑固な上村も納得せざるを得ない、魔法少女の力を持つ大人の青年が彼の前に現れた瞬間だった。



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