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俺はマスクドナイト  作者: yamaki
第四部 始まりの魔法少女
239/384

1-12.


 魔法学部の地下研究施設、地上実験場周辺の監視情報が送られてくる部屋で彩花は険しい表情を浮かべていた。

 五月蠅い"志月"とタナトスたちは鬼ごっこが終わった時点で部屋から出ており、此処には彼女一人しか居ない。

 彩花は慣れた手つきで室内の施設を操作して、先ほど送られてきた映像をリプレイさせる。


「…教授は何を話してたっすかね。 ただの世間話じゃ…、無いわよね」


 その映像の画面隅で何やら話をしている二人の男、マスクドナイトNIOHと粕田の姿がそこにあった。

 カメラから背を向けるように話をしている二人の口元は見えず、残念ながら音声も記録出来ていない。

 前述の通り魔法学部は密かに地上実験場付近の様子を盗撮・盗聴しているが、それは地上全てを網羅している訳ではない。

 粕田教授が何気なく現れて千春に話しかけた地点、そこは丁度監視網の穴となる場所なのである。

 どう考えても教授はあのマスクドナイトNIOHと秘密の会話をするために、あえて監視網の穴で話をしているのだ。

 こちらが地上をモニタリングしている事を知っていたのか、一体NIOHとどんな話をしているのか。

 彩花は苛立たし気に画面を睨みつけて、内緒話している教授たちの姿を見ていた。






 会話の合間に飲み干した喫茶店メモリー自慢のコーヒー、そのお代わりを店の主が直々に給仕してくれた。

 今日は普段バイトで入っている千春と友香が不在であり、店長の寺下が一人で店を切り盛りしているのだ。

 他の客の合間で有るが千春たちの方にも、無償でコーヒーをサービスしてくる店長の優しさには頭が下がる思いである。


「はい、お代わり。 ごめんね、時間が掛かって…」

「ありがとうございます、店長。 今日は友香もお休みですからねー、店長一人ですから仕方ないですよ。 話が終わったら、俺も手伝いに入りますから…。

 あれ、そう言えば友香はどうしたんだ? 今日はお前と一緒だったろう、一緒に帰らなかったのか?」

「友香ちゃんは別口よ。 今日のイベントの話を聞いて、学校の友達と一緒に遊びに来てたみたい。 私の所に挨拶に来た後は、ずっとそのお友達と一緒だった筈よ」

「ああ、じゃあまだ友達と一緒なのかな…」


 イベントの最中に千春は実況席で、観客スペースに居る朱美と友香の姿を目撃していた。

 それを見た千春は友香が朱美と共にイベントに来たと判断していたが、どうやらそれは早合点だったらしい。

 確かに友香は現役の高校生であり、学校には同年代の友人も居る筈だ。

 今回のイベントは可愛らしい使い魔が主役であり、友香と同年代の少女であれば興味を持ってもおかしくはない。

 友香たち以外にも魔法学部の実験場には、今日のイベントの話を聞きつけて見物に来ていた暇人をちらほらと見かけた

 その見物客たちの中に、遊びに来た友香とその友人も混ざっていたのだろう。


「それじゃあ話に戻るぞ。 とりあえずスィート・ストロベリーの件は置いておくとして、問題はもう一つの方だ。 朱美、"魔女狩り"ってのはなんだ、どうせ何か知っているんだろう?」

「噂だけならね…。 あんたも本来の魔女狩りがどんな物かは、なんとなく分かるわよね?」

「あれだろう…。 確か中世あたりに魔女を見付けて、拷問とかに掛けるやつ。 けど魔女なんて本当に居る訳ないから、ほぼ冤罪だっていう物騒な話…」


 一応は高卒である千春も、魔女狩りと言う言葉の本来の意味は漠然とではあるが把握していた。

 千春の口した大雑把な説明はそれなりに的を射ており、普通であれば"魔女狩り"の内容はこれになる。

 しかし当然ながら魔法学部の粕田教授が口にした"魔女狩り"は、千春の説明とは全く別の存在であった。


「基本はそれと似たような物よ。 悪い魔女を狩る自称正義の集団、でも中世と違って今の世界には本当に魔女が居るでしょう?」

「それって…、魔法少女が狙われているのか!? 一体どんな奴が…」

「噂によると魔法少女に恨みを持った連中が集まった集団みたいよ。 中世の"魔女狩り"よろしく、悪い魔法少女たちを懲らしめるために活動しているらしいわ。

 連中にとって魔法少女の存在自体が悪であり、彼女たちはこの世界に存在してはいけないの」

「そんな、酷いです…」


 現代の魔女と言うべき魔法少女を狙う集団、確か"魔女狩り"と呼ばれるに相応しい厄介な存在である。

 魔法少女として活動しているマジゴロウこと真美子に取っては他人事ではないらしく、僅かに怯えている様子であった。

 今の話を聞いてマジゴロウの脳裏に、かつて偽渡りに襲われてガロロを失った時の記憶が蘇ったのかもしれない。


「そんな連中が居たのかよ…、本当なのか?」

「あくまで噂レベルの話よ、実際にそんな連中が居るとは私も思ってなかったもの。 でも魔法学部の教授様が言うなれば、本腰を入れて調べた方がよさそうね…」

「私も魔法少女研究会の伝手を当たって、調べて見ますよ」

「魔法学部の忠告か…、嫌な事を思い出すなー。 どうなることやら…」


 朱美の口振りから"魔女狩り"と呼ばれる奴らは、実在すら怪しまれれる都市伝説のような存在らしい。

 しかしその情報を口にしたのがあの魔法学部なのだ、魔法学部の立ち位置がどうであれ捨ておくわけにはいかない。

 かつて千春は同じように粕田から"渡り"復活の情報を教えられて、やがて偽渡りの一件に深く関わることになった。

 今回もこの忠告が呼び水となって、"魔女狩り"と呼ばれる連中と関わることになるのでは無いか。

 今は腐っている暇は無いなと千春は気持ちを改めて、店長が淹れてくれたコーヒーを啜った。






 一方その頃、朱美たちとは別に今日の使い魔対決イベントに来ていた友香が友人と帰路についていた。

 最近はバイトなどで忙しくて余り友人との時間も取れなかったので、今日は一日中友人と遊ぶ予定なのである。

 その友人の少女は友香より一回り大きく、モデルのようにスラリと長い手足を生やしていた。

 風邪気味なのかマスクを付けている友人の素顔は窺えないが、その涼し気な瞳は大人びた印象を与える。

 私服姿の彼女たちが並んでいると、友人の方はとても友香と同年代の高校生には見えない。

 下手すれば大学生を通り越してOLに間違われそうな女子高校生は、先ほど後にしたイベントの余韻に浸っているようだ。


「どう、いっちー。 ガロロちゃん、凄く可愛かったでしょう。 結構面白かったよねー」

「うん、来てよかったわ…。 ありがとう、友香ちゃん」


 気心が知れた友人ということもあり、友香は千春たちと過ごすときと比べて砕けた喋り方をしていた。

 朱美と仲の良い友香が、彼女を通して今回の使い魔イベントの話を聞いたのは数日前である。

 学校で昼食を取っている時に何気なくそのイベントの話を所、友人がその話に対して非常に興味を示した。

 その友人はマジマジ内での配信を見るだけでは物足りず、実際にイベントを見たいと言って最終的に一緒に行くことになったのだ。

 魔法少女の使い魔…、というよりはマジゴロウとガロロに興味があったらしい友人は、遠目であるが彼女たちの様子を直に見られて満足している様子である。


「あの子たち…、凄く楽しそうだった…。 魔法少女、か…」

「いっちー…」


 魔法少女に対して複雑な思いを抱いている友香の友人は、使い魔ガロロと笑い合う魔法少女マジゴロウの姿に思う所があるのだろう。

 友人の口から出てくる"魔法少女"の単語には言いようのない重みがあり、それはまるで呪詛のようでもある。

 遠い日の過去を思い出すかのように空を見上げている友人の姿を前にして、友香は何処か悲し気な表情を浮かべていた。




これで今回の話は終わりです。

第四部の初回と言うことでまずは軽めに、戦闘無しの日常回を書いてみました。

後の展開に備えて不穏な話題をちらほらと混ぜたので、あんまり日常回とは言えないかもしれませんが…。


次の話は来週土曜から開始予定です、今度はちゃんとNIOHの戦闘シーンがありますよ!

今回の話は週二ペースでのんびり進めたので、次はもう少しペースを上げて週三・四で投稿したいですね。

そう言いながら結局、次も週二ペースでだらだら進めていくかもしれませんが…。


それはさておき、日常の愚痴を一つ…。

コロナの影響かは分かりませんが、週一で通っていた近所のコーヒー店が閉店するそうです。

通っていた店が閉まると、ダメージがでかいですよね!?

ああ、知っている店がどんどん無くなっていく…。


では


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