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俺はマスクドナイト  作者: yamaki
第四部 始まりの魔法少女
250/384

2-10.


 魔女狩りの拠点となっているらしい、何処かの廃工場。

 セカンドの機転とフォースの能力によって脱出に成功した魔女狩りの少女たちは、誰一人欠けることなく此処の戻ってこられた。

 しかし既にフードを取り去って素顔を曝け出している彼女たちの表情は、お世辞にも明るい物では無かった。


「何よこれ、何で私たちが負けた感じになっているのよ! フォース、あんたがもっとちゃんとしていれば…」

「私がまともにNIOHを相手するのは無理だって事は、事前に分かっていただろう? そもそも今日はNIOHが来ない前提の作戦だったんだから…」


 魔女狩りメンバーの中で一番幼いシックスは、工場内の朽ちた機械を蹴りつけながら感情を爆発させていた。

 憎き魔法少女である友香を裁くことなく、何の成果も得られずに逃げ帰る結果になったのだ。

 魔法少女に対する復讐心から魔女狩りに入った彼女としては、このような無様な結果は認められないのだろう。

 その怒りの矛先はNIOHを相手に翻弄されていた、今は死神から人に戻っているフォースにも向けられる。

 しかしフォースとしてもNIOHとの戦闘は想定外であり、今日の作戦はあの場にNIOHが居た時点で破綻していたのだ。


「…流石はNIOHと言った所かしら、こちらの策をこうもあっさりと見破るなんて」

「どうするのよ、セカンド! NIOHをどうにかしないと、私たちの目的は…」


 幾ら魔法少女が憎いとは言え、戦力分析を疎かにして感情のままに行動していたらすぐに破綻を迎えていただろう。

 彼女たちは彼我の戦力差を認識しており、マスクドナイトNIOHというヒーローとまともに戦うのは自殺行為であると認識していた。

 彼女たちの直接的な戦力と言っていいフォースは、魔法少女一人分の戦力しか持ち合わせていない。

 NIOHは魔法少女二人の分の戦力を持つ上に、対魔法少女の経験も圧倒的に上回っている反則級の相手である。

 魔法少女の守護者を気取る忌々しいヒーローが、魔女狩りの活動とぶつかることは簡単に予想できた。

 彼女たちが目指す世界を作り出すには、なんとしてもマスクドナイトNIOHを排除するしか無いのだ。


「NIOHに力を渡した魔法少女が分かれば、打つ手があるんだが…。 とりあえずマジマジに出ている方を狙うか?」

「片方を潰せば、あの反則級の金ぴかフォームは止められるんでしょう? もうそうするしか…」

「しかしあの最近出てきた、使い魔と合体した形態はどうする? 今日は出さなかったが、あれを出されると勝ち目が…」


 千春が推測した通り、魔女狩りが保持する魔法少女殺しの能力には幾つかの制限がある。

 その一つが魔法少女の力を封じたい対象を、能力の範囲内に納めなければいけない縛りだった。

 マスクドナイトNIOHは二人の魔法少女の力によって作られていることはほぼ確実であるが、その片割れの行方は未だに知られていない。

 魔女狩りがNIOHの力を封じるためには、その二人の魔法少女の正体を把握している必要があった。

 先ほどの友香の反応を見る限りでは、NIOHは近しい魔法少女である彼女にすらその情報を共有していないらしい。

 少なくともマジマジに出ている方を確保すればNIOHの能力は半減するだろうが、それだけではまだ不安が残る。

 理想は友香から片割れの情報を聞き出した上で、彼女を始末することでNIOH側の戦力を減らしたかったのだが儘ならない物だ。


「お帰りなさい、フォース。 その様子だと、上手く行かなかったようね…」

「フィフス! 大丈夫か、足元に気を付けてくれ」

「心配し過ぎよ、この位な平気だから…」


 一様に暗い顔を浮かべながら対NIOHについて話をしていた魔女狩りの元に、新たな少女が姿を見せた。

 足が悪いのか杖を突いている少女は、体を支えている杖でカチカチと床を鳴らしながら歩み寄ってくる。

 他の魔女狩りと同様に"フィフス"という奇妙な名前で呼ばれている少女の姿に気付いたフォースは、慌てて彼女の傍まで近づいて手を貸してやる。

 そしてフォースの助けを借りながらフィフスは他の魔女狩りの所まで辿り着き、彼女たちの輪に加わった。


「ごめん、フィフスから貰った力を上手く使えなかった…」

「相手はNIOHなんでしょう、仕方ないわよ。 ごめんなさい、私があなたをもっと強くしてあげたら…。

 ありがとう、私の復讐に付き合ってくれて…。 私の足を奪った魔法少女たちへの復讐を…」


 新たに現れたフィフスは申し訳なさそうにしているフォースの手を取り、彼女に慰めの言葉を掛けていた。

 フィフスは忌々し気に顔を下に向けて、あの日を境に自由に動かなくなった自らの足を睨みつける。

 詳細は不明であるがフィフスの動かない足もまた、魔法少女が原因となって起こされた悲劇の一部らしい。

 その復讐のためにフィフスはフォースに対して、あの死神の力を授けたという事だ。


「やっぱり魔法少女の力は、その足を治すために使った方が良かったんじゃ…」

「駄目よ! そんな事をしても何も解決しないわ!? あの魔法少女たちが居る限り、私は…、私は…」

「分かるわ、フィフス。 魔法少女は私たちから全てを奪ったの、奴らを野放しにしておく訳にはいかないわ…」


 魔法少女によって体の一部に障害を負った仲間という事もあり、セカンドとフィフスは互いに共感しているようだ。

 共に魔法少女に対しての憎悪の言葉を口にして、復讐を誓いあう二人の姿をフォースは複雑そうな表情で見つめていた。

 魔法少女の力は万能では無いが、それでも現代医学では不可能な問題も可能とする力を秘めている。

 白奈や志月のような不治の病は無理でも、彼女たちを苦しめる障害を癒す事くらいなら出来る筈だ。

 そうすればセカンドは元の綺麗な顔を取り戻して、フィフスもまた自由に歩けるようになる。

 しかしセカンドもフォースも魔法少女の力を癒しのために使うことなく、復讐のために使う道を選んでしまった。


「私たちの手でこの世界を取り戻すのよ! 魔法少女なんて存在しない清浄な世界に…」

「そのための魔女狩りだもん! みんなで力を合わせれば、絶対成功するって!!」

「ええ、その通りね! 私たちも頑張りましょう、フォース」

「ああ…」


 もしかしたら彼女たちに授けられた魔法少女の力は、この世界に魔法少女の力を齎した存在からの声なき謝罪だったのかもしれない。

 残念ながら彼女たちはその意思に反して、魔法少女に対して復讐するために動き出してしまった。

 フォース自身も友人であったフィフスを傷つけた魔法少女は嫌いであり、自らの意思で魔女狩りのメンバーに加わっている。

 しかし魔法少女から直接的に被害を受けていないフォースは、他のメンバー程に強い敵意を抱けないのだろう。

 魔法少女に対する憎悪で一致団結している仲間たちの姿が、何処か遠くに居るように感じてしまうフォースであった。

先日、スマホがぶっ壊れました…。

3年以上使っていたので寿命と言えなくも無いのですが、突然だったのでビビりました。

無事に機種変換はできたのですが、何か精神的に疲れて更新が遅れてしまいました…。


それはさておき、更新です。

今回のお話は次の更新で終われそうですね、明日も更新する予定なのでよろしく。


では

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