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俺はマスクドナイト  作者: yamaki
第四部 始まりの魔法少女
289/384

5-11.


 久しぶりにAH-UNの型となった千春は、挨拶代わりとばかりにキングモルドンへ突っ込む。

 背中に背負っている後光から光が迸り、それを推進力として一瞬でキングモルドンの懐に飛び込んだ。

 そのまま千春は手に持ったヴァジュラを少し捻って、刀身の面部分を向けて相手に振るった。


「■■!?」

「そらぁっ!!」


 千春の急激な速度の変化に対応できなかったキングモルドンは、無防備にその一撃を受けてしまう。

 一回り大きくなったヴァジュラから展開している光の刀身、その面部分を使ってキングモルドンの体を抉っていく。

 先ほどまでのやり取りで切り裂くだけの攻撃は、黒カビの集合体であるキングモルドンに効果が無い事は分かっている。

 それならば線では無く面での攻撃だと、千春はヴァジュラをハエたたきのよう使って見せたのだ。

 ヴァジュラの刃を横にしたことで攻撃範囲が広がり、キングモルドンの体は抉り取られてしまう。


「■■、■■…!?」

「また姿を変える気か…」


 このまま体を削られてしまうのはまずいと判断したキングモルドンは、即座に自らの体を崩して黒カビ状に分散する。

 ただし自身の急所である黒いクリスタルは上手く千春から隠しているのか、無数の黒カビにばらけたキングモルドンたちからそれを見つけられない。

 そのまま黒カビたちは四方八方に飛んで千春から距離を取り、再び集結して一つの体へと合体していく。

 千春は相手の次の姿を見定めるため、ヴァジュラを構えながら待ち構えていた。


「ほう、俺とチャンバラする気か…」

「■■!!」


 次にキングモルドンが見せた姿は、二足歩行の巨人形態であった。

 ただし人と言っても顔の部分はのっぺらぼうで、体も黒一色の不気味な異形である。

 そしてその手には千春のヴァジュラに対抗してなのか、黒い光を放つ剣が握られていた。

 モルドン特有の奇妙な声で吠えながら、キングモルドンは黒剣を手にマスクドナイトNIOHへと向かって行く。






 それはキングモルドンに取って初めての経験だったのだろう。

 キングモルドンとって戦いとは蹂躙とイコールであり、自身が負けることなどあり得ないことであった。

 ゲームマスターが魔法少女というシステムを維持するための抑止装置として作られたそれは、仮想敵である魔法少女を上回る性能を備えている。

 ただのモルドンとは全く異なる役割を与えられたそれは、魔法少女を上回る最強の存在であった筈なのだ。


「おらぁっ!!」

「■!」


 ヴァジュラが放つ光の刀身と、キングモルドンが作り出した黒光の刀身が交差する。

 まるでどこぞのSF映画のように千春たちは、光の剣を振るって斬り結んでいた。

 キングモルドンが振るう黒剣の一振り一振りが、普通の魔法少女であれば容易く両断できそうな程の圧力がある。

 しかし千春はそれに真っ向から立ち向かい、キングモルドンと正面から渡り合っていた。


「どうした、その程度かよ!!」

「■■!!」


 キングモルドンに取って魔法少女は、少し本気を出せば簡単に処理できる存在でしか無い。

 事実として複数の魔法少女を備えていた魔女狩りたちを、キングモルドンはいとも容易く処理できた。

 しかし今の目の前の相手はどうだ、本気を出した自分に真向から対抗できるイレギュラー。

 剣と剣との鍔迫り合いの形となった両者は、互いの力が拮抗しているようでどちらも崩れる様子は無い。

 赤い鎧姿の時は全く歯が立たなかったのに、黄金の鎧姿となった途端に互角の勝負が出来るようになったのだ。


「■、■■■!!」

「おっと、そうはいかない!!」

「■っ!?」


 相手の力を上回れない事に対する苛立ちを覚えながらも、相手の動きを拘束出来ていると判断したキングモルドンは次の一手を打とうとする。

 黒カビの集合体であるキングモルドンは無形であり、今は千春に合わせて人型を取っているに過ぎない。

 キングモルドンにとっては体の一部を変化させることは容易であり、それを活用して目の前に居る千春へ不意打ちを仕掛けようとしたらしい。

 しかしAHの型とUNの型との二つの特徴を併せ持つAH-UNの型は、その強化された感覚で相手の動きの起こりを瞬時に察知した。

 そして不意打ちには不意打ちと、背中の後光を推進力として体当たりを敢行したのだ。


「■、■■…!?」

「また姿を変えるか、今度は好きにやらせるかよ」


 キングモルドンの体から槍のような物が飛び出さそうとした瞬間、千春のぶちかましが決まっていた。

 意表を突かれたキングモルドンは動揺したのか、再び体を黒カビ上に分散して千春から逃げようとする。

 しかし先ほどは見に回った千春であれば、今回は積極的に妨害しようとしたのかヴァジュラを銃型にして連射する。

上手いこと隠しているクリスタルに命中してくれないかと内心で期待しながら、千春はヴァジュラから雷撃を放ち続けていた。


「…■、■!!」

「外れか…。 俺はこの手の運試しが苦手だからなー」


 残念ながら千春の運試しは失敗に終わり、黒カビ上の体を集結させたキングモルドンはまた新たな姿へと変貌する。

 千春はヴァジュラを再び両刃形態に戻して、それを構えながらキングモルドンを待ち構えた。

 そしてそこに現れたのは、巨大な顎・長い尾・鱗上の体を備えた恐竜を思わせる怪物であった。


「蜥蜴…、否、恐竜型か? 渡りと言い、爬虫類のモルドンが強キャラになる法則でもあるのか?」

「■■…、■!!」


 過去に千春を苦しめた蜥蜴型の渡りのモルドン、今のキングモルドンはそれに似た雰囲気を持っていた。

 特定の姿を持たないキングモルドンに取って、その姿は数ある形態の一つに過ぎないかもしれない。

 しかし千春に圧されているようにも見える今の状況で、あえて恐竜型の姿を選んだのだ。

 あれがキングモルドンが備える切り札の一つであると直感的に感じた千春は、相手への警戒を強める。


「■■!!」

「うわっ、危ねぇ!?」


 キングモルドンの顎が開き、そこから黒い極太の閃光が放たれる。

 千春は知る由も無いが、それは1週間前にキングモルドンが魔女狩りたちを壊滅させた破滅の光であった。

 相手の出方を窺っていた千春はAH-UNの型の性能もあって、間一髪で横に飛び退くことで黒光を回避する。

 初撃を回避されたキングモルドンは、次弾を放つ準備をしているのか閉じた口の中から黒い光を溢れ出ていた。


「■…!!」

「明らかに溜めが入っているよな、でかいのが来るか!? はぁ、そろそろお開きにしたいんだけどな…」


 威力より速度を重視した先ほどとは異なり、溜めが必要となる次の一撃は別次元のものになるだろう。

 千春としてはそんな恐ろしい攻撃をまともに受ける気にはならず、頭の中で逃げる算段を始めていた。

 そもそも千春がキングモルドンと戦っている理由は、あくまでこの場から彩雲たちを逃がすための時間稼ぎに過ぎない。

 やり方に問題はあるが魔女狩りに困らされていた千春としては、キングモルドンにお礼をしてもいいくらいの気持ちである。

 少なくとも彩雲たちが廃工場から避難するだけの時間は作れた筈なので、千春としてはこの辺りで戦いを切り上げておきたい。

 しかし相手の方は同じ気持ちでは無いようで、千春に対して致命的な一撃を放とうとしているキングモルドンを前にして千春は仮面の下で溜息を付いた。

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