表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺はマスクドナイト  作者: yamaki
第三部 "渡り"事変
166/384

4-6.


 同年代、狙ったかのような名前を持ち、隣り合う学区で生活する少女たち。

 これだけでも図ったかのような共通項であるが、彼女たちは更に互いを敵視する要因を備えていた。

 丹心の魔法少女としての姿は、侍を題材とした有名な漫画作品のキャラクターをリスペクトした物である。

 そして初めて見る伊智子・美湖の魔法少女としての姿は、丹心とよく似た侍姿だったのだ。


「うわっ、魔法少女の能力まで被っているのかよ」

「聞いて下さい、NIOHさん! こいつらが私たちの能力をパックたんです!!」

「私が一番、この作品を愛しているんです。 他の連中の能力は、愛の無い猿真似よ」

「はぁ!? 美湖ちゃんはこの漫画の一話目から追っている生粋のファンです。 アニメの方から入ってきた俄かと一緒にしないでください!!」

「はいはい、落ち着いて…」


 どうやら彼女たちは偶然にも同じ漫画作品から能力を構築したようで、彼女たちの姿は明らかに同じ系統の袴姿と刀装備であった。

 流石に模倣しているキャラクターまでは被っていないようで、それぞれ袴の色や刀の形状や数は異なってはいる。

 しかし元ネタが被っていることは変わりなく、彼女たちは他の者の能力は自身のパクリであると言い張っていた。


「魔法少女の力について聞くのも地雷だったのかよ…、まさか元ネタまでとは…」

「此処まで作為的だと、運命の悪戯って言葉では済まされないわね。 これもゲームマスターの遊びの一環なのかしら…」


 先ほどまでの様子を見る限り、千春が幾らNOと言っても彼女たちが対渡りの作戦に首を突っ込んでくる事は火を見るよりも明らかであった。

 そのため千春は少しでも建設的な話をしようと、急遽メンバーに加わった伊智子・美湖の魔法少女としての力が何か尋ねたのだ。

 そこから始まったのは最早営業妨害と言っていい、店内で始まった魔法少女3人の変身ショーである。

 店内に居る他の客たちのことを無視して、丹心も交えて互いに張り合う様に侍姿へと変身して見せたのだ。


「魔法少女同士で作品の被りは珍しく無いだろう、そんなに気にすることは無いよ。 スィートシリーズの魔法少女なんて、この世界に何人居るんだよ」

「最近、あんたのパクリも出てきたしね。 もしかしたら他にも居るかもよ…」


 そもそも始まりの魔法少女だった子は、スィート・ストロベリーと言う架空のキャラクターを模倣した能力を構築した。

 完全にオリジナルの力を作り出した魔法少女は殆ど居らず、大抵は何らかの影響を受けた能力に落ち着くのだ。

 千春に能力を授けた彼の妹である彩雲も、特撮作品であるマスクドナイトから影響を受けてNIOHを生み出していた。

 最近はそのNIOHを元ネタにした魔法少女も出てきており、魔法少女の世界で能力の被りを気にしても仕方無いだろう。

 加えて彼女たちが模倣した漫画作品が、日本で一番売れている漫画雑誌で連載している人気漫画である。

 それがマイナーな作品であればパクリ疑惑もあったかもしれないが、アニメ化までしているあの侍漫画であれば偶々被っただけに違いない。


「ほら、店の迷惑になるから変身は解いてくれ。 …まだ騒ぐようなら、実力行使に出るぞ」

「うっ…」

「すみません…」

「あぁぁぁ…」


 本人的には不本意であろうが、これまで何人も魔法少女を倒してきた千春の眼力で少女たちの諍いを止める事が出来た。

 彼女たちの不毛な喧嘩に突き合わされて若干苛ついていた事もあり、千春の言葉が単なる脅しでは無いと感じ取ったらしい。

 千春の仲裁を受けて渋々と元の制服姿に戻った少女たちを見て、ようやく本題に入れると内心でほっとしていた。






 千春個人としては不確定要素を増やしたくないが、魔法少女の仁義として縄張りを無視する訳にはいかない。

 彼女たちの管理する縄張りで渡りのモルドンと戦う予定となっている千春は、伊智子・美湖を今日の作戦に加えることを強いられた。

 そのため待ち合わせ場所の飲食店では臨時の作戦会議が開かれて、急増メンバーである彼女たちに今日の段取りを伝えていた。

 幸か不幸か今日の作戦は寄せ集めと言っていい千春と仲間たちがこなせるくらいの、非常に大雑把な作戦内容となっている。

 事前に流れさえ把握しておけば、そこまで酷いことにはならないだろう。


伊智子(いちこ)丹心(にこ)美湖(みこ)か…」

「一子・二子・三子。 親戚か何か?」

「違う!!」「そもそも数字じゃないから!」「美湖とこいつらを一緒にしない!!」

「みんな、怒らないの。 ほら、アヤリンと一緒にスマイル・スマイル!!」


 その作戦会議には少し前に現地入りしていた、マジカルレッド、ジュニア、アヤリンの中学生魔法少女たちの姿もあった。

 同年代のという事もあってすぐに地元魔法少女と打ち解けた彼女たちは、店内で姦しく騒いでいた。

 ちなみに彼女たちと此処まで運んできた、アヤリンの親戚らしい運転手役の青年は無言で彼女たちのやり取りを撮影している。

 恐らくマジマジのアヤリンのチャンネルで、今日の作戦模様の一部を編集して投稿するに違いない。


「…ていうか来るのが早すぎだろう、お前たち。 ちゃんと学校は行ったのかよ?」

「ふっふっふ。 ヒーローには学業より優先することがあるのよ!!」

「今日は体調不良で欠席でーす!!」

「本当は休みたくなかったけど…、これも先輩の名誉回復のため!!」

「お前らなー」


 時刻はまだ夕方を回ったころであり、彼女たちが学校に行っていたなら今の時刻はまだ移動中である筈だった。

 千春たちの住む街からこの街まではそれなりの距離があり、本来の予定であれば彼女たちの到着はもっと後になる予定になっていた。

 しかし現実に彼女たちが此処に居ると言う事は、千春の予想より大幅に早く出発している事を示している。

 案の定、彼女たちは悪びれる様子も無く、本日の学業をボイコットしたと言ってきた。


「他の子たちはちゃんと学校が終わってから、こっちに向かっているわね。 後2時間くらいは掛かるでしょうね」

「うーん、分かっていたけど遠いなー。 店を変えた方がいいかな、結構迷惑を掛けたみたいだし…」


 真面目に学校に行っていた他の魔法少女の到着まで時間があり、千春たちは時間を潰す必要があった。

 本来であれば集合場所として設定していたこの店に居座る気だったが、今日は色々と迷惑を掛けてしまったのでこれ以上店に居るのも気が引ける。

 後で連絡すればいいので集合場所を変えることは問題無いだろうが、しかし何処に行けばいいのだろうか。


「あ、私カラオケに行きたいー」

「いいね、カラオケ。 私、この近くで良い店を知っていわよ…」

「遊びじゃ無いんだぞ、お前たち…。 まあ、いいけどさ…」


 そんな千春に助け船を出したのは、地元の魔法少女たちであった。

 まるでこれから遊びに行くようかの勢いで、彼女たちは千春たちを地元の遊び場に誘ったのだ。

 アヤリンたちも彼女たちの誘いには乗り気のようで、この後に渡りのモルドンとの戦いが控えていることを忘れているかのようだ。

 本番前から色々と疲れた千春は女子中学生たちの勢いに逆らう気も起きないようで、唯々諾々と彼女たちと共に地元のカラオケ店へと着いて行った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ