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俺はマスクドナイト  作者: yamaki
第四部 始まりの魔法少女
291/384

5-13.


 キングモルドンが撤退した後、千春は自分を迎えに来たシロに乗って無事に彩雲たちと合流する。

 魔女狩りの残党たちは通報した警察に丸投げして、千春たちはそのまま廃工場を後にしたのだ。

 しかし廃工場で隠し撮りされていた件などもあり、当然ながらこれで一件落着と言う訳には行かない。

 激戦を終えた千春の体が休養を必要としていたため、積み上がっている問題についての話しは翌日に持ち越されることになった。


「よう、集まっているな…。 悪い、少し遅れた」

「遅いわよ、千春。 もうお昼よ、まさか今まで寝てたの?」

「仕方ないだろ、昨日はスゲー疲れたんだよ。 昨晩は寝床に着いた途端に意識を失って、目覚めたのはついさっきだ。 牧場の人たちが、気を遣って寝かしておいてくれてな…」


 昼過ぎに喫茶店メモリーに集まった千春を、先客である朱美が不機嫌そうに出迎える。

 まだ営業を再開していない喫茶店メモリーには、昨日廃工場に呼び出された関係者たちしか居ない。

 ただし本日は平日であるため、彩雲や香などの中学生組と、千春たちの街の外に住んでいる朋絵は流石に呼んでいない。

 集まっているのは店を快く貸してくれた店長の寺下と、千春・朱美に加えて友香・苺葉の高校生組である。


「それでどうなんだ? 魔女狩りが隠し撮りした動画は拡散しているのか?」

「それはそれは盛大にね。 あんたとキングモルドンの激闘はそこらに転載されて、あちこちでバズっているわ」

「何時ものNIOHの動画と違って、プライバシー保護が無いんですよね。 魔女狩りめ…」

「終わった、私の平穏な高校生活…」


 半ば予想していたことであるが、昨晩の廃工場での隠し撮り動画は世間に広まっているらしい。

 そして動画内で魔法少女の力を使っている友香と苺葉は、二人仲良く項垂れていた。

 ゲームマスターがネット上に公開されているNIOHの動画では、本人が望まない限りは動画中で目線加工などが施されて素性が隠されていた。

 しかし魔女狩りの動画にはそのような加工は施されておらず、素顔の友香と苺葉が魔法少女に変身するシーンがばっちり撮られているのだ。

 残念ながら魔女狩りたちは、憎き魔法少女のプライバシーを守る気はさらさら無いだろう。


「友香はいいよね、大人しいな格好で…。 痛いコスプレって何よ、私だって好きであんな格好をしている訳じゃ無いのに!? どうせ私は老け顔よ!!

 あぁぁぁ、なんで私が魔法少女なんかになったのよぉぉぉっ!!」

「いっちー、落ち着いて…。 ほら、私も地味とか結構酷いこと言われているから…」

「いや、ネット上のコメントなんて気にしなくていいから。 俺も結構酷いこと言われているし…」


 友香と苺葉はネット上に晒された魔法少女としての自らの評判を見てしまい、打ちのめされているらしい。

 ネット上での酷評は、マスクドナイトNIOHとして活動している千春にも覚えがある。

 しかし顔も知らない連中の意見を気にしても仕方ないので、千春は嘆き悲しむ多感な女子高生たちを慰めようとする。


「はい、千春くんのコーヒー。 昨日は大変だったね、千春くん」

「あ、店長。 すみません、昨日も危ない目に遭わせたのにまた迷惑を掛けて…」

「千春くんが悪い訳じゃ無いから、気にしなくていいよ。 昨日は助けて貰ったから、お礼を言うのはこっちさ。 さて、他のみんなにもコーヒーのお代わりのを淹れるよ」

「あ、ありがとうございます、店長! この御恩は何時かお返しします!!」


 湯気の立つコーヒーを片手に、店長の寺下が穏やかな笑みを浮かべながら千春の元に近寄る。

 昨晩は魔女狩りとのいざこざに寺下も巻き込んでしまい、廃工場で危険な目に遭わせてしまった。

 しかし相変わらず人の好い寺下は千春を責めることなく、快く店を貸してくれた上にコーヒーを奢ってくれたのだ。

 千春は寺下に対して礼の言葉と共に頭を下げた後、昨夜の一件についての話に戻った。


「よし、店長のコーヒーで眠気も冷めた! とりあえず本題に戻るが、やっぱりあの配信が魔女狩りの真の目的だったのか?」

「そう見るのが妥当でしょうね。 ゲームマスターの切り札、あのキングモルドンの存在を白日の下に晒す。 その目論見は見事に達成したわ。

 流石のゲームマスターも、リアルタイム配信にまで介入できなかったみたい」

「あの時にキングモルドンの話題を出したのも、この配信のためだったんだな」


 以前から魔法少女についての情報を集めているジャーナリスト志望の朱美すら知らなかった、キングモルドンという存在。

 しかしキングモルドンの存在とその役割は、昨晩の配信を通して人々に知られてしまった。

 この世界に魔法少女を生み出した黒幕、ゲームマスターと呼ばれている謎の存在から放たれる最強の刺客。

 そして昨晩の動画内で魔女狩りの死神は、キングモルドンが現れた原因はある魔法少女だと言った。


「スィート・ストロベリー、確かにキングモルドンは君を守るために現れたように見える」

「一週間前に此処が魔女狩りに襲われて、苺葉ちゃんがスィート・ストロベリーになって千春たちを助けてくれた。 そしてその直後に、魔女狩りたちの前にキングモルドンが現れたわ。

 どちらも苺葉ちゃんが切っ掛けとなって、キングモルドンが出て来ているわよね?」

「ぐ、偶然ですよ!? いっちーは何も…」

「友香…」


 苺葉、最初の魔法少女と同じスィート・ストロベリーに変身する高校生の少女。

 最初の説明では彼女は、最初の魔法少女を真似てスィート・ストロベリーになっただけの存在だと語っていた。

 しかしそんなあり触れた存在を守るために、ゲームマスターの最強の駒であるキングモルドンが動くだろうか。

 千春と朱美の視線を前に苺葉が怯えたような表情を見せて、それを友人である友香が庇おうとする。


「魔女狩りの隠し撮りは昨晩の物だけはない。 一週間前の喫茶店メモリーでのやり取りや、その直後に魔女狩りがキングモルドンの襲撃を受けた時の動画も少し前にネット上へ投稿されたわ。

 まだそれ程話題になってないみたいだけど、この一連の動画を見れば私たちと同じ結論に至る人間は居るでしょうね」

「そんな…、それだといっちーは…」

「友香、ありがとう…、私は大丈夫だから…」


 魔女狩りの真の目的は、ゲームマスターがこれまで隠していた秘密を暴くことにある。

 そのための材料として魔女狩りたちは、最初にキングモルドンが現れた一週間前の動画も公開したのだ。

 友人を救うためにスィート・ストロベリーとなった苺葉、そしてその原因を作った魔女狩りを排除するために現れたキングモルドン。

 そして苺葉を守るために再び現れたキングモルドン、これらの要素を繋ぎ合わせれば答えは見えてくる。

 自身の秘密が隠しきれないことを悟った苺葉は意を決して、これまで友香にしか明かしていなかった秘密を打ち明けようとする。


「…多分、みなさんのご想像の通りだと思います。 私は…、私はスィート・ストロベリー。 最初の魔法少女と呼ばれている人間です」


 この世界で最初に魔法少女の力を得た少女、スィート・ストロベリーこと苺葉。

 キングモルドンは最初の魔法少女と言う重要人物を守るために、魔女狩りたちと言う異物をを処理したのだ。

 薄々予感していたとは言え本人の口から語られるとその重みが違う、目の前の少女があのスィート・ストロベリーなのか。

 千春たちはゲームマスターが明らかに特別視している最初の魔法少女を前にして、言葉が紡ぎだせずに暫く絶句していた。



これで今回の話は終わりです。

次回は何時も通り、1~2週間後辺りに開始でよろしく。


では。

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