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俺はマスクドナイト  作者: yamaki
第二部 VS魔法少女
102/384

6-11.


 ゲームマスターの手によって投稿されるようになった、マスクドナイトNIOHの対魔法少女戦の動画は一つの転機だった。

 魔法少女とモルドンの戦いとは一線を画す、魔法少女級の戦力を持つ者同士の真剣勝負は人々の注目を集めた。

 この動画の存在の登場によって、マスクドナイトNIOHの存在はますます世間に認知されたと言っていいだろう。


「…知ってますか、お兄さん? 今日学校でお兄さんの話題が出たんですが、これまで魔法少女やマジマジに興味の無かった子まで、マスクドナイトNIOHの事を知ってたんですよ。

 本当ならここでどーんと、NIOHチャンネルで新作動画をあげたいんだけどなー」


 天羽は学校での何気ない会話から、マスクドナイトNIOHの知名度が高まっていることを実感していた。

 少なくとも天羽と同じ中学生くらいの年代ならば、殆どの者がマスクドナイトNIOHの名前くらいは知っているだろう。

 しかしその代償として魔法少女絡みの事件で忙しくなった千春は、天羽との動画作りの時間を取れなくなってしまっている。

 今日も千春は何処か遠くの街へと遠征しており、天羽はディスプレイ画面の中のマスクドナイトNIOHに向かって話しかけていた。


「この調子でいけば、マスクドナイトNIOHは国民的ヒーローになるかもね。 そうなればNIOHチャンネルも、マジマジで頂点を狙えるかも…。

 お兄さんも偉くなったわね、これも全部私のお陰ね。 ふふふ…」


 NIOHチャンネルのことを第一に考えるならば、天羽は動画作りを疎かにしている千春に文句を言うべきだろう。

 しかし天羽は愚痴の一つ二つくらいは言ったかもしれないが、千春がNIOHチャンネルの活動を手伝わないことを半ば黙認していた。

 天羽が不義理な千春の現状を寛容にも許している理由は、二つほど並べる事が出来る。

 一つは今の千春の活動が結果的にマスクドナイトNIOHの売り込みとなり、NIOHチャンネルを訪れる視聴者数増加に繋がっていること言う実利的な話だ。

 一つは沢山の人たちがマスクドナイトNIOHと言う名のヒーローを知ってくれた事実を、天羽は純粋に喜んでいるのだ。

 天羽は自らが立ち上げたNIOHチャンネルの力で、推しであるヒーローの地位を此処まで押し上げられたことを誇らしく思っていた。










 最初の攻防を終えて、実験場で睨み合っている千春と3号。

 互いに互いの動きを警戒しながら、次の挙動を掴もうと相手の様子を観察していた。

 しかし3号の頭上から襲来してきた二体の使い魔によって、この硬直状態は脆くも崩れ去る。


「○○っ!!」

「□□□□っ!!」

「■■■っ!?」


 頭上に張られていた障壁は既に消えており、シロたちは丸裸となった3号の上空から急降下してきた。

 互いにぶつからないように3号の右方と左方から、シロとリューが凄まじい勢いで斜め降りしてくる。

 シロは機械翼を刃のように伸ばして、リューはその足爪で立てて相手を切り裂こうと試みた。

 しかし使い魔たちの動きに気付いた3号は俊敏な動きでその場を離れて、使い魔たちの攻撃はあえなく空を切ってしまう。

 シロとリューは地上すれすれで交差して、再び上空へと上がっていた。


「シロ! リュー!!」

「私も突っ込みます。 千春さんは援護を…」

「嫌、俺も行く! 乱戦に持ち込むぞ」


 再び空から地上の3号を狙おうとしている使い魔たちを前に、突っ立っている訳にはいかない。

 佐奈は何時かの戦いのように千春の援護射撃を受けながら、自分が3号に接近しようと提案する。

 しかし千春は彩花が使う障壁を警戒して、一緒に突っ込むべきだと反論した。

 ちなみに千春は尤もらしい言葉で誤魔化しているが、これがヴァジュラを使えない現状を隠すための言い訳であることは言う間でも無い。


「…分かりました! 行きますよ!!」

「ははは、相変わらず格好いいな、流石はリアル"ムーン"様だ!!」

「もう、からかわないで下さい!!」


 素直な佐奈は千春の思惑など気付く様子も無く、その言葉に一理あると思ったのか素直に応じた。

 NASAこと佐奈の魔法少女としての能力は、とある海外ヒーローに出てきたキャラクターが元ネタである。

 映画の中のヒーローと同じくふわりと空に浮かび、見えない足場を駆ける様は中々絵になる光景だ。

 佐奈は華麗に空中を闊歩しながら、地上を走る千春の後に続いた。






 上空から千春たちの動きをみたことで、使い魔たちはその意図を察したのだろう。

 シロとリューは千春たちとタイミングが合う様に、再び上空からの急降下攻撃を敢行する。

 3号から見て正面には走ってくる千春と、千春の頭上数メートルの空を駆ける佐奈の姿があった。

 そして逃げ道のふさぐように後方からは、シロとリューが別々の方向から自分に向かって急降下してくる。

 四方から同時攻撃、数の利を活かした千春たちの手から逃れるのは不可能だろう。


「どうする、渡りのモルドンはこれを防いだぞ!!」

「■■■…」


 千春たちは渡りの蜥蜴型モルドンとの戦いにおいて、今のような人数差を活かした同時攻撃を仕掛けた。

 その結果は障壁の同時展開という反則技で、千春たちの攻撃は全てシャットダウンされるという苦い結果ではあった。

 蜥蜴型モルドンは複数の障壁を同時に展開できるため、例え数を集めてその全てを防がれてしまう。

 それに対してこの3号を支援する彩花の展開した障壁は、頭上をカバーするための一枚しか展開されなかった。

 あの時は一枚で十分だっただけかもしれないが、仮に彩花による障壁の最大展開数があれだけであればこの同時攻撃は防ぎきれない。

 千春たちのタイミングを合わせた同時攻撃が、3号の元へと届こうとしていた。


「ふん…、そんな囲いなんて食い破ればいいだけの話っす!! Charge(突撃)!!」

「…んなっ!?」

「千春さん!?」


 どうやら彩花の展開できる障壁は一枚だけらしく、この状況で彼女が取った手札は別の物だった。

 彩花からの新たな支援を受けた3号の体は一瞬強く輝きを見せて、次の瞬間に千春の体は衝撃と共に吹き飛ばされていた。

 まるで交通事故にでもあったかのように、千春の体は暫く地上から離れたままであった。

 やがて衝突の勢いが弱まったことで重力に抗えなくなり、千春の体は地面へと落下してしまう。











 千春たちの四方からの同時攻撃を防ぐため、3号の取った選択はこの包囲を突破することだった。

 突撃という名前に相応しい効果によって、3号のパワーやスピードは一瞬であるが数倍に高められる。

 その恩恵を最大限に活用して行われた体当たりは、千春の体を簡単に弾き飛ばしてしまう。


「千春さん、大丈夫です!!」

「…あぁぁ、くそっ! ただの強化じゃない、瞬間的に馬力を高める技か…」


 不幸中の幸いだったことは、3号が包囲を突破するために選んだ相手が千春であったことだろう。

 空中から向かってくる他の相手では折角の一撃が外れる可能性があり、確実命中するであろう千春を狙ってくれたのだ。

 マスクドナイトNIOHのAHの型となっている千春は、全身を強固な鎧で守られている。

 確かに意識を失いかける程の凄まじい一撃であったが、これだけでノックアウトされるほど今の千春は軟ではない。

 逆を言えば千春程の防御力が無い他の面子であれば、今の一撃だけで戦闘不能となっていたに違いない。


「えぇぇ…、何でやられて無いっすか…」

「悪いが頑丈さは取り柄でね!! あんな体当たり一つでギブアップするかよ…」


 千春が吹き飛ばされた先が丁度、彩花たちが居る観客席の近くであったらしい。

 簡易的な防護柵を通して訓練場を見ていた彩花と、地面から起き上がった千春の視線がぶつかり合う。

 会話が出来る程の距離だったので、千春はこちらの頑丈さに呆れている様子の彩花に強がりを言う。

 正直言えば全身が痛みだしているのだが、まだ体は言う事を聞くので戦えないことは無いだろう。

 千春は彩花との会話をしながらも、追撃を警戒して3号の様子を伺っていた。


「■■■、■■…」

「なんだ、あいつ…。 何もしないでよろけた…。 もしかしてあの強化は…」

「ちぃ、やっぱりコンボは負担が大きいっすね。 ……あ、すいません、今のなしで!!」」

「いや、無理だって…」


 しかし千春が見た物は、予想外の光景であった。

 これまで殆どダメージを与えていない筈の3号が、どういう訳か一瞬だけ崩れ落ちたのだ。

 すぐさま起き上がるが、その巨体を支える四本の脚は若干震えているようも見える。

 その姿を見た千春の脳裏にある仮説が立てられて、それを証明するかのように彩花から失言が飛び出てしまう。

 千春の視線に気が付いた彩花が遅まきながら自分の失態に気付くが、残念ながら手遅れであった。


大抵は土日でストック作って、平日はそれを食いつぶしながら更新を維持しているのですが、どうしても木曜日があたりで息切れするんですよね…。


という訳で日を跨ぎましたが更新です。もしかしたら金曜分の更新って扱いにして、続きは土曜になるかもしれませんが…。


では。

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