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俺はマスクドナイト  作者: yamaki
第四部 始まりの魔法少女
254/384

3-2.


 有情(うじょう) (けい)、マスクドナイトNIOHが初めて戦った魔法少女である。

 魔法少女の事情に疎かった当時の慧は、深く考えずに漫画で見た超能力者の力を再現してしまった。

 そして誕生したのが、サイコキネシス・テレポート・テレパシーなどの力を操るサイキック系魔法少女である。

 魔法少女として成り立ての頃は、彼女は問題を起こす事なく真面目にモルドンと戦っていたらしい。

 しかしある日を境に彼女は突然変貌してしまい、魔法少女の力で破壊行為や強盗・恐喝などの悪事を働くようになったのだ。

 最終的に慧は千原の手によって魔法少女の力を失い、今は地元で更生している筈であった。


「でも居なくなったと言っても、まだ1日くらいだろう。 1週間行方を晦ましているって言うなら大騒ぎするのも分かるけど、1日くらいじゃなー。 一人で旅行にでも…」

「だってあの女…、平井さんからの電話にも出ないのよ! 絶対に先輩の身に何かあったの!!」

「平井って…、あの警察の人だよな? お前だけなら兎も角、警察からの連絡を無視するって…」


 閉店の喫茶店メモリーに現れたのは、慧の後輩魔法少女である朋絵だった。

 彼女の話によると慧が昨晩から姿を消しており、連絡が付かなくて困っているらしい。

 その話を聞いた千春は1日程度で大騒ぎし過ぎだと内心で思ったが、詳しく事情を聞くとそう簡単な話でも無さそうだ。

 朋絵の口から出てきた"平井"と言う人物は彼女たちの街で働いている警察官であり、千春に慧の一件を持ち込んだ依頼人でもあった。

 仮にも警察が絡んだ話となれば、もう少し真剣に話を聞かなければならないだろう。


「あの慧って子は、今も警察の管理下に置かれている筈よ。 四六時中警察から監視されている訳では無いけど、今でも警察からの定期連絡や面談なんかを義務付けられている。 それをすっぽかしったって事は…」

「確かに何かありそうだな…、昨日何かあったのか?」


 千春によってクリスタルを砕かれて無力化されて慧は、本来であれば相応の施設で裁きを受けるのが筋だったのだろう。

 しかし基本的に魔法少女が引き起こした事故・事件などは、不可思議にな力が働いて有耶無耶にされてしまう場合が殆どだった。

 慧の犯した数々の犯罪行為もそれと同じ扱いとなったようで、彼女は警察からの監視を受けるだけの扱いで罪を許されていた。

 その彼女に課せられた数少ない枷の一つである、警察からの定時連絡が無視されたと言うのだ。

 千春が伝え聞く限りでは、慧は自身の犯した罪を悔いており警察などにも協力的な態度を取っていたらしい。

 だからこその甘々の対応でもあったろうが、そんな彼女が自らの意思でそれを放棄するとは考えにくい。


「昨晩、魔女狩りの件が動画になったわよね…」

「あれが関係しているのかな…。 あの動画だけだと、魔女狩りのことは何も分からないだろう…」


 先の魔女狩りの一件は昨晩、何時ものように編集された動画としてネット上に投稿されていた。

 しかしその動画は不自然な程に情報が絞られており、魔女狩りたちの存在が断片的にしか映されていない。

 あの動画を見ただけでは魔女狩りたちは、千春がこれまで戦った悪さをする魔法少女と同類程度の存在にしか捉えられないだろう。

 魔法少女に強い恨みを持つ"魔女狩り"と言う厄介な連中の事情は、なるべく世間には知られたく無いらしい。

 偽渡りの一件で白奈の死を隠した事といい、ゲームマスター様は余程に魔法少女の評判が大事と言うことだ。


「…一つ確認させてくれ。 慧って子の魔法少女の力は、今も失われているんだろうな? 確かあいつのクリスタルはお前が砕いたって聞いたぞ」

「そ、それは……」

「ちょっと待て、その反応はなんだ!? 分かっているのか、あの魔法少女の力が慧って子を狂わせた根本原因なんだぞ!!」

「嘘っ!? あの子は魔法少女としての力を取り戻したの!!」


 千春は魔法少女慧に関するある事柄を思い出して、何となく嫌な予感を覚えながら朋絵に対して質問を投げかけた。

 そして千春の予感は的中したようで、朋絵の見せた反応は最悪の回答と言っていい。

 この時まで千春は、慧は今もクリスタルが破壊されている無力な元魔法使いと言う前提で話をしていたのだ。

 しかし少し前に修復された慧のクリスタルを破壊したと連絡してきた朋絵が、その事実を確認して来た千春から視線を背けたのである。






 魔法少女はクリスタルを砕かれたその力を失い、クリスタルを修復するには砕かれた欠片をほぼ全て集めなければならない。

 千春は悪事を働いた魔法少女を倒してそのクリスタルを破壊したとき、再犯を防ぐためにその欠片の一部を没収していた。

 慧のクリスタルの一部も千春の手元に保管されており、本来であれば彼女が魔法少女としての力を取り戻す事は無かった筈だった。

 しかし当時の住居であったアパートを襲撃されて、そこに保管されていたクリスタルの欠片を奪われたことで状況は一変する。

 クリスタルを取り込んで強化していた偽渡りは、当然のように千春が保管していたクリスタルの欠片を取り込んでいた。

 そして千春の手によって偽渡りが倒されたことにより、それらの欠片は"元の持ち主"の元へ舞い戻ったのである。


「偽渡りの一件でクリスタルの欠片が揃ってしまい、慧って子は再び魔法少女としての力を取り戻してしまった…。 けれどもあの力は彼女を不幸してしまう…。

 だからすぐにお前に連絡して、そのクリスタルを破壊するように指示したんだぞ!」

読心(テレパシー)、人が持つには重すぎる力よね」


 慧のテレパシーは他人の頭の中を全て読み通せるほどの精度は無く、周囲の人間がその瞬間に抱く感情や思考を読み取る程度の能力でしか無かった。

 しかし他人の感情を読み取れるその力は、人間の隠された醜い本性を丸裸にしてしまう。

 周囲の人間からの悪意を否応なし突きつけられた慧は、やがて負の感情が閾値を超えてしまい犯罪者と成り果てたのだ。

 そして慧が魔法少女の力を失うと言うことは、彼女を散々苛んだテレパシーという能力か解放される事を意味する。


「せ、先輩が言ったんです…。 クリスタルを破壊するのは少し待ってくれ、この力の意味についてもう少し考えたいって…」

「その言葉を鵜呑みにして、見逃したのか!? わざわざ嘘の報告までして、口裏を合わせて…」

「き、昨日までは大丈夫だったのよ!? 先輩は前みたいに悪いことはしてないし…、私のモルドン退治も手伝ってくれたの」

「それは…」


 この朋絵と言う少女は、犯罪に手を染める前の慧にモルドンの脅威から助けられた過去があった。

 その経験もあって朋絵は慧を先輩として慕い、それは慧が罪を犯した後も変わらなかった。

 後に魔法少女となった朋絵はずっとずっと、憧れの先輩魔法少女と共にモルドンと戦ってみたかったのだ。

 曲がりなりにもその夢が叶えられた朋絵は、慧が魔法少女の力を取り戻したことによる危険性にあえて目を瞑っていたのだろう。


「テレパシー、それが奴らの手に渡ったら…」

「最悪のケースも考えないとな…」


 慧と言う魔法少女は、その力によって人生を狂わされたと言っていい少女である。

 それは千春が先日やり合った集団、魔女狩りを名乗る連中と同じ立場なのだ。

 このタイミングで行方不明となった慧、そして今の彼女はテレパシーと言う隠された秘密を暴くのに最適な能力を取り戻している。

 この失踪劇が単なる偶然である可能性も否定できないが、恐らく楽観は出来ないなと千春は疲れたように溜息を付いた。


ウイングポストの新作、勝っちゃいました(笑)。

暫くウイングポスト漬けになるかもしれませんが、土日更新は死守できるように頑張ります。

まずは自家生産馬でのG1制覇を目指すぞぉぉぉ!!


以上です。

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