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俺はマスクドナイト  作者: yamaki
第四部 始まりの魔法少女
242/384

2-2.



 結局、あの牛型モルドンとの戦いは、AHの型の力を持って容易に片が付いた。

 牛型モルドンの渾身の一撃もAHの型の頑丈な鎧を貫けず、シロとの一体化を諦めた千春がそのまま攻勢に出たのである。

 所詮はただのモルドンが、魔法少女の力を持つマスクドナイトNIOHに勝つ事は不可能なのだ。

 しかしその翌日、何時ものように喫茶メモリー奥の作業場で働いている千春の顔は浮かない物であった。


「おかしいなー、どうしてあの姿になれなかったんだ? なんでか分かるか、シロ?」

「…○○?」


 千春は足元に居るシロに対して問い掛けるが、やはり何も分からないのか昨夜と同様に小首を傾げている。

 あの病院での戦いで千春は確かに、シロと一体化して偽渡りとの戦いに勝利したのだ。

 白い装甲に機械翼、そして戦闘後に千春の体から出てきたシロ。

 あれを成したのはシロであることは間違いないのだが、どういう訳か当の本人はそれを理解していないらしい。


「何か条件があるのか? それとも白奈の最後の奇跡ってことか、劇場版限定フォームかよ…」


 ニューエイジのマスクドシリーズで一種のお約束となっている、劇場版限定のフォームチェンジ。

 何だかんだ適当な設定を付けて、使用に制限を課せられている一種の期間限定商品である。

 シロの様子を見る限りあれは例外的な形態のようで、下手すれば二度と使えないかもしれない。

 あれがマスクナイトNIOHの劇場版だったならば、バッドエンドだったなと千春は内心で自嘲する。


「まあ、何かあったらお前に乗ればいいか。 もう少ししたらAH-UNの型も復活するから、大丈夫だろう…」

「○○!!」

「よーし、頼むぞ。 シロ!」


 自由に飛行可能となるあの時の形態が使用不能なのは少々惜しいが、元々千春には陸・空を駆ける相棒が居るのだ。

 わざわざあの形態にならなくても、バイクと一体化したシロに乗れば事足りるだろう。

 戦力的にもAH-UNの型があれば十分であり、あの形態が千春に取って必須と言う訳では無い。

 シロも自分に頼れとばかりに首を激しく縦に振っており、気合十分の様子である。

 千春は若干惜しさを感じながらも、あの謎の形態を限定フォーム扱いとして一端は諦めることにした。


「…千春! 大変よ、呑気に仕事なんてしている場合じゃ無いわよ!」

「何だよ、朱美。 朝っぱらから藪から棒に…」


 突然作業場の扉が開き、そこから飛び込んで来たのは千春とは腐れ縁の女であった。

 本来は部外者である朱美だが、我が物顔で喫茶メモリーに出入りしている彼女が作業場に現れたことは別段不思議ではない。

 しかし部屋に入ってきた朱美はまさに血相を変えている様子であり、明らかに動揺している彼女の姿に千春は嫌な予感を覚える。

 そもそも普段の朱美であれば昼くらいに客として来店するのだが、今はまだ開店前の早い時間帯だ。

 開店を待っていられない程に急ぎの用件らしい朱美から齎されたのは、残念ながら新たなる厄介ごとであった。






 千春が香たちと久々にNIOHチャンネル用の撮影会をしていたあの夜、別の場所で不幸な出来事があったらしい。

 丹心、渡りのモルドンや偽渡りに狙われた、ある意味で持っている不幸な魔法少女。

 彼女の不幸伝説が更に更新される、悲劇的な出来事が起きたのである。

 千春は朱美の携帯画面に映しだされた、顔見知りである魔法少女の無残な姿に顔を顰めた。


「2号がやられたか…、これも魔女狩りの仕業か?」

「どうかしらね…、少なくともまた面倒な事件が始まったらしいわ。 全く、魔法学部の教授様は耳が広いわよねー」


 昨夜千春があっさりと牛型モルドンを倒せたように、魔法少女がモルドンに負ける事はまず無い。

 そもそもモルドンがこんな写真をSNS上に投稿する筈も無く、明らかに人為的な犯行なのだ。

 魔法少女に対してこれだけの事が出来る容疑者について、千春たちは心当たりがあった。

 "魔女狩り"、魔法学部の粕田教授が千春に対して警戒を促した謎の集団である。


「魔女狩りについて、何か分かったのか?」

「元は魔法少女の戦いに巻き込まれて、被害に遭った連中のコミュニティみたいよ。 魔女狩りなんて大層な名前は付いているけど、要するに魔法少女被害者の会」

「魔法少女の被害、か…」


 魔法少女という人外の力を持つ存在が、現代社会に紛れ込んだのだ。

 その弊害はあちらこちらに出ており、魔法少女に対して恨みを持つ者も出てくることは当然の話だろう。

 例えば千春が戦う羽目になった何人かの魔法少女は、その力を悪用して周囲に明確な被害を与えていた。

 直接的でなくともモルドンとの戦闘の余波で家屋などを破壊してしまい、本人の悪意が無くとも周囲に被害を与える場合も多い。

 ゲームマスター様の影響もあって表立って魔法少女を糾弾できず、密かに魔法少女の被害者たちが集まったコミュニティ。

 それが朱美によって調べ上げた、"魔女狩り"と呼ばれる集団の正体であった。


「私が調べた限りでは、被害者たちが愚痴り合うだけの無害な集団のようだったけど…」

「その無害な集団に何かあったのか、それとも教授の勘違いなのか…? しかし仮にも魔法少女を相手に、これだけのことが出来る奴が居るのかよ」


 写真上の丹心の姿は酷い有様であり、犯人たちは明確な悪意を持って彼女を痛めつけたようだ。

 しかし魔法少女である丹心は、普通の人間では到底かなわない戦力を秘めている。

 初手の奇襲でクリスタルを破壊して無力化でもしない限り、魔法少女を此処まで傷つけることは出来ない筈だ。


「とりあえず2号に話を聞かないとな…、今から2号の見舞いに行くか?」

「勿論、ジャーナリストは現場百篇よ」

「それ、警察の奴だろう…。 ああ、また店長に仕事を押し付けちまうな…」


 軽く溜息を付いた千春はその場で立ち上がり、開店準備をしていた店長の寺下の方へと向かう。

 また寺下に迷惑を掛けることになると千春は神妙な顔付きを見せるが、対する寺下の方は穏やか表情を浮かべている。

 恐らく血相抱えて店に入ってきた朱美の様子から、千春がこれらから話そうとしている内容を察したのだろう。

 相変わらずこちらが心配になる程に商売っ気の無い店長は、貴重な労働力である従業員の離脱を自分から認めたのだ。


「ああ、千春くん。 なにやら急用みたいだから、今日は休んでいいよ。 気を付けて行ってきなさい」

「店長…。 行くぞ、朱美、シロ」

「〇〇!!」

「何時もすみません…、寺下さん」


 店長の寺下には非常に申し訳ないことだが、マスクドナイトNIOHとしてはこの件を放置しておけない。

 笑顔で千春の早退を受け入れた寺下に頭を下げた千春は、朱美と共に魔法少女丹心の元へと向かう。

 朱美をバイクの後ろに乗せた千春は、カバンに詰めたシロと共に丹心が住まう街へと走り出した。



今日のおやつは今月閉店するパン屋の菓子パンでした…。

余程のことが無い限り、来週も店に行って食べ納めのパンを買ってきます…。

ああ、行きつけだった喫茶店と言い、本当に近所の店がどんどん潰れていく!?

それはさておき、更新です。

では。

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