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俺はマスクドナイト  作者: yamaki
第三部 "渡り"事変
200/384

5-20.


 魔法学部、魔法少女を研究する世界で唯一の学び舎である。

 そこの長である粕田教授は、魔法学部がある大学学長すら知らない地下の秘密研究室に居た。

 彼はスクリーンに映されている映像、マスクナイトNIOHと使い魔ライフの戦いを興味深そうに見ている。

 この時はまだ例の動画が投稿される前だったので、この映像は魔法学部が独自に入手した物のようだ。


「ははは、まさか彼にこんな奥の手があったとはね…」

「いいんすか、教授。 あの偽物、NIOHに倒されたっすよ。 折角、本物の方は助けたのに意味無いんじゃ…」


 隣に居る魔法学部の雇われ魔法少女である彩花は、訝し気に粕田に尋ねる。

 彼女は以前にこの偽渡りを間接的に支援するため、本物の渡りをNIOHから逃がす手助けをしていた。

 しかし今回はそのような指示を受けておらず、彼女自身が偽渡りを助ける義理は無いので特に介入はしなったらしい。

 その結果が偽渡りの敗北であるが、此処であれの敗北を許すくらいならばどうして本物の渡りを逃がしたのだろうか。


「あの使い魔…、確かライフという名前でしたね。 ライフの能力であれば、こちらからの支援が無くても問題ないと判断したのですよ…」

「確かにあれば渡り以上の化け物っす…。 けど結局、NIOHにやられましたよ」

「それも予想外でしたよ。 良くて痛み分けで終わると思ったのに、まさかあれだけの切り札が残されていたなんて…」


 志月しか知らない筈の使い魔ライフの名前を知る粕田は、その規格外の性能についても把握していたようだ。

 ライフのあの力を知っていれば、介入は不要と判断しても仕方ないかもしれない。

 その結果が使い魔ライフの完全敗北であり、残念ながら魔法学部の粕田教授の思い通りにはならなかった。

 本人の言う通り今回の失敗は、マスクナイトNIOHのAH-UNの型の能力が本当に予想外だったのだろう。


「そもそもNIOHたちの罠を教えてやれば、こんな事にはらならなかったんじゃ…。 あしながおじさん気取りの教授なら、簡単っすよね?」

「クリスタルチェイサー、矢城さんたちも面白いことをしますね。 まあそうしても良かったのですが、一度あの使い魔の性能を見ておきたかったので…」


 魔法学部の情報網を持ってすれば、クリスタルチェイサーなる魔法少女が存在しないことは把握済みだ。

 あしながおじさん、魔法少女の研究の一環で志月へ密かに情報を流していた粕田であれば、これが罠であると事前に彼女へ伝えられた筈である。

 しかし粕田はあえて情報を伏せて、志月の使い魔ライフとNIOH率いる魔法少女たちの戦わせた。

 どうやら粕田は幾多のクリスタルを取り込むことで限界突破した使い魔ライフ実戦データ欲しさに、朱美が主導した作戦を放置していたらしい。


「失敗したっすねー、教授。 偽渡りが死んだことで、使い魔の力で延命していた子もお終いっす。 今まで無理してた分、下手をしたらもう一人の方より早くに…」

「いや、まだだよ…。 彼女の命はまだ繋がっている…」

「え、でもあの使い魔は…」


 その結果が偽渡り、志月の病を抑えて彼女を延命させていた使い魔ライフの敗北だった。

 NIOHの一撃で体ごと本体であるクリスタルが砕かれた使い魔ライフは、他の使い魔たちと同様に復活まで数か月を要する。

 ライフと言う抑えを失った志月がその間を生き続けるとは思えず、他者のクリスタルを奪ってまで命に拘った彼女の破滅はもう確定していた。

 しかし粕田の口振りだと、ゲームオーバーを迎えた筈の志月にまだ希望が残されていると言うのだ。


「彼女は生きる事に強く執着してました…、そんな彼女が生み出した使い魔があんな簡単にやられる筈が無いのです」

「けどNIOHの仲間の話だと、現場には奴のクリスタルが…」

「彼女たちが幾つのクリスタルを手に入れたか把握していますか? その中の一つを偽装用として確保するくらいの知恵はありますよ…」

「そ、それじゃあ、あの偽渡りはまだ…」

「ふふふ、これはこれで悪くない展開です。 命が尽きかけている魔法少女がこの後に何をするのか、その命が尽きた時にどうなるのか…。 やっぱり魔法少女は面白いですねー、実に興味深い!!」


 NIOHの渾身の一撃で消滅し、その現場に残された一個相当のクリスタルの残骸。

 しかし使い魔ライフにあの状況を打破する能力を隠し持っていたら、そして自身のクリスタルの代わりになる何かを持っていれば話が変わってくる。

 使い魔ライフの生存、引いては志月の命がまだ尽きていないことを確信している様子の粕田は不気味に微笑む。

 そのマッドサイエンティスト丸出しの姿を横で見ていた彩花は、自分の立ち位置を再認識してしまい憂鬱そうな表情を浮かべていた。






 マスクドナイトNIOHがお披露目したAH-UNの型、鮮烈と言っていい活躍ぶりは世間で話題となった。

 その影響はAH-UNの型の生みの親であり、千春の妹である彩雲にも波及していた。


「おい、矢城! お前はNIOHのあの姿のことを知ってたのか!?」

「出し惜しみしやがって、もっと早く出してくれればアヤリンは…」

「まあ、勝ったからいいじゃんか。 見ろよ、例の動画にマスクドナイトの劇中歌を入れ込んでる動画もあるぞ」

「マスクドメビウス版もあるよなー、矢城はどれが好きなんだ?」

「あ、あの…」


 動画を見た者の中には、AH-UNの型を出し惜しみしていたように見える千春を問題視する声も多少はあった。

 しかし結果的に大勝利に終わったこともあり、終わり良ければ総て良しということで概ね高評価であるようだ。

 マスクドシリーズのBGMなどを入れて編集した動画をあげている輩も居り、ネット上ではちょっとした祭りとなっている。

 NIOHが何かするたびに彩雲が質問攻めに合うのは恒例なのだが、今回はAH-UNの型のインパクトが大きかった事もあって何時もより人が多い。


「す、すみません、ちょっと用事があるので…」

「あ、待てよ!」

「NIOHにはまだ強化形態があるのか…」

「飛鳥くんとの関係は…」


 彩雲渾身のデザインであるAH-UNの型が概ね好評であることは、NIOHのデザイン担当者としては嬉しい限りである。

 しかし休み時間の度に自席に群がられたら、流石の彩雲も我慢の限界が来てしまう。

 付き合っていられなくなった彩雲は、この苦境から脱出するために急に席を立って教室から飛び出そうとする。


「…きゃっ!?」

「ああ、ごめんなさい。 前を見てなくて…、大丈夫ですか?」


 後ろから聞こえてくる自分を呼び止める声のせいで、前方の注意が疎かになっていた彩雲は廊下に出た所で誰かにぶつかってしまう。

 軽く肩を接触した程度だったが、その衝撃で彩雲とぶつかった人物がその場に倒れそうになってしまう。


「ちょっと、大丈夫、志月!!」

「うん、私は平気…。 っ!? い、いいわ、気にしないで…。 ほら、行きましょう」

「志月がそう言うなら…、次から気を付けなさいよ」

「は、はい…、本当にごめんなさい…」


 どうにかバランスを立て直して転倒を避けた彩雲はずれた眼鏡を掛け直しながら、ぶつかってしまった被害者に謝罪する。

 その被害者…、志月は一緒に歩いていた友人の支えを受けて転倒を免れたらしい。

 志月の友人は敵意の籠った視線を彩雲に向けるが、張本人である志月は面倒ごとを嫌がって彩雲の謝罪を受け入れてくれた。

 彩雲は恐縮そうに再び頭を下げて、教室に入って行く志月を見送る。


「全く、気を付けて欲しいわよねー。 あれってあの矢城さんよね、最近調子に乗ってない?」

「もうすぐ修学旅行なのに、怪我したら困るもんね。 大丈夫、志月。 また調子が良く無さそうだけど…」

「ちょっと寝不足なだけ、修学旅行までには体調を戻すから平気よ。 それより昨日テレビで…」


 そこには少々顔色が悪そうであるが、普段通りに友人たちと学校生活を送っている志月の姿があった。

 友人たちと昨日見たテレビや雑誌の話題で雑談する彼女の姿は、何処にでも居る平凡な女子学生にしか見えない。

 他者の犠牲を許容してまで自身の命を望んだ魔法少女志月、彼女が自らの力で実現させた夢の光景が広がっていた。


これで今回のお話は終わりです。次話の開始は早ければ来週、遅くとも再来週くらいから開始したいですね。


白奈と志月、似た境遇でありながら全く違う道を選んだ魔法少女たち。

命尽きかけている二人の少女の運命は如何に!?

次回、第三部最終話! 「白奈と志月」をお楽しみ!!


では。

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