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俺はマスクドナイト  作者: yamaki
第三部 "渡り"事変
215/384

6-15.


 こうして悪魔と手を結んだ志月は、白奈の命を奪うために使い魔シロを狙うことになった。

 相手はただの使い魔であり、確かに使い魔ライフの力であれば簡単に事を成せるだろう。

 しかし実際にシロを狙った場合、志月たちには最大の障害が立ちふさがることになる。

 マスクドナイトNIOH、全盛期の使い魔ライフをも一蹴した忌まわしきヒーロー様だ。

 基本的に使い魔シロは千春と四六時中行動を共にしており、シロを襲おうとすると必然的にNIOHの対処も必要だった。


「上手く行ったわ、これであのお嬢様はお終いね。 一度限りの奇襲が失敗した時は焦ったけど、上手く軌道修正できたわ」


 志月の使い魔ライフは彼女の目の前で、白奈の使い魔シロの体ごとクリスタルを破壊して見せた。

 全てが上手く行った事を見届けた志月は怯える演技をしながら、何も知らない顔をして無事に自宅へと戻っていた。

 自室に戻った彼女は携帯で友人たちとやり取りをしながら、目的を達成するための苦労を思い返す。


 当時のマスクドナイトNIOHこと千春は、ライフは既に倒されたと信じていた筈だ。

 居なくなった相手を何時までも警戒し続ける筈もなく、千春が油断していることが志月の頼みの綱だった。

 実際に相手の帰宅途中に仕掛けた奇襲は、咄嗟の千春の機転が無ければ上手く行っていただろう。

 しかし運悪くあの奇襲を切り抜けられてしまい、相手にライフの生存を知られてしまった時は非常に焦った。

 今のライフでNIOHに正面から勝てるとは思えず、どうやってあれを退けて使い魔シロを倒せばいいかと悩んだ物だ。


「雅美ちゃんや公子ちゃんには悪いことをしたな…、明日学校に来てくれるかな?」


 そして志月はNIOHの対処を諦めて、NIOHとシロの傍から離すための方向でアプローチを変えた。

 最終的に彼女は自分自身をNIOHたちの前に晒すリスクを冒して、シロをNIOHの居ない場所に誘い出したのである。

 運がいいことに友人がシロに嵌ってくれたことで、怪しまれることなく公園へシロを連れ出せた。

 後は簡単であり、NIOHと言う障害が居なければ使い魔一匹などライフの敵ではない。

 見事にライフはシロのクリスタルを破壊し、魔法学部の思惑通りに白奈は病院で危篤状態となったらしい。

 間接的な手法であるが白奈の殺害に成功した白奈は、魔法学部の協力を得られる権利を勝ち取ったのだ。


「ライフ…、ごめんね、あなたを助けられなくて…。 あなたには本当に助けられたわ…」

「ヲヲ…」


 あくまで助かるのは志月だけであり、残念ながら今回の功労者である使い魔ライフの運命は変えられない。

 そう遠くない内にライフは完全にモルドンと化し、使い魔であったころのライフは全て塗りつぶされるだろう。

 志月はライフを労わるように手を取り、自分の命を今日まで繋ぎとめてくれた恩人に謝罪と礼を述べる。

 ライフも己の運命を理解しているのか、悲し気な鳴き声と共に主の方に体を寄せた。


「約束するわ、あなたのためにも私は絶対に幸せになってみせる。 あのお嬢様の分まで、私は私の人生を生きてやるわ…。

 そうよ、私は生きるの。 絶対に生き残ってやるのよ…」


 ライフの手を強く握りしめながら、志月は自らへ言い聞かせるように言葉を繰り返す。

 使い魔ライフ、そして白奈を犠牲にしてまで生きようとしている罪悪感で、圧し潰されそうになっているのだろう。

 志月の体は感情の高まりから僅かに震えており、その視線は机の上に置かれた写真立てに向けられている。

 そこに飾られた修学旅行中に撮った友人たちとの記念写真、それは他を犠牲にして手に入れた志月の日常の象徴であった。






 志月はシロと千春を別行動させるために、彼の妹である彩雲を利用できないかと考えた。

 しかし志月は過去に友人たちに対して、マスクドナイトNIOHなどの魔法少女関連の事柄は苦手であると話している。

 いきなり魔法少女の関係者である彩雲に接触しようとすると、友人たちから怪しまれるかもしれない。

 そこで志月はターゲットであるシロの存在に目を付けて、動画で可愛らしいシロのファンになったという筋書きを考えたらしい。


「雅美ちゃん、公子ちゃん。 これ知ってる?」

「あれ、これって確かNIOHの使い魔じゃん。 飛鳥くんと映画に出ていた子ね。 志月って魔法少女関係、苦手じゃなかった」

「これは可愛いから別、全然怖くない。 むしろ可愛いもん、こんな子が居たなんて私知らなかったわ」

「使い魔ねー、どれどれ…。 こ、これは…!?」


 志月の企みは彼女の勧めを受けてシロの事を知り、その虜になった少女の暴走によって急激に加速していった。

 シロちゃんに会ってみたいと話していた友人たちに、彩雲を通してNIOHに頼めないかと最初に提案したのは志月である。

 しかしその後の流れは全て友人たちが主導で行った物であり、志月はそれに乗っかっただけだ。

 最終的に最大の障害である千春抜きの公園散歩と言う理想的な展開となり、この機を逃すことなく志月は目的を果たせた。


 公園での事件の翌日、志月は学校で友人たちと顔を合わせていた。

 昨日に今日なので友人たちはショックで休みでも取るかと思ったが、彼女たちは以外に打たれ強かったらしい。

 志月は学校で友人たちと共にシロの死を嘆き、偽渡りと呼ばれている謎の使い魔に対する恐怖を分かち合うつもりでいた。

 結果だけ見れば己の目的のために志月は友人たちを騙した上に、彼女たちを危険に巻き込んでしまった。

 友人たちを利用したことへの罪悪感を押し隠しながら、志月は彼女たちの待つ学校へと登校してきたのだ。


「あのモルドン…、じゃなくてモルドンに化けた使い魔は許しておけないわ!! あんたもそう思うでしょう、志月!!」

「私たちの手でシロちゃんの仇を取るのよ! 一緒に頑張りましょう、矢城さん!!」

「は、はい…」

「…雅美ちゃん、公子ちゃん?」


 しかし志月の予想に反して、友人たちは犯人に対する怒りが恐怖や悲しみより上回っているようだ。

 短い間であるが共に公園で遊んだシロは、友人たちにとって大事な存在となっていたのだろう。

 志月の友人たちは困惑している様子の彩雲と共に、すっかり対偽渡りの急先鋒となっていた。


「あいつの居場所を見つければ、私たちの勝ちよ! 矢城さんのお兄さんが居れば、あんな奴なんてイチコロよ!!」

「そうよ、あの金ぴかの姿ならあいつなんて敵じゃ無いわ!! きっとあいつはまだこの近くに居るわ、知り合いを集めて探しましょう!!」

「そ、それは危ないからやめといた方がいいのでは…」


 彼女たちの強気の理由の一つは、マスクドナイトNIOHの妹が仲間に居る事だった。

 例の動画を通してNIOHがあの渡りを圧倒した様子は世間に知られており、既に両者の格付けは済んでいる。

 昨日は千春の到着が間に合わずに逃げられたが、それが間に合っていたらあの偽渡りは倒されていただろう。

 シロの仇を取るために志月の友人たちは、偽渡りの居場所を見つけてやろうと息を荒くしていた。

 志月としては昨日のことを切っ掛けに再び魔法少女から距離を置き、危険人物と繋がりのある彩雲から離れるつもりでいた。

 しかしこの様子では少なくとも友人たちは、犠牲となったシロの仇を取るまでは彩雲と積極的に交流ししてくだろう。


「ふん、あんな化け物なんて死ねばいいのよ」

「本当、いい迷惑よねー。 あんな使い魔を作った魔法少女の気が知れないわよ」

「そ、そうね…」


 あの偽渡り、使い魔ライフを倒されてしまえば、不治の病を抑える術をなくした志月は遠からず死ぬだろう。

 そんな事実を知りもしない志月の友人たちは、間接的とは言え自分の死を望むような言葉を口にしている。

 これも友人たちを騙したことへの罰なのかと、真犯人である志月は気まずい思いをしながら友人たちのやり取りを見ていた。


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