3-7.
以前にも説明したが、魔法少女たちがマジマジに投稿している動画の内容は千差万別である。
例えば魔法少女アイドルを自称する"マジョル"の動画は、基本的にはオリジナル曲を披露するライブ映像だ。
マジョルは地下アイドルとしてあちこちのライブハウスでライブをしており、その時の模様を投稿していた。
「魔法少女アイドル、マジョルでーす! 今日はとっておきのメドレーを披露しちゃうわよ!!」
「「「「「マジョル、マジョル、マジョル、マジョル!!」」」」
ただしライブ映像だけでは飽きられると考えたのか、それ以外にもライブの舞台裏やマジョルの日常なども投稿したりしている。
ファンとの交流企画やお洒落な飲食店のレビューなど、アイドルのイメージに添う可愛らしい動画である。
その劇中で"使いっぱ"と呼ばれているマネージャーに無茶振りをするのも、彼女の動画のお約束となっていた
「ちょっと、使いっぱ! マジョル、次の物販会で新しいグッズを作りたいなー」
「えぇぇ、次のライブはもうすぐですよ! 一体どんな新製品を…」
そして何より驚嘆すべきことは、マジョルは自身のアイドルグッズを販売しているのである。
基本的に魔法少女を使った金儲けはゲームマスターが決して許さず、そのタブーを犯した物は人知れず消えていく筈だ。
しかし逆を言えばグッズ販売で得た金銭を自分のために使わなければ、ゲームマスターも許してくれるらしい。
マジョルはグッズ販売で得た利益を、全て自身のライブ活動やグッズ作成のために費やしている。
その収支の記録は全て公開しており、ゲームマスターの介入が無い所を見ると本当にマジョルの懐には一銭も入ってきていないのだろう。
ちなみにマジョルを真似てグッズ販売に手を出した魔法少女は何人も居たが、生き残っているのがマジョルだけの所を見るとお察しである。
マジョルと双璧を成すイクゾーは、体を張った挑戦動画をマジマジに投稿していた。
グッズ販売の収益を背景にしたマジョルの動画がゴールデン帯の番組であれば、マジョルのそれに比べれば深夜の低予算番組である。
しかしイクゾーは低予算番組に熱意と工夫を加えることで、マジョルと互角の地位を保ち続けていた。
「お姉ちゃん、無理無理! そろそろ倒しておかないとまずいよぉぉぉ」
「まだ行ける! このモルドンはきっと私に懐いてくれる!! 行くぞぉぉぉっ!!」
「それは懐いているんじゃ無くて、攻撃しているの! モルドンが餌なんて食べないってぇぇぇ!!」
これはモルドンのペット化を試みたイクゾーが、モルドンに喰われかった伝説のワンシーンである。
イクゾーの動画には魔法少女らしくモルドンを題材にした物が少なくなく、恐らく世界で一番モルドンをおもちゃにした女であろう。
その挑戦が結果的にモルドンに対する実験的な内容になっている事も多く、魔法少女研究会などは研究者目線で彼女の動画を絶賛していた。
「無理無理無理、マジョルは綺麗系のアイドルだからそういうのは無理! なんでアイドルが山でサバイバルしないといけないのよぉぉぉっ!」
「行ける行ける!! 魔法少女は頑丈だから、この位は大丈夫さ! さぁ、行くぞぉぉぉぉ!!」
「いやあぁぁ、行きたくないぃぃっ!!」
そしてイクゾーは他の魔法少女とも積極的に絡んでおり、最大のライバルであるマジョルとのコラボ動画を投稿したこともあった。
その時のマジョルはバラエティー番組でおもちゃにされているアイドルの如く、終始イクゾーに振り回されていた。
普段はお高くとまっているマジョルの半泣き姿が見られるこの動画は、当時の再生回数ランキングを更新したそうだ。
結果的にこの動画はマジョルのチャンネルの視聴者数を増やす結果にもなったようだが、マジョルはイクゾーとのコラボは二度と御免だと感想を漏らしたらしい。
特撮オタクである千春の趣味とは異なるが、彼女たちの名前はマスクドナイトNIOHになる以前から耳にはしていた。
今日の企画に先んじて彼女のたちの動画に軽く目を通して、事前に予習もしたつもりである。
あくまで千春はマスクドナイトNIOHと言うキャラクターとして、今回の合同企画に参加しているのだ。
彼女たちもそれぞれマジョルとイクゾーというキャラクターという仮面を被って、今日の企画に参加する筈である。
動画を通して彼女たちの素の顔が分からなくても、魔法少女としての彼女たちのスタンスを把握しておけばいいのだ。
「うぅぅ、こっち見てる…。 私、変な顔しているかな…」
「見てないって、お姉ちゃん! ほら、ちゃんとして…」
「やっぱり無理だったんんだ、男の人とのコラボ何て…」
「大丈夫よ、相手は映画出演までした正義のヒーロー様よ。 ほら、実物は思ったより格好いいわよ、飛鳥くん程では無いけど…」
それ故に見る筈の無い少女の素顔を覗き見てしまった千春は、その対応に困って何も出来ずに居た。
男慣れしていないことがカミングアウトされたイクゾーは、あの後に妹に引き摺られて別室に設けられた更衣室に向かった。
そこで身だしなみを整えて本番用の衣装を着て戻ってきたのはいいのだが、千春に対する態度は相変わらずである。
イクゾーは妹の背に隠れて千春の方を窺ないながら、妹と何やら小声で会話していた。
「…はははは、あんなイクゾーちゃん、初めてぇぇぇ!! ほら、使いっぱ、ちゃんと撮っているわよね」
「はい、勿論でーす」
「あはは、イクゾーちゃんって意外に乙女ー」
「あらあら…」
イクゾーのライバルであるマジョルは、彼女の醜態が余程嬉しいのかご機嫌の様子である。
過去にイクゾーとのコラボ動画で酷い目に遭わされた仕返しのつもりなのか、その模様はマネージャーのカメラで絶賛録画中だ。
マジョルの方は動画の中と同じキャラクターを維持しており、もしかしたらこれは彼女の素であるのかもしれない。
他の参加者であるアヤリンやマジゴロウも、積極的に介入するつもりは無いらしく呑気に雑談している。
「ちょっと、何とかして下さいよ、お兄さん。 イベントの開始時間が迫ってますよ…」
「一応建前上は、あんたが今日のイベントの企画者なのよ。 私たちに準備を押し付けたんだから、責任者としての役目は果たしなさいよ」
「えぇぇ、俺がやるのかよ」
仲間である朱美と香も、千春を助ける気は無いようだ。
しかし自分の顔を見て怯える少女に対して、何が出来るのだと千春は困り果ててしまう。
「…おい、アヤリン。 俺が出演するってことは、ちゃんと事前に伝えていたんだよな?」
「アヤリンは正直者だから、マジョルちゃんみたいに悪いことはしないわ。 それにイクゾーちゃん、マスクドナイトNIOHのことを前から気に入っていたみたいだし」
「え、そうなの…。 うーん、ならいいのかな…」
あの様子を見る限りではイクゾーが自分から、苦手な男が居る企画に参加するとは思えなかった。
今日のイベントにイクゾーとマジョルを呼んだのはアヤリンなので、千春は彼女があの子を騙して呼び出したのではと懸念を示す。
しかしアヤリンの話が本当であれば、彼女は千春という男性が居ることを承知で現れたらしい。
それならば今のイクゾーは、先ほどの寝起きばったりのショックが大きくて動揺しているだけなのだろう。
「えーっと、イクゾー、さん」
「…は、はいっ!!」
「そろそろこの後の話をしたいんだけど、いいかな?」
「だ、大丈夫れす!!」
「お姉ちゃん、噛んでるよ」
「よし、まずは改めてご挨拶だ。 承知の通りだが俺はマスクドナイトNIOHとして活動している…」
意を決した千春は恐る恐る、イクゾーに対して話掛ける。
それに対してイクゾーは千春の声に狼狽えながらも、しっかりとコミュニケーションを取れた。
これならば話を続けられそうだと、千春は今日のイベントの企画者として集まった魔法少女に改めて挨拶するのだった。
結局GW中はずっとウイニングポストをやってました、時間泥棒ですねー。何だかんだでゲーム中で1年経過させるだけで、1日が終わってしまいます。
そのお陰で更新は通常通り、週二ペースのままになってしまって申し訳ございません。
しかしその甲斐あって、念願の凱旋門賞の勝ち馬が出来ましたよ!
三冠馬ナリタブライアンと自家製三冠牝馬を掛け合わせた、三冠配合の産駒です!
ナリタブライアンはプレイヤー馬にしなかったので史実通り種牡馬二年目で消えたため、その二年目の種付けで生まれたラストクロップ!
クラシックは惜しくもダービーを逃して、皐月・菊花の二冠を取り、有馬も勝ちました!
ちなみにダービーは何故か、史実勝ち馬では無いシンボリクリスエスが持ってきました…。何があったんだ、タニノギムレット。
シニア1年目で春古馬三冠を取ってフランスに殴り込み、見事に凱旋門制覇です。その翌年にドバイシーマクラシックとBCターフを取ってくれましたよ!!
いやー、GWをほぼウイニングポストで潰した成果が出て嬉しいですねー。
難易度Normalなので慣れている人なら簡単に出来るようですが、私は下手の横好きなので…。
では。




