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俺はマスクドナイト  作者: yamaki
第二部 VS魔法少女
110/384

7-2.


 結論から言えばNIOHチャンネルに舞い込んだ新たな依頼は、渡りのモルドンは全く関係ない物であった。

 依頼の内容も緊急性の高い物では無く、正直言って千春がこれを受ける理由は殆ど無いだろう。

 よくよく思い出してみれば香が依頼の話を出した時、何故か微妙な表情を浮かべながら言葉を濁していた。

 今になって思えば香の反応も理解できる、現在進行形で依頼の中身を読んでいる自分も同じような微妙な顔をしているに違いない。

 この依頼…、マスクドナイトNIOHこと千春へ叩きつけられた挑戦状を読めば誰でも同じ反応をすることだろう。


「…何だよこれ? マスクドナイトNIOHへの挑戦状、つまりは俺と戦いたいって事か?」

「はい。 送り主は前にお兄さんと共闘した、あのマジカルレッドって名前の魔法少女ですね」


 かつて千春が渡りのモルドンと決戦時、なし崩し的に戦いに巻き込まれた地元の魔法少女が居た。

 マジカルレッド、その名前で魔法少女として活動する少女の本名は花音(かのん)と言う。

 バイザーで顔の上半分を隠す赤いヘルメット、体付きが見える程にフィットした赤いボディースーツ。

 千春のマスクドナイトNIOHと似た雰囲気を持つ、特撮畑の能力を持った珍しい魔法少女である。

 NIOHチャンネルを通して千春にこの依頼を出したのは、かつて共闘した戦友ともいえる少女であるらしい。


「あー、渡りのモルドンとの戦いに巻き込まれた子ね…。 どうしてその子が、あんたに挑戦状なんて出したの」

「マスクドナイトNIOHはヒーローとして相応しくない。 私が本当のヒーローがどのような物か証明してやるってさ…。

 一体どういうことだ? 確かに俺は彼女に恨まれているようだけど、何で今更こんなものを…」


 確かに花音とは渡りのモルドンの情報を事前に伝えなかった事を恨まれており、現時点であまり良好な関係とは言えない。

 そのために千春は魔法学部の実験へ花音を誘うことが出来ず、代役の魔法少女を立てる必要があったくらいだ。

 しかし渡りとの戦いの直後ならまだしも、何故今になったあの少女は自分に対して挑戦などをしてきたのだろうか。


「その辺の事情はマジカルレッドの弟さんから聞きました。 お兄さんも知っているでしょう、渡りのモルドンとの戦いを撮影していた子です」

「ああ、確か双子の弟だよな。 覚えてるよ、俺たちの戦いを生中継してた子だろう…」


 香の話を聞いた千春は、渡りのモルドンの戦いの場に居た一人の少年の姿を思い出す。

 マジカルレッドの撮影担当として来ていた花音の双子の弟である楽人(がくと)は、千春たちの戦いを後方で撮影していた。

 まさか花音たちがマジマジでリアルタイムの実況配信をしているとは思わず、千春が知らない間に渡りとの戦闘記録はネットにあげられてしまったのだ。


「実はこの依頼が来た後で弟さんの方からも連絡が来たのですが…、どうもマジカルレッドさんは例の実験に誘われなかった事を拗ねているそうです」

「はぁっ!? 何だよそれ…」


 どうやら香は楽人からこの挑戦状の裏事情を聞いたらしく、千春たちにそれを打ち明けてくれた。

 そして香から飛び出てきた話は、千春に取っては完全に予想外の内容であった。

 千春としては気を利かせてマジカルレッドこと花音を例の実験に呼ばなかったのだが、逆にそれが少女の怒りに触れたと言うのだ。

 驚きを隠せない千春に対して、香は楽人から伝えられた話をそのまま喋り始めた。






 マジカルレッドこと花音の双子の弟である楽人が言うには、彼の姉は意地っ張りな性分らしい。

 口ではマスクドナイトNIOHのことを悪く言うが、内心ではその存在に少なからず憧れのような感情を抱いていたと思われる。

 そもそも明らかに戦隊ヒーロー物を意識した姿であるマジカルレッドが、同類と言うべきマスクドナイトNIOHに興味を惹かれない訳が無いのだ。

 楽人の話によると姉の花音は、口では文句を言いながらも夢中になってマスクドナイトNIOHの動画を見ていたとの事だ。


「ああ、駄目ね…。 ヒーローならもっとうまく立ち回って…。 私が一緒に戦っていれば…」

「お姉ちゃん、そんなにNIOHさんのことが好きなら、今度コラボでも提案してみる? お姉ちゃんとNIOHさんならきっと…」

「だ、駄目! 何で私からあんな奴を誘う必要があるのよ!?

 まあ、あっちの方からこのマジカルレッドに対して、ヒーローとは何たるか教えの乞うなら考えなくもないけど…」

「お姉ちゃん、現実を見ようよ。 チャンネルの登録者数で言っても、NIOHさんたちは僕たちのチャンネルをとっくに抜いてるんだよ。 どちらかと言うと僕たちが教えを乞う立場…」

「う、五月蠅い! 私の方が魔法少女としても、ヒーローとしても先輩なのよ! 後輩が先輩に教えを乞うなら、当然の理屈なの!!」


 特撮作品において、異なる作品のヒーローが共闘するクロスオーバー展開はそれ程珍しくは無い。

 どうやら楽人の話によると、彼の姉はマジカルレッドとマスクドナイトNIOHの共闘を望んでいた節があったそうだ。

 しかし素直になれない花音はあくまで自分が上の立場として、千春に対して自分から近づこうとすることは無かった。

 そして花音の複雑な思いなど知る由も無い千春から見れば、マジカルレッドは自分から距離を追いていると考えても仕方ないだろう。


「…何よこれ、何でこの女がマスクドナイトNIOHと一緒に戦ってるのよ! 渡りのモルドンと戦ったのは私なのに!!」

「お姉ちゃん…」


 密かにマスクドナイトNIOHとの共闘を夢見ていた花音にとって、その光景は悪夢であっただろう。

 先日にマジマジのNIOHチャンネルに投稿された模擬戦闘実験、その戦いで千春と肩を並べる魔法少女が自分では無かったからだ。

 渡りのモルドンとの戦闘を再現したいならば、実験に呼ばれるのは実際に渡りとの戦いの場に居たマジカルレッドが呼ばれるのが筋だろう。

 しかしマスクドナイトNIOHは自分に声を掛けずに、わざわざ他の魔法少女を呼び寄せたと言う。

 その事実を突きつけられた花音は、弟である楽人が一度も見たことが無いほどに狼狽したらしい。

 花音の絶望の感情はやがて怒りに代わり、少女はマスクドナイトNIOHへの挑戦状を叩きつけたのだ。











 楽人から齎された情報によって、マジカルレッドこと花音の目的は理解できた。

 はっきり言って逆恨み以外の何物でもなく、朱美などは無視すればいいと助言もしてくれた。

 しかしこの話を聞いた千春は、花音に声を掛けなかったと言う負い目も少なからず感じてしまったのだ。

 香を通して弟の楽人からも出来れば姉の相手をして欲しいとお願いをされてしまい、無下には断れない状況になってしまう。

 はっきり言って気乗りはしなかったが、最終的に千春はこの挑戦を受けることに決めた。


「はっはっはっは…、よく来たわねぇぇ!! マスクドナイトNIOH、今日があなたの最後の日よ!!」

「はーい、今日は噂の魔法学部に来てまーす! みんなー、アヤリンは精一杯頑張るからねー!!ね」

「ふっふっふ、先輩の恨みを今日こそ晴らしてやります!!」

「はぁ…、何だかな…」


 スケジュールの設定やら何やら日が過ぎてしまい、殆どの学生たちが冬期休暇に突入したある日の事。

 甘んじて挑戦とやらを受けた千春は、見るからにやる気満々の様子である三人の魔法少女と対面していた。

 楽人の話によると彼女たちは、花音が対マスクドナイトNIOHのために集めた戦力であるらしい。

 こうしてマジカルレッドこと花音が結成した、マスクドナイトNIOH包囲網との決戦が始まろうとしていた。




更新が遅くなってしまい、すいません。多分暫くの間は投稿ペースが落ちてしまい、数日に一回の投稿になりそうです。


では。

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