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俺はマスクドナイト  作者: yamaki
第四部 始まりの魔法少女
268/384

4-3.


 喫茶店メモリーに現れた魔女狩りは二人、例の黒フードで顔を隠しているが彼女たちの中身は容易に推測できる。

 一人は彼女たちのリーダー各であり、この場に居る魔法少女たちの力を封じる能力を備えたセカンド。

 もう一人はこの魔法少女殺しのフィールドで自由に力を使える、フォースを名乗るあの死神だろう。

 千春は魔女狩りたちに注意を向けたまま、記憶を頼りに周囲の状況を把握しようとする。

 店内には千春の他には、先ほどまで話していた香、彩雲、友香、いっちー、そして朋絵が居る筈だ。

 幸か不幸か今日の護衛役をお願いした佐奈は、小学生の連れが居ることもあって既に帰宅している。

 使い魔リューもイベント後に主である魔法少女の元へ返却したため、魔法少女殺しの環境で有効な戦力は手元に居ない状況だ。


「…あら、どうして変身しないのでしょうか? それにあのこわーいドラゴンも出てきませんね」

「折角店に来てくれた客を相手に、そんな無礼な態度は取れないだろう? ただ悪いが今日はもう閉店だ、うちのコーヒーが飲みたいならまた明日にでも…」

「…フォース、お願いします」


 NIOHに変身する素振りを見せず、使い魔リューという手札を使わない千春に大してセカンドが白々しく不思議がる。

 わざわざ自分から敵陣に乗り込んだのだ、この連中はリューがこの場に居ないことやNIOHの秘密を既に把握しているのだろう。

 最早詰みに近い状況であることを自覚しながら、千春は僅かな希望を信じて強気な態度を隠さない。

 しかしそんな千春の虚勢を前に、セカンドは連れである死神に対して端的に指示を出す。

 フォースは無言でそれに応じて、次の瞬間に彼女の体は不気味な死神の姿へと変貌してしまう。


「…くっ!?」

「やはり変身できないのですね、ふふふ…」

「えっ、どういうことなの? あのNIOHって人は、こいつらの力は通じないのよね?」

「NIOHさんの力が封じられている、まさか…」


 死神が千春の体を店の床に押し倒して、手に持った鎌を突きつけて来る。

 NIOHの力を使えない千春はその死神の暴挙に手も足も出ず、成すがままであった。

 制圧された千春の姿にご満悦なのか、セカンドの黒フードの内から微かな笑い声が漏れてくる。

 裏の事情を知らない他の面子も、この状況でもNIOHの姿にならない千春を訝しんでいるようだ。

 そして何かを察したらしい友香の視線が、死神に襲われている兄の姿を心配そうに見つめている彩雲の姿を捉えた。


 セカンドの持つ魔法少女殺しは、魔法少女の能力を問答無用で封じる彼女の恨みを形にしたかのような代物である。

 彼女の魔法少女殺しが効果を及ぼす領域内に居る者は、魔法少女の力を失いただの人間に戻ってしまう。

 しかし逆を言えば魔法少女殺しの範囲外に居る魔法少女に対しては、セカンドの能力は何の効果も及ぼさない。

 そのため核である魔法少女が他に居る千春のマスクドナイトNIOHは、魔法少女殺しが通じない天敵であった。

 仮にマスクドナイトNIOHの力を封じるには、NIOHを作り出した魔法少女を魔法少女殺しの領域に誘き寄せなければならない。


「私の能力は既にご存じですよね? 私を中心とした一定範囲に居る魔法少女の力を封じる、素晴らしい力です。

 そしてNIOHが力を失っているということは、この場にNIOHを生み出した魔法少女が勢揃いしていることを意味しますよね。 ねえ、彩雲さん?」

「っ!?」

「やっぱり…」

「えっ、それじゃあNIOHを生み出した魔法少女って言うのは、NIOHの妹だったの!?」


 攫われた朱美の名前を使って、わざわざ彩雲をこの店に呼び出したのだ。

 魔女狩りたちはマスクドナイトNIOHの最大の秘密、NIOHを誕生させた魔法少女の正体に辿り着いたらしい。

 この場で彩雲のことを知っているのは、魔女狩りの他にはNIOHを生み出したもう一方の片割れである香だけだ。

 話の流れで彩雲の正体を察したらしい友香は納得したように頷き、朋絵が分かりやすく驚いて見せる。


「なんであんたたちが彩雲ちゃんの事を知っているのよ? まさか朱美さんから無理やり…」

「えっ、朱美さんに何かあったんですか?」

「攫われたんだよ、多分こいつらにな…。 くそっ、お前にも連絡しておけば、騙されることも無かったのに…」


 マスクドナイトNIOHに変身できない千春の姿が、この場に居る彩雲がNIOHの片割れである何よりの証拠だろう。

 そして動揺した香の口から出た失言が、魔女狩りの言葉が正しいことを証明してしまった。

 香は朱美が拷問されている姿でも想像したのか、魔女狩りたちへ敵意を込めた視線で睨みつける。

 朱美が行方不明であることを知らない彩雲は、話の流れに付いていけないようで目を白黒させていた。

 そんな妹に対して千春は朱美が攫われた事実を伝えて、その情報を事前に伝えなかったことを悔いる。

 仮に彩雲に朱美が行方不明であることを知らせていれば、彼女が此処に来ることは無かった筈だ。

 そうなれば千春が死神に押し倒された上、鎌の刃を突き付けられているという絶望的な状況にも陥らなかっただろう。


「そんな…、じゃああのチャットは…。 お兄さん、私は…」

「気にするな、お前は騙されただけだよ。 それに朱美の線は無いよ、あいつも彩雲のことは知らなかった筈だからな…」


 この瞬間に初めて朱美が攫われた事実を知った彩雲は、全てを察したのか絶望的な表情を浮かべてしまう。

 結果的に魔女狩りに騙された自分が原因で、兄である千春が魔女狩りたちにいいようにされているのだ。

 しかし千春は彩雲を責める事は無く、魔女狩りに騙された被害者である妹をただただ慰める。

 そして朱美には彩雲の事情を伝えていない千春は、彼女から秘密が知られることは無いと香の先の言葉を否定した。


「…ええ、確かにあなたは妹さんの秘密をあの自称ジャーナリストさんにも伝えていなかった。 余程、妹さんが大事だったのですね。

 しかしあの自称ジャーナリストさんが、あなたの秘密を探らないとお思いですか?」

「うっ…」


 魔女狩りの言う通り、朱美と言う女は人の秘密を嗅ぎまわる事を何より生きがいとする詮索好きな人間である。

 そんな彼女であれば千春が頑なに隠そうとしている、NIOHを生み出した魔法少女の謎を放っておく筈が無いのだ。

 愉快犯的にNIOHの秘密を暴露するような真似は流石にしないだろうが、謎を謎のまま残しておくことは断じてあり得ない。

 朱美は早い段階からマスクドナイトNIOHの秘密、その規格外の性能には香以外のもう一人の魔法少女が絡んでいることに気付いていただろう。

 そして幼い頃からの腐れ縁である朱美は千春の交友関係をほぼ把握しており、そこから謎の魔法少女の正体を簡単に追えた。

 恐らく朱美の頭の中には、千春の妹である彩雲こそが謎の魔法少女の正体であると言う非常に確度の高い推測が立てられていたに違いない。


「あなたの妹さんがNIOHの片割れである確率が非常に高い、自称ジャーナリストさんは私たちに教えてくれましたよ。 そして彼女の推測は大正解でした!!」

「そんな!?」

「朱美さんが…」


 魔女狩りたちは朱美の推測を元に行動を起こしたようで、その答え合わせはご覧の通りである。

 よく考えてみたら千春は朱美を相手に秘密を隠し通せたことは一度たりとも無く、あの女は下手すれば自分の両親より自分のことを知っていたでは無いか。

 他の面々が朱美の情報を元に彩雲に辿りついたという魔女狩りの言葉にショックを受けている中で、千春は懐かしい過去を思い出したのか一人場違いな笑みを浮かべていた。



今日はくそ暑かったですね…。昼飯を食いに出かけたのですが、少し外に出ただけで凄い疲れました…。

今年の夏もまた暑いのかな、汗っかきなんでこの時期は本当きついですよ…。


では。

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