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俺はマスクドナイト  作者: yamaki
第一部 魔法少女専門動画サイト"マジマジ"
14/384

4-4.



 体の何処かに黒色のクリスタルがあること、人間との戦闘が成り立つ程度のサイズであること。

 これまでに報告されてきたモルドンたちの共通項は、精々これくらいしか上げられない。

 モルドンの姿は多種多様に存在することが分かっており、変わり種のモルドンが現れたら"マジマジ"で祭りが起きることもあるくらいだ。

 千春が前々回に戦った八本脚の虫型モルドン、前回に戦ったの四つ足の獣型モルドン。

 仮にそれらのモルドンを並べて見ても、カラーリング以外はとても同種とは思えない造形の差だろう。

 そして今回千春が挑むモルドンもまた、どちらとも異なる二足歩行のモルドンであった。


「■■■■■■っ!!」

「はっ、力比べなら負けないぜ!!」


 飲食店の駐車場に置いてあった車を破壊してたモルドンは、千春の存在に気付いてその太い両腕を威嚇するように降り回す。

 太くて長い手足に猫背気味に丸まった背中、その姿形から相手は猿型もしくはゴリラ型のモルドンとでも言うべきか。

 核となる黒いクリスタルは人間で言う所の心臓付近にあり、まるで鼓動しているかのように怪しく光っていた。

 マスクドナイトNIOHの姿になった千春に向かって、モルドンは掛かって来いとばかりの姿勢だ。

 それを受けた千春はモルドンの挑発に乗り、拳を振りかぶりながら正面からぶつかっていく。


「うぉぉぉっ!!」

「■■■■■!!」


 モルドンの太い腕と、千春ことマスクドナイトNIOHの腕が交差する。

 頭から防御を無視して、攻撃のみに意識を割いた脳筋思考のファーストコンタクトだ。

 モルドンの拳が千春の胸に、千春の拳がモルドンの顔面にほぼ同時に命中した。


「■■っ!?」

「はっ、その程度か! どんどん行くぜ!!」


 仲良く同時に攻撃をヒットさせた両者であるが、その結果は明白だった。

 モルドンの方は体を仰け反らせて数歩後退してしまったが、千春の方はその場から微動だにしない。

 どうやら本人の言葉通り、単純な力比べなら千春の方に軍配が上がるようだ。

 それを見て気をよくした千春は、ノリノリでモルドンに向かって連続で拳を振るっていく。


「■、■■■!」

「どうした、これで終わりか!!」


 モルドンの方も負けじと太い腕を振り回すのだが、残念ながら千春の勢いを止めることが出来ない。

 千春の自慢の鎧がモルドンの攻撃を全て弾いてしまい、殆どダメージを与えられていないのである。

 そしてその間にも千春のパンチやキックがモルドンに届いており、頑丈な鎧を持たない剥き身のモルドンはそれを受けるたびにダメージを負ってしまう。

 辛うじて胸のクリスタルは守っているようだが、このままでは一方的にやられてしまうことは間違い無かった。






 AHの型の自慢はそのパワーである、その圧倒的な力を前にモルドンは敗北寸前である。

 しかしモルドン側としてはこのままやられる訳にはいかず、どうにかしてこの状況を回避する必要があった。


「…うわっ!?」

「…■■■■っ!!」


 どうやら相手のモルドンは、密かにタイミングを図っていたのだろう。

 前のめりとなっていた千春に対して、モルドンはバックステップをすることでその圧力をすかすことに成功する。

 勢いよく振った拳が空振ってしまい、あやうく転びそうになった千春はどうにかバランスを保とうとする。

 その隙を付いたモルドンは、すかさず次の行動に移っていた。


「なっ…、くそっ、このくらいで…」

「■■■■■っ、■■!!」

「お兄さん、危ない!!」

「はぁ!?」


 駐車場で戦っていた千春たちの周りには数台の車が残っていたのだが、なんとモルドンがその内の一台を持ち上げたのである。

 千春に負けているがモルドンの膂力も人外のそれであり、車一台持ち上げるくらいは容易いことだ。

 そしてモルドンはその車をそのまま、バランスを取り戻した直後で千春に向かって放ったのである。

 離れた所で千春たちの戦いを撮影していた天羽の警告によって、自分に迫る危機を知った千春は仮面の下で顔色を変えた。






 バランスを取り戻した直後ですぐには動けない千春は、迫る車両を前に防御姿勢を取るくらいしか出来ないでいた。

 幾ら千春が頑丈な鎧に守られているとはいえ、巨大な質量を叩きつけられたらそれなりにダメージを受けるに違いない。

 数秒後に来る衝撃を予期した千春であるが、結果的に彼の予想は外れることになった。


「□□□□□!!」

「おお、シロ、助かったぞ!!!!」

「■■■■っ!?」


 仮にこの場に居たのが千春たちだけならモルドンの勝利があり得たかもしれないが、残念ながら此処には正体不明の魔法少女の使い魔も居るのだ。

 それまで戦いを見守っていたシロは、落ちてくる車から千春を守るために動いたのだ。

 シロの力によってバイクの両脇に生えた翼、それを器用に動かして千春を死地から拾い上げたのである。

 そのまま千春の体をの自分の体となっているバイクシートに座らせて、千春を鼓舞するかのように. エキゾーストノートをかき鳴らす。


「よーし、シロ! あの往生際の悪いモルドンに、止めを刺してやれ!!」

「□□□、□□□□□□っ!!」

「■■■っ!?」


 シロに助けられた事で勢いを取り戻した千春は、狼狽している様子のモルドンに向かってアクセルを回す。

 地に足のついた二足歩行の猿型モルドンでは、空飛ぶモンスターマシンとなっているシロから逃げられる筈もない。

 哀れにもモルドンは次の瞬間、急加速したシロの車体に正面からぶつかってしまう。

 それまでの千春との攻防でダメージを負っていたモルドンには、その一撃が止めとなったのだろう。

 シロと千春のひき逃げアタックのダメージがクリスタルへと達したモルドンは、駐車場の中で消滅してしまった。


「よっしゃぁぁ、大勝利だぞ。 初めてのお散歩は大成功だな、シロ!!」

「□□□! □□!!」

「…嘘、もう終わっているじゃない! こら、千春! ちゃんと私たちを待ってなさいよね」

「ふっ、マシンと一体になって戦うか。 分かっているじゃないか、千春くん」


 そして丁度モルドンとの戦いが終わったタイミングで、遅まきながら朱美を乗せた店長の車が到着する。

 駐車場に到着した朱美が目にしたのは既に体の殆どが消えているモルドンの残骸であり、既に戦いが終わったことは明白である。

 除け者にされたことを憤る朱美、その横でシロと共に喜びを露にする千春の姿に満足げに頷ずく寺下であった。











 千春がシロと出会ってから数日後、当然のように"マジマジ"のマスクドナイトNIOHチャンネルに新しい動画が投稿された。

 顔のないぬいぐるみもどきがじゃれつく姿、それがバイクに乗り移って空を駆け回る姿、マスクドナイトNIOHと共闘する姿。

 マスクドナイトNIOHチャンネルのニューフェイス、シロの存在が初めてマジマジに登場したのである。


「"空を飛ぶのって初めてでしたけど、凄く怖かったですよー! ほら、その時に取った映像がこれです。 いい景色でしょう?"

 "シロちゃんは可愛いだけじゃなくて、こんなんにも…"」


 苦労して撮影した先の空中散歩の映像も公開して、天羽は空の旅の恐怖を楽し気に語り出す。

 手振れが激しい映像であるが、上空から見る夜の街の姿は中々の絵になっていた。

 "初めてのお散歩をしてみた"と言うタイトルで公開された動画は、またしても"マジマジ"に衝撃を与えるのだった。


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