表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺はマスクドナイト  作者: yamaki
第三部 "渡り"事変
141/384

2-7.


 今日は密かな目的であった千春に出会う事は叶わず、その代わりに色々な事が立て続けに起きた。

 佐奈の感覚的にはもう一日が終わっていいくらいだが、現実の時間帯はまだ午後を回ったくらいである。

 このまま喫茶メモリーに一日中居座るか、意を決して千春を見舞いに行くか、それともこのまま帰るか。


「佐奈さん、あのオジサンが言った通り今がチャンスだよ! ラスボスが本気を出す前に、佐奈さんのおっぱいでNIOHを誘惑するんだ!!」

「都合のいいことに相手は病人だよ! 看病する振りをして、NIOHにその胸を触らせて既成事実を…」

「あなたたち! 何処でそんなハレンチな事を覚えてきたの!!」


 あんずと梨歩は勧めるのは当然ながら押しの一手であり、千春に対して色仕掛けを掛けるように嗾ける。

 どうやら千春の友人である海翔の話を真に受けたようで、朱美には無い佐奈の最大の武器を使うべきだと言うのだ。

 しかし見るからに奥手な女子高生である佐奈には、そんな恥ずかしい真似ができる訳が無い。

 佐奈は自身が千春に色仕掛けをしているシーンを思い浮かべてしまったのか、顔を真っ赤にしながら彼女たちの提案を拒絶する。


「ほら、もう用事は済んだでしょう。 何処かでお昼ご飯を食べて、帰りましょう」

「ええー、もう帰るのー。 折角だからNIOHの見舞いくらいは行こうよー」

「やっぱり純情な佐奈さんが色気で責めるのは無理があるかー。 それなら色仕掛けは無しでいいから、あんずの言う通りただの見舞いくらいはしない? 折角お洒落したんだし…」


 佐奈のことを良く知る小学生たちは、天地がひっくり返っても彼女にその手の行為は出来ない事は当に理解している。

 半分悪ふざけで佐奈が受け入れる筈も無い提案してみたが、予想通り佐奈はそれを拒絶した。

 しかしこのまま帰るのは味気ないと考えたのか、彼女たちは小細工抜きで純粋に病状の千春を見舞おうと言う。


「お、お見舞い!? 千春さんの家に行くのよね…。 いいのしから? そ、それによく考えたら私、千春さんの家を知らないわ」

「癪だけどあのラスボスに聞けばいいじゃん」

「もしくは妹さんだね。 此処で妹さんと仲良くしておくのも手じゃないか、"将を射んとする者はまず馬を射よ"かな?」

「うーーーーん…」


 正直に言って佐奈は、気軽に千春の家へ見舞いに行った朱美のことを羨ましく思っていた。

 しかしいざ自分がそうしようとすると、不安や羞恥やらの感情に苛まれて躊躇いを覚えてしまう。

 本当に自分なんかが千春の元に行っていいのかと、佐奈は思考の渦に嵌まり込んでしまっていた。











 佐奈が一人悩みに耽っている頃、喫茶メモリーに新たな来客が現れる。

 店に入ってきた小さなお客様に対して、モブ落ちのショックからようやく立ち直った友香が応対をする。


「いらっしゃいませ…? 僕、お母さんかお父さんは…」

「…」


 来店したお客様を案内しようと出てきた友香は、その人物の姿を見て一瞬固まってしまう。

 それはどう見ても小学生にしか見えない子供であり、近くには保護者などの連れも見当たらない。

 恐らく先ほど案内したあんずや梨歩と同じくらいの年齢であり、一人で喫茶店には居るには少々早すぎる。

 子供は短めに切られた髪の上に帽子を被り、男の子用らしき青いジャンバーとハーフパンツを着ていた。

 見た目からその子供が少年であると判断した友香は、連れが居ないか確認するが彼からの反応が無い。


「…NIOH」

「えっ?」

「マスクドナイトNIOHを出せ、此処に居るのは知っているんだ!!」


 友香を無視して店内を見回していた少年は、この時に初めて声を出した。

 まだ声変わりをしていない甲高い声で、少年はいきなりマスクドナイトNIOHを呼び出したのだ。

 マスクドナイトNIOHの中の人である千春が、この喫茶店メモリーで働いていることは周知の事実である。

 実際に前回のゲーム実況魔法少女の一件の動画では、何度もこの店内でのやり取りが無許可でまとめられていた。

 どうやらこの少年はマスクドナイトファンのようだが、残念ながら彼の願いは叶わないだろ。


「ごめんね、千春さんは風邪で今日お休みなの。 風邪が治ったらまた店に出てくるから、その時に…」

「っ!? 嘘だ!! 相手はマスクドナイトだぞ、病気なんかになるかよ…」

「僕、魔法少女だって普通の人間と大して変わらないわ。 マスクドナイトさんもそれは同じで、病気にだってなるの。

 残念だけど千春さんは此処には居ないの、また今度店に来てくれない?」


 千春の不在を伝えられた少年は、分かりやすくショックを受けた顔をしていた。

 そして少年はマスクドナイトが風邪をひく筈ないと言い張って、友香の話を信じようとしない。

 自身も魔法少女である友香は、自分たちは風邪にだってなる普通の人間であると自覚していた。

 友香は少年を優しく話しかけて、千春の風邪が治ったころに店に来るように諭す。


「嫌だ、オレはマスクドナイトに会うんだ! マスクドナイトを此処に呼べ、さもないと…」

「っ!? クリスタル!? それにその構えは…」


 あくまでマスクドナイトに会う事に固執する少年は、いきなり左右の腰に手を当てたでは無いか。

 すると少年の腹部が光を放ち、次の瞬間には見覚えのある六角形の石が埋め込まれたベルトが展開する。

 そして少年は二本指を立てた右腕を構えたでは無いか、そのベルトやモーションに見覚えのあった友香は驚愕の声をあげる。

 少年がやっているその動作は、マスクドナイトNIOHの変身ポーズと完全に同じだったのだ。


「…オレは今日マスクドナイトに会うんだ! …変身っ!!」

「この子、魔法少女の力を…。 まさか千春さんと同じ…!?」


 少年は魔法の杖に見立てた二本指をゆっくりと一周させて、気合の声と共に正面へと振り下ろす。

 すると少年の体が全身に包まれて、次の瞬間にそこには鎧を纏った戦士の姿があった。


「オレの名前はあきら、"マスクドナイトNEXT"だ!!」


 NIOHはネタ元である仁王像をイメージした中華風であるが、NEXTを名乗る少年は日本の武将鎧を参考にしているらしい。

 マスクド系ヒーロー共通のボディースーツの上に、戦国武将のような鎧と頭部に羽飾りのある兜風のマスクを付けていた。

 千春と同じ魔法少女の力を宿す男性変身者の来店、どうやら本日の喫茶店メモリーは千客万来らしい。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ