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俺はマスクドナイト  作者: yamaki
第四部 始まりの魔法少女
261/384

3-9.


 魔法学部が用意してくれた控室に、本番用の衣装を纏ったイベント参加者たちが勢揃いしている。

 今回のイベントが始まる少し前、参加者による最終打ち合わせはスムーズに終わった。

 直接顔を合わせるのは初めてであるが、事前にWEB会議を通して段取りなどは合意済みなのだ。

 この打ち合わせも最終確認の意味合いが強いため、参加者たちの間で揉めることは殆ど無かった。

 動揺していたイクゾーの事は少し心配であったが、実務的な話は妹の方が主導して行ってくれた。

 これでイベント準備としては問題ないだろうが、残念ながら今回のイベントはただのお遊びでは無い。


「…さて、最後に一つだけいいか? 短い時間で此処までのイベントを立ち上げられたのは素晴らしいことだが、残念ながら今日のイベントで何らかのトラブルが起きる可能性が高い。

 最悪、身の危険もあるかもしれないが大丈夫か?」

「勿論! NIOHさんとアヤリンは戦友よ、何かあったら一緒に戦うわ」

「千春さんにはお世話になってますから…、ガロロもやる気のようですし…」

「☆☆!!」


 お決まりの衣装であるオーバーオール姿のマジゴロウと、可愛らしいゴスロリ服を纏ったアヤリンが真っ先に千春に応じてくれた。

 今回のイベントは魔女狩りの連中を誘き寄せるための盛大な囮であり、高い確率で魔法少女同士の戦闘に発展する可能性が高い。

 既に魔女狩りの被害を受けた魔法少女も居て、下手をすればこの場に居る誰かが新たな被害者になるかもしれないのだ。

 実質的にマスクドナイトNIOHの仲間枠であるマジゴロウとアヤリンは、魔女狩りの存在を認識した上で協力してくれている。

 アヤリンの方はあくまでマジマジで活動する上での人気取りが目的であろうが、どんな理由であれ手を貸してくれるのは有り難い。

「マジョルは戦うアイドルだから、その位は大丈夫よ! 悪い人たちをやっつけて、マジョルの株を上げるわよ!!」

「わ、私も大丈夫よ。 同じ魔法少女を襲う連中なんて放っておけないもの」


 そして新顔であるマジョルとイクゾーもまた、それを承知で今回のイベントに名乗りを上げてくれた。

 歌って踊るタイプのアイドルらしい動きやすさと可愛さを合わせた、オリジナルのライブ用衣装を纏っているマジョル。

 彼女の方はアヤリンと同様に、NIOHという存在を利用して知名度アップを図りたいようだ。

 挑戦動画のお決まりの衣装である実用性重視のジャージ姿に、少年と見紛うショートカットのイクゾー。

 彼女の方は知名度アップの目的もあるだろうが、魔女狩りを許せないと言う義侠心からの行動らしい。

 この様子であれば本当に魔女狩りの襲撃があっても、千春たちの動きを阻む枷になることは無いだろう。


「お姉ちゃんはやる時はやる女ですよ。 挑戦で魔法少女との決闘を何回もやっているので、NIOHさんの足手纏いにはなりません」

「ほー、それは心強い」

「ふーん、でもそれって所詮は魔法少女同士のお遊びでしょう。 アヤリンと違って、渡りや偽渡りみたいな化け物と戦った経験は無いわよねー」


 様々な理由で魔法少女同士が戦う例は少なくなく、マジマジの投稿動画にはその模様を収めた作品も存在している。

 イクゾーも挑戦企画の一環で魔法少女のタイマンを経験しており、妹の方がここぞとばかりに姉の凄さをアピールしてきた。

 しかしそのイクゾー上げが気に喰わなかったのか、アヤリンの茶々が入ったことで雰囲気は若干怪しくなってくる。


「確かに渡りのモルドンは凄く強かったわよねー、動画だけでも普通のモルドンとは桁外れの存在だって理解できたわ。 何しろモルドン退治の動画を一杯上げている武道派のアヤリンちゃんが、一蹴されたくらいだからねー」

「そもそも渡りと偽渡りを倒したのはNIOHさんだ。 渡りの戦いの時はアヤリンちゃんの出番は殆ど無かったし、偽渡りの方は普通に負けてたよね?」

「戦いの場に居なかった部外者の人に言われても、何にも響かなーい」

「みなさん、落ち着いて…」


 当て擦りされた二人は、アヤリンが渡り・偽渡りとの戦闘で対して役に立たなかった事を指摘する。

 しかしアヤリンはあくまで戦場に立ったことの意義を強調して、自身の戦果に対する苦言をスルーしていた。

 そもそもこの場に居るメンバーはマジマジという箱庭の中で、互いを蹴落としながらランキング争いをしていた少女たちである。

 潜在的にこの場に居るランキング上位陣は全て敵であり、切っ掛けさえあればこのような状況にもなるのだろう。

 年長者でもあるマジゴロウが口喧嘩を始めたアヤリンたちを止めようとするが、余り効果は無さそうだった。


「…はい、それでは質問タイム! 何か事前に聞いておきたいことは有るか?」

「え、えぇっと…」

「はいはい、何時もNIOHさんと一緒に居るワンちゃんは居ないんですか?」

「ああ、シロちゃん! そういえば居ないわね、あの子好きなのに…」


 場の空気を換えるために千春は彼女たちの話に割り込み、無理やり質疑応答の時間に持ち込む。

 千春の介入で毒気が抜かれたらしい少女たちは、素直にこの場に見当たらない千春の相棒について言及する。

 マスクドナイトNIOHの活躍を隠し撮りした例の動画を見た者であれば、ぬいぐるみ調の使い魔を知らない筈は無いだろう。

 しかし普段は常に千春と行動している筈の使い魔シロは、何故かこの控室に見当たらなかった。


「あいつは留守番だ。 可能性は低いが、嫌がらせで俺のバイト先が襲撃されることも考えられるしなー。 バイクと一緒に喫茶店メモリーに置いて来た」

「えー、シロちゃん居ないんだー。 後でガロロちゃんと一緒に写真撮りたかったのにー」


 白奈からシロを受け継いだ千春は、実質的に魔法少女と同じ存在となった。

 そのため魔女狩りの切り札と思われる例の魔法少女殺しの影響を受けてしまい、シロは実質的に行動不能となってしまう。

 少し前に千春不在の状況で魔法少女ウィッチこと友香が狙われたこともあり、シロは喫茶店メモリーに残すことにしたのである。

 千春が傍に居なければシロが行動不能になることは無く、友香が働いている店に魔女狩りが来ても対抗出来るだろう。


「その代わり今日は助っ人のリュー君が来てくれている。 親の魔法少女は近くに居ないから、こいつの動きが止められることはない筈だ。 仮に魔法少女の力が封じられたら、リューが守ってくれる筈だ」

「魔法少女の力を封じるねー、本当にそんなことが出来るのかしら?」

「よろしくね、リュー君!!」

「□□□!!」


 イベントへの参加が確定した所で、彼女たちにも魔女狩りに関する情報は共有してある。

 護衛役として魔法少女殺しの環境でも動けるリューも呼んだので、これで最悪の事態は防げる筈だ。

 千春は限られた時間の中で、出来るだけの準備を整えて魔女狩りの襲撃を待ち構えていた。






 そして蓋を開けて見たら一番警戒していた魔法少女殺しの能力は襲ってこず、代わりに千春たちは音攻めに悶えていた。

 魔法少女の力を持つ存在に対して効果を発揮するらしい能力は、千春たちの耳を爆音でかき鳴らす。

 千春たちが認識している魔女狩りの能力は例の魔法少女殺しと、姿を晦ます能力を持つ死神であった。

 しかし千春たちの前に現れた魔女狩りは三人であり、確かに後一人の能力は確定していない。

 魔法少女関係者に対してしか効果を発揮しない嫌らしい能力は、確かに魔法少女を恨んでいる人間に相応しい能力ではある。


「くぅぅぅ、だが五月蠅いだけで俺を止められると思うなよ…。 変身っ!!」

「おお!」

「NIOHの変身だ!!」

「やっぱりこれは襲撃なのか、演出じゃ無くて…。 やれー、NIOH!!」

「うぉぉぉ、無理してでも来て良かったー! なんだ、また渡りみたいな化け物が来るのか!!」

「いや、この前の動画に出ていたあの黒フードの連中じゃないか。 よーし、おれが現場の状況を実況中継して…」


 舞台上の千春は音の責め苦に耐えながら立ち上がり、魔法のステッキに見立てた二本指を構える。

 そして何時ものモーションと共に変身を行い、赤い鎧を纏うマスクドナイトNIOHのAHの型へと変身を遂げた。

 この音責めの影響を受けていない大半の観客は何が何だか分からないながら、NIOHへ変身した千春の姿に何かを察したのだろう。

 少し前に上がった謎の魔法少女と戦うNIOHの動画、不自然な程に短期間で決まった今回のイベント。

 一部の人間は千春がまた事件に巻き込まれたことを察しており、今の状況もその渦中にあるに違いない。

 影響を受けていない観客たちは無邪気に千春へ声援を送り、事前の模様をSNS上に投稿したりしていた。





最近、ウイニングポストの話ばかりしているので、偶には別の話を…。

いよいよシン・ウルトラマンが公開しましたね。

シン・ゴジラが滅茶苦茶面白かった人なので、早速日曜に映画に行っちゃおうかと思います。

ちなみに地元映画館の予約状況を見たらそこそこ空席があるので、予約なしでも普通に見れそうでした。

シン・ウルトラマンが人気無いのか、コロナ関係で映画に来る人が減っているのか…。


では。

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