3-0. 「劇場版マスクドメビウスwithマスクドレジェンド 幻想の世界の魔法少女たち!!」
それは人々の平和を守るマスクドメビウスを作り出した、メビウスコーポレーションが発表した新製品だった。
既存のAR(Augented Reality)を大きく超えたその製品は、人々に全く新しい拡張現実の世界を披露した。
一瞬の内に世界は絵本の中のよう幻想的な空間となり、人々はつらい現実を忘れて夢のような世界を満喫できる。
十分に発達した科学技術は魔法と見分けが付かない、"MagicAR"と名付けられたこの製品は世界にに衝撃を与えることになる。
しかしそれは最終的に別の意味で人々に衝撃を与えたのだ、"MagicAR"から飛び出し来た魔法少女ブラックベリーと彼女が従える魔物たちの手によって…。
「君も…、魔法少女なのか?」
「お願いです、私を助けて下さい!! 二つの世界を守らないと…」
"MagicAR"から飛び出してきた魔法少女ブラックベリーは、宣戦布告もすることなく"MagicAR"の発表に使われた会場を占拠した。
今ではその会場は御伽噺に出てくる巨大な城のような姿となり、沢山の怪物たちが守護する難攻不落の要塞と化したのだ。
その怪物たちは世界中の童話や物語をモチーフにしているようで、架空の存在であった者たちが現実へと侵略していった。
メビウスコーポレーションと縁が深いマスクドメビウスこと永路は、この状況を打破するために一人その城へと乗り込んだ。
しかし圧倒的な戦力を前に撤退を余儀なくされたのだが、その道中で拘束されているもう一人魔法少女と出会った。
永路が城から救い出した魔法少女、その名はレッドベリー。
レッドベリー曰く、彼女ともう一人と魔法少女ブラックベリーは此処とは別の幻想の世界の住人らしい。
本来なら交わることがない二つの世界、しかしその世界の橋渡しをしてしまったのが"MagicAR"だと言う。
幻想の世界を疑似的に作り出す科学技術の魔法は、皮肉にも本当の幻想の世界と繋がる道を作ってしまったのだ。
会場を占拠した魔法少女は常日頃から、幻想の世界に押し込められていることを不満に思っていた。
そして他の世界へと侵略できる絶好の機会を見逃すことなく、口煩い同胞を拘束した上で永路の世界に乗り込んできてしまう。
会場に上書きするように現れた城はブラックベリーの居城であり、その中で捕まっていた彼女を永路が助けたということだ。
「幻想の世界と現実の世界は常に隣り合わせの存在であり、決して交わることのない平行な存在。 その二つの世界が交わってしまえば、やがて世界のバランスが崩れて大変なことに…」
「そんなことは絶対にさせない!? でもあれだけの敵が居たら、あの城には…」
「…諦めるな、メビウス!!」
「あ、あなたたちは…」
世界を救うためには、ブラックベリーの居城の中に守られた"MagicAR"を破壊しなければならない。
しかしその城はブラックベリーが率いる無間とも思える数の怪物たちが守っており、実際に永路はその攻略に失敗して逃げ帰る羽目になった。
圧倒的な戦力を前に心が折れかけるマスクドメビウスこと永路、そんな彼の前に偉大な先輩方が現れる。
かつて共闘したことがあるマスクドキングと、彼に率いられたマスクドレジェンドたちと共に世界を救うための戦いが始まろうとしていた。
マスクドレジェンドたちの助けもあり、マスクドメビウスこと永路と魔法少女レッドベリーは"MagicAR"のある城へと少しずつ進んでいく。
しかしその代償として頼りのレジェンドたちは一人、また一人と永路たちの元から離れてしまう。
既に怪物たちは城だけでなく周辺の街中にも多数潜んでおり、永路たちの足を止めるために次々と襲い掛かって来たのだ。
「こいつらの面倒は俺が見る。 お前は先に行け!!」
「…っ、ナイト先輩! 後はお願いします!! 行くよ、レッド」
「ありがとうございます、騎士様!!」
「ふっ…。 仮面の騎士、マスクドナイトが麗しい少女のためにこの命を懸けて戦おう!!」
今も西洋騎士のような姿をした仮面の戦士、マスクドナイトが永路を先に進ませるために怪物たちの前に立ちふさがる。
マスクドナイトは悲痛な顔を浮かべているレッドベリーを元気づけようと、気障な台詞と共に怪物に向かって行った。
永路とレッドベリーは戦い始めたマスクドナイトに背を向けて、目的地であるブラックベリーの城へと駆けていく。
歴戦の戦士であるマスクドナイトも、これだけの数の怪物が相手では苦戦を強いられた。
必殺の剣戟でまた一体の怪物を切って伏せるが、その穴を埋めるように何処からともなく新しい怪物が生み出される。
既に世界の崩壊が進んでいるのか、現実世界に幻想の怪物が自然発生するようになっているらしい。
「ちぃ、数が多いな…」
「…手伝いますよ、マスクドナイトさん」
「何っ!?」
幾ら戦っても減らない怪物たちの前に、マスクドナイトの口から自然と弱筋な言葉が出てしまった。
そんな劣勢の騎士に救いを差し伸べたのは、何時の間にかマスクドナイトの背後に立っていた青年だ。
いきなり背後から話しかけれたマスクドナイトは、動揺した様子で後ろに立つ青年の方へと振り向く。
「やれ、シロ」
「〇〇〇〇〇っ!!」
青年の号令と共に、何処からか飛んできたのは翼の生えた奇妙なバイクであった。
そのバイクは機械羽を羽ばたかせながら突撃して、地上に居る怪物たちを蹴散らし始める。
奇妙な鳴き声をもらす不思議なバイクは、その巨体で次々に怪物たちを弾き飛ばして行った。
「君は…?」
「連中のお仲間ですよ。 そしてあなたのファンでもある。
…変身っ!!」
「っ!? その姿は…」
そしてその青年は、マスクドナイトとよく似た仮面の戦士へと変貌する。
東洋風の鎧姿や仁王像を思わせる仮面という差異はあるが、それはマスクドナイトとよく似た姿であった。
赤い鎧の戦士となった青年は、マスクドナイトの隣に並び立つ。
「NIOH…、マスクドナイトNIOHです!! 仮面の騎士、マスクドナイトが世界の平和のために戦おう…、なんてな」
「ああ、その通りだ!! 行くぞ、NIOH!!」
「はい!!」
幻想の世界の住人たちが全て、マスクドメビウスや他のマスクド戦士たちの敵では無かった。
マスクドナイトを助けに現れたそれは、幻想の世界のマスクドナイト、その名はNIOH。
二人の仮面の騎士は、勇敢にも迫り来る怪物たちに向かって駆けだした。
スクリーン上に映し出されたマスクドナイトNIOHは、そのまま本家のマスクドナイトと共に戦い始める。
その戦いは場面転換するまでの数十秒間続き、主役であるマスクドメビウスのシーンへと場面転換していた。
殆どの人間はマスクドメビウスが魔法少女の子と共に、事件の元凶である"MagicAR"へと向かう姿に夢中になっている。
しかしその中で一人、先ほどのマスクドナイト同士の共闘シーンを脳内リプレイしながら一人興奮する男の姿があったた。
「うぉぉぉぉぉぉっ、うぉぉぉぉぉっ!!」
「お兄さん、静かにしてよ…」
「はぁ、完全に壊れているわねー、バカ春」
勝手にマスクドナイトを名乗っているだけの自分が、ついには公式作品に呼ばれる程になった。
数か月前に撮影した映像を初めて目の当たりにした千春の目から自然と涙が溢れ、感情のままに声にならない声を出している。
出演時間だけで言えば1分程度のゲスト出演とは言え、自分の存在はマスクドシリーズの歴史に刻まれたのだ。
一緒に来ていた朱美や香の静止も耳に入らず、千春は一人で何時までもその感動に酔いしれていた。
はい、前回に続いてネタ回です…。
劇中でのマスクドシリーズ公式作品との関りについては、何処かで話にしたいと考えていました。
実は明日(4/5)でこの小説を投稿してから丁度1周年なので、折角の機会なので今回の話を捻じ込んだ次第です。
…決して「シン・仮面ライダー」に乗っかった訳では無いです、本当に。
少しは時間が取れるようになりましたが、暫くは更新速度が落ちそうです、
5月くらいまでは週一ペースになるかもしれませんが、気長に待ってくれると嬉しいです。
では。




