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俺はマスクドナイト  作者: yamaki
第四部 始まりの魔法少女
295/384

6-3.


 劇場公開を前提としない特殊な形態で作成される、マスクドシリーズのビデオ映画作品。

 当初はレンタルビデオ用に作成されていた経緯から今でも"ビデオ映画"と呼ばれているそれらは、基本的には一種のお祭り騒ぎ的な内容となることが多い。

 過去のマスクドシリーズのキャラクターたちがゲスト出演して、ファン垂涎物のクロスオーバー的な展開が繰り広げられるのだ。

 それだけなら劇場公開用に作成された作品と変わりないように思えるが、劇場公開を前提しないビデオ映画は前者と比べて色々と縛りが緩いらしい。

 それ故にビデオ映画作品には思い切った内容の物も多く、コアなマスクドシリーズファンに取っては絶対に見逃せない一品だろう。


「そして今日、マスドナイトNIOHが伝統あるマスクドシリーズのビデオ映画に出演するのだぁぁぁっ! はははははっ!!」

「千春さん…」

「○○…」

「☆☆…」


 その緩さのお陰もあって出演依頼が舞い込んで来たマスクドナイトNIOHこと千春は、二度目の映画撮影に挑むことになる。

 しかも前回は出演時間1分程度のちょい役だったのに対して、今回は5分以上の出番がある大躍進だ。

 特撮オタクでありマスクドシリーズオタクである千春に取っては、まさに夢のような展開であろう。

 早朝にも拘わらずハイテンションな千春は、今日の撮影が行われる現場近くで一人高笑いしている。

 その隣にはシロとガロロを引き連れた真美子が居て、若干白い目で無邪気に笑う大きな子供の姿を見ていた。


「ふぁぁ…。 すいません、まだ眠気が覚めなくて…。 千春さんたちは、朝がお強いんですね」

「牧場の手伝いをするときは、何時ものこの位には起きているので…」

「逆に佐奈の方は、意外に朝弱いんだなー」

「はい…、どうもそういう体質らしくて…」


 千春たちの少し後ろでは佐奈が、時折欠伸を零しながら頼りない足取りで続いて行く。

 まだ意識が完全に覚醒していないようで、半開きになっている目は今にも閉じてしまいそうだ。

 時折体をふらつかせる佐奈の歩調に合わせて、千春たちはゆっくりと今日の撮影現場へと向かって行った。





 前回の映画ではマスクドナイトNIOHの登場はサプライズ扱いとなっており、映画公開までは極秘とされていた。

 しかし今回のビデオ映画では二度目の出演ともあって特に縛りは無く、事前にCMなどでNIOHの登場を示唆する予定にもなっているらしい。

 そのため千春が特撮オタク仲間である佐奈に対して、ビデオ映画出演の話を自慢するのは至極当然な流れであろう。

 そして一特撮ファンであり千春に対して淡い思いを抱いている佐奈が、この絶好の機会を逃す筈が無い。

 丁度学生たちが夏休みに入る時期だった事もあり、佐奈は思い切って撮影見学を申し出たのだ。


「真美子さん、今日はありがとうございます。 昨晩泊めて貰った上に、車で送って貰って…」

「お礼なら叔父に行ってください。 私も佐奈さんと同じ立場なので…」

「牧場の朝飯は美味かっただろう? 特に牛乳が良いんだ、やっぱり新鮮な食べ物が一番だよな」


 特撮撮影は諸々の理由で早朝に行われることが多く、その過酷さは関係者の間で語り草になる程である。

 千春の出番が来る今日の撮影も早朝から行われるため、佐奈は千春の居候先である牧場の人たちの好意で前日入りしていた。

 真美子が遊びに来た時に使われる部屋に寝具を持ってきて、真美子と共に牧場で一晩を明かしたらしい。

 そして牧場の人の車で撮影現場近くまでやって来た佐奈たちは、バイクで一足早く到着していた千春と合流して撮影現場に向かっている。

 本日の撮影は郊外の自然豊かな公園内で行われる事になっており、千春はスタッフの邪魔にならないように少し離れた場所にバイクを停めていた。

 現場に向かうまで少し歩くことになるのだが、眠気覚ましには丁度いい運動だろう。


「今日は朱美さんたちは来ないんですね…。 前は朱美さんたちが撮影の見学に来たんですよね?」

「あいつは前に来たから、今日は止めとくらしいぜ…。 今日は彩雲とかも行きたがってたが、魔法少女バレの件もあるから俺が止めておいた。 その代わりに現場の写真撮影を依頼されたよ、特にNIOHのスーツは念入りに撮ってくれって…。

 ああ、丁度いいから写真の方は佐奈たちが撮っておいていくれよ。 悪いけど俺は撮影に集中したいから…」

「は、はい! 任せて下さい!!」


 千春と違って特撮ジャンルに全く興味の無い朱美は、わざわざ早起きして撮影見学に来る気は無いらしい。

 前回は興味本位もあって撮影見学に付き合ったようだが、今回は不参加を決めたようだ。

 千春によると妹の彩雲も見学を希望したようだが、魔法少女バレから日が経っていない事もあって見学は自粛させていた。

 趣味の絵画の参考にしたかったらしい彩雲は若干不満そうだったが、撮影現場を写真に納めることで渋々納得させたようだ。

 体よく彩雲からの依頼を押し付けられた佐奈であるが、当人は千春から頼られたのが嬉しいのか逆に嬉しそうである。

 朱美から借りた撮影用のデジタルカメラを手渡された佐奈は、すっかり眠気が覚めたようで大事そうにそれを腕に抱える。


「そっちこそ、あのちびっ子たちは留守番なんだな?」

「は、はい! あの子たちはマスクドシリーズにはそこまで興味が無いみたいで…。 ま、真美子さんはシロちゃんの面倒を見るために来たんですよね?」

「はい、千春さんに頼まれたんです。 今日はこの子、出番が無いみたいで…」

「シロのシーンは後で別撮りだ。 こいつは置いて来ても良かったんだが、留守番を嫌がってな…」

「○○!!」


 佐奈が面倒を見ている小学生魔法少女コンビは、今日は佐奈たちに気を利かせて来ていないらしい。

 この機会に二人の距離を縮めろというおませな小学生たちのアドバイスを思い出した佐奈は、若干顔を赤らめながら千春の横顔を見つめる。

 そして煩悩を振り払うように軽く頭を振った佐奈は、話題を自分と同様に撮影現場にやってきた真美子に振る。

 佐奈と違って特撮の撮影現場に興味が無い彼女は、あくまでシロのお守り役として着いて来たらしい。


「な…」

「人が一杯居る?」

「なんですか、これ…」


 そうこう話をしている内に撮影現場として伝えられたロケ地にやって来た千春たちは、そこで衝撃の光景を目の当たりにする。

 撮影現場には何時かの映画撮影の時に見かけた、見覚えのある撮影機材に撮影スタッフの姿があった。

 それだけなら特に驚く事は無いのだが、撮影現場の周囲には明らかに関係者では無い群衆の姿があったのだ。

 彼らの目的は明らかに今から行われる撮影目当てであり、携帯やカメラを手に待ち構えている。

 撮影スタッフたちは集まった野次馬たちが撮影現場に入らないように、両手を広げて自らが壁となってるでは無いか。

 予想外の撮影現場の様子に唖然となった千春たちは、少しの間その場で棒立ちとなってしまう。


「あ、NIOHさん、おはようございます!」

「あ、あんたは研究会の…。 どうして此処に?」

「ご存じないのですか? ネット上で噂になっているんですよ、あのNIOHがまた映画撮影に挑むって…。 この人たちはNIOHさん目当てで集まった野次馬ですよ」

「えぇぇぇぇぇっ!?」


 撮影現場に集結した謎の群衆の正体は、その中に紛れ込んでいた魔法少女研究会の浅田会長が教えてくれた。

 どうやら今日の撮影の件が何処からか盛れており、今話題のNIOH目当てにこれだけの人間が集まったらしい。

 つい先日にもキングモルドンと派手にやり合ったマスクドナイトNIOHは、魔法少女関係者の間で話題沸騰となっている。

 そんな有名人が再びマスクドシリーズの映画撮影に挑むと聞けば、暇人たちが挙って集まるのも仕方ないだろう。

 自分が原因で折角の撮影をぶち壊しかねない状況になっていると知った千春は、悲鳴に近い声で驚きを露にした。



今週は諸事情で日曜のみ更新となります。来週の三連休は頑張れる予定なので、ご勘弁を…。


では。

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