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俺はマスクドナイト  作者: yamaki
第四部 始まりの魔法少女
273/384

4-8.


 魔女狩りたちが喫茶店メモリーへ襲撃を掛けた頃、朱美は未だに囚われの身であった。

 彼女たちの拠点である廃工場内で、過去に居住スペースとして使われていたと思われるフロア。

 朱美はその一室で手足を縛られて拘束されており、椅子に座らされている。

 魔女狩りたちは尋問とも言えない会話を終えた後に朱美から興味を失い、そのまま彼女を放置していた。


「意外に大きい組織なのかな…」


 少し離れた場所には黒ずくめの魔女狩りの一員が監視についており、朱美が妙な気を起さないように見張っている。

 朱美は監視に聞こえないような小声で、天井の電灯を見ながら独りごとを呟く。

 先ほど監視付きでトイレも使わせて貰ったが、汚物はちゃんと水で流れていた。

 長年使われていない筈の廃工場内に、電機や水などのインフラが来ているのだ。

 それに魔女狩りたちは先ほど話をした実働メンバーの他にも、何人も居るようである。

 例えば今監視している人間は、顔をフードで隠しているが恐らく既に成人済みの女性だろう。


「…交代…」

「…った、後は…」


 監視の人間の元に新たな魔女狩りのメンバーが現れて、その人間と入れ替わって去っていく。

 断片的に聞こえてきた会話を聞く限り、朱美の監視役を交代したらしい。

 新たな監視役は同じように黒ずくめのフード姿で顔を隠しているが、こちらも恐らく女性であろう。

 流石の魔女狩りも女性に対して男性の監視者を付けるような、配慮に欠けた行為はしないようだ。


「ねぇ、何時になったら帰してくれるのよ? 私に何の用なの?」

「…」

「お腹が減った、喉が渇いた…。 人質の待遇がなってないわねー」


 朱美は新たな監視者に対して話しかけるが、相手は応えるつもりは無いらしく無言を貫いている。

 どうやら朱美の相手をするなと指示されているらしく、前任の監視者も彼女の話に全く反応しなかった。

 唯一の会話はトイレを希望した時くらいであり、それも本当に最低限の事務的な指示しかして来なかった。

 しかし他にやる事も無いので、朱美は駄目元で話を続けながら相手の反応を窺おうとする。


 魔女狩りが朱美を攫った理由は、彼女たちの最大の敵であるマスクドナイトNIOHの秘密を探るためであろう。

 マスクドナイトNIOHを作り出した二人の魔法少女、その正体を掴めればNIOHは事実上封じられたも同じである。

 魔女狩りたちは千春に近しい朱美であれば、NIOHを生み出した魔法少女の正体を知っていると推測したに違いない。

 残念ながら千春は朱美にさえもNIOHの秘密を明かして無かったが、彼女は独力でその真実に辿り着いていた。

 付き合いの長い朱美は千春にマスクドナイトNIOHを授けた魔法少女が、彼の妹の彩雲であることをほぼ確信していたのだ。


「どうせ目的はバカ春のことなんでしょう? どうして私から何も聞き出そうとしないの?」

「…」


 先ほどの魔女狩りのセカンドとの話の中で、一度はマスクドナイトNIOHについての話が出た。

 脈絡もなくスウィート・ストロベリーについての話をした後、その話の流れで何気なくNIOHを生み出した魔法少女について聞かれたのである。

 朱美は内心でそれ来たぞと思いながら、自分も千春からその秘密を伝えられて無いと正直に答えたのだ。

 当然ながらその正体が彩雲であるという推測は口にすることは無く、自分は何も知らない体を通したのである。

 恐らく此処から追及が始まると朱美は内心で覚悟したのだが、セカンドはそこで話を切り上げて何処ぞへと消えてしまう。

 その後で朱美はこの場所に移されて、新たな尋問や拷問を受ける事無く今まで放置されていた。


「…どうやら確認が済んだみたい、もうすぐ解放されるよ」

「その声…、もしかして…」


 朱美の声を無視して携帯を触っていた監視者が、唐突に朱美に対して言葉を返したのだ。

 急に態度を変えてきた監視者、彼女の声に聞き覚えのあった朱美は表情を変える。


「あなたは…、有情 慧ね。 朋絵ちゃんの先輩の…。 本当にあなたが居るなんて…」

「考えてなかった訳では無いだろう? それなら今まで放置されていた理由も説明が付くもの」

「厄介な力よね…、それ。 あぁ、最悪の展開だわ…」


 最早顔を隠す必要が無いと考えたのか、監視者が頭のフードを外して素顔を晒す。

 そこにはかつて千春が倒した、サイキック系魔法少女である慧の大人びた顔が見えるでは無いか。

 慧の顔を見た瞬間に全てを悟った朱美は敗北を悟ったのか、がっくりと項垂れてしまう。

 セカンドとの話をしていたあの場に慧が居たのならば、朱美が内に秘めていた彩雲に関する推測など簡単に読まれてしまう。

 相手の心を読み取るテレパシーの能力があれば、仰々しい尋問や拷問など不要なのだ。


「あんたの考えている通り。 セカンドたちが喫茶店メモリーを襲撃、NIOHの妹が魔法少女であることの確認が取れたって…」

「勝手に頭の中を読まないでよ…」

「安心しな、NIOHたちは無事みたい。 本当は病院送りくらいにする予定だったが、邪魔が入ったみたい。 詳しくは解放されてから、自分で聞きな…」


 朱美は千春の妹である彩雲が、マスクドナイトNIOHを生み出した魔法少女の一人であるとほぼ確信していた。

 しかしそれはあくまで推測でしか無く、千春に直接聞いた話では無いので100%正しい情報と言う訳では無い。

 朱美の頭の中から彩雲の情報を聞き出した魔女狩りは、その答え合わせのために喫茶店メモリーに襲撃を掛けたらしい。

 そこで朱美の推測が事実であると判明したため、朱美はめでたく用済みとなったようだ。


「慧ちゃん、何であなたは魔女狩りに協力するの? 朋絵ちゃんから聞いたけど、あなたは自分の過去の行いを悔いていた筈よ…」

「…」


 魔法少女やモルドンによって齎された被害は有耶無耶にされる事が殆どであり、結果として被害を受けた者たちは泣き寝入りすることになる。

 テレパシーの力で人の悪意を読み取ってしまい、それが原因で暴走していた当時の慧は魔法少女の力で散々暴れまわった。

 彼女の住む街の住民たちは多数の被害にあったのだが、その殆どは碌な補償を受けることなく魔法少女絡みなら仕方ないと渋々とその被害を受け入れていた。

 クリスタルを失うことで正気を取り戻した慧は、その街の惨状を前にして過去の自分の行為を酷く後悔していたらしい。

 魔法少女の力によって人生を狂わされた彼女が、魔法少女という存在に対して憎しみを抱く事は理解できる。

 しかしその復讐のために忌むべき魔法少女の力を取り戻して、ある意味で過去の自分と同様に暴走している魔女狩りに協力するのは筋近いのように思えた。

 朱美は慧に対してその真意を問い質すが、彼女の口からそれに対する回答は出て来なかった。




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