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ウタ姫になりました。

読みやすさ重視…w

突然ですが、どうやら私…

異世界ってやつに転生されたようです。


毎日仕事がハードで忙しく一週間を終えて金曜日の夜

フラフラしながら終電に乗って一人暮らしの家にたどり着き、倒れるように寝た所までは覚えている。

それから目を覚ましたら私のオアシス(または一人暮らしの部屋ともいう)ではなかった。

慌てて起き上がり周りを確認するとヨーロッパ調の古い家具が置いてある部屋。

部屋の片隅にあった鏡を覗き込むとなんと仕事に疲れたおばさん顔ではなく、若い女の子がうつってました。

どうやら私はこの若い女の子になっているようで

不思議な事に、現実と異世界、両方の記憶がちゃんと残っていて、異世界の私は16歳、かなり弱小の国のお姫さまらしい。

泣いても喚いても、どうにかなるものではないので、私はすんなり諦めて、この世界で生きることにしました。

この世界の私の父は王様だけど、ほとんど城…じゃないな、ちょっと大きな屋敷にいない。

なぜかというと、国を支える林業の現場に向かい国民と力仕事をしているからだ。

なんともフレンドリーな王様である。

王妃の母だって国民の事を一番に考え、自ら学校を運営して、子供たちに学問を教えていたりと、こんなひとが良い両親は当たり前のように国民に愛されていた。

なんと素晴らしい。

貧乏だけど…

そんなふたりの子供の私も普通のお姫様に育つわけもなく…


「セィヤー!!」


転生して3年が経った今でも木刀を振り回し、自分よりも大きなカラダの騎士たちと武道の稽古に励んでいた。


「ウタさま…女の子ですから、もっと違う事を」


私の側近、エドが困った顔をして私に汗をふくようタオルを渡してくれた。

エドは2年前に父が連れてきた優秀な側近である。

容姿は金色の美しい長い髪をひとつに束ね、年はたしか25歳、とても美男子で頭もきれる。

なんで、こんな優秀な彼がうちに来たか疑問である。

タオルを受け取り汗を拭きながら私は口を尖らせた。


「だって、うちの騎士たち軟弱過ぎない?!隣国に行った時、最低限、父を護衛できるぐらいになってもらわないと! 」


先日、隣国に父が商談に行った時、盗賊に襲われ危機的状況になった。

そのとき、護衛騎士たちは何も出来ずあたふたするだけで、たまたま同伴していた私とエドが盗賊たちを撃退したのだ。


「そこの心配よりも、ご自身の心配をしてください。活け花や、刺繍などもっと女性らしい事をやっていただかないと良い縁談がありませんよ」

「それは、アルクに任せる」


弟のアルクは3つ下で、シスコンではないが、とても愛らしいルックスと性格で誰からも愛されている。

しかも、音楽の才能がありバイオリンの演奏を定期的に国民に披露するソロコンサートを開催しており、その評判を聞いた他国からも招待を受けるほどの腕前で16歳にして、我が国の立派な稼ぎ手となっている。


「いやいや、そこ任せちゃダメでしょ…」


エドのツッコミを受けていると、見慣れない他国の騎士が戸惑いながら屋敷の庭にやって来た。


「なにようだ」


エドに声をかけられ驚いた様子で慌てて駆け寄ってきた。

それからエドと二言三言会話をして、手紙を渡して去っていった。

戻ってきたエドに私は問いかけた。


「なんて?」

「…」

「おーい?」

「聞こえてますよ。王に報告に行って参ります。ウタさまはこちらでお待ち下さい」

「…私もついて行くわよ」


あからさまに私に内容を隠そうとしているエドの態度はみえみえだ。

エドは小さくため息をついて「どうぞ」と言って、私達は父が今日働いている山に向かった。

国は狭く、国土の4分の3が山である。

山の木を加工して他国に売ってなんとか財政を回しているのだ。

なかなか、質が良いと評判は良いらしい。

今日は苗植えを行うと言ってたので、その場所まで馬で向かうと作業着で泥まみれになってスコップを持っている父が10名ぐらいの国民と苗を植えていた。


「王!急ぎでお知らせしたいことが!」


少し距離があるのでエドが大きな声を出すと父は手を振って答えた。


「サジイ!!いま、手が離せないから代わりに聞いてくれー」


サジイとは父の側近である。

もう80歳近いのではないだろうか、苗植えの山には入らず、休憩場所で準備をしていた。


「わかりましたぁーエドや、何事じゃ?」

「これを…」


エドがサジイに手紙を渡すとサジイは目を見開き小さく震えだした。

ど、どんな凄いことが書いてあるのだろう…

私は内容が見たくてウズウズしていた。


「王!!!とうとう、ウタさまに縁談がぁぁぁ!!!」

「なにぃ!!??」


デカい声が山に響く。

私の縁談?!

私はもう我慢出来ずサジイから手紙を奪い取り中身を読んだ。

誰?どこの誰から誘いが?

夜会でナンパしてきたあのちゃらい商族かも?

色々巡らせると、一番最初に目に入ったのは、隣国の王族印だった。

…ん?

内容をまじまじ読むと、どうやら隣の大きな、それはもーーー大きな国の第一王子の花嫁候補にあがっているらしい。

そのため、来月候補者が集まる会に来いというものだった。

私がビミョーな顔をしているとエドが私から手紙を取り上げた。


「ひやかしですよ。噂では周辺の国々の年頃な姫全員に送っているらしいです。まさか、うちまで来るとは思っていませんでしたが」

「…あっそ」


そうこうしていると父が山から降りてきて、汚れた手をタオルで軽くふくと手紙に目を通した。


「ふむ…誘いが来たからには無視は出来まい」

「体調がすぐれないなど理由をつけて断る事は可能です」


父の言葉にエドはすかさず返した。

どうも、私を行かせたくないようだ。

まあ、国の恥にならないようにしたいのだろう。


「これは、チャンスですぞ!ウタさまがもしや大国の王妃に成やも知れぬ!」


エドとは正反対にサジイはテンションが上がってウキウキしている。

父は私を見て、手紙と招待状を渡した。


「わたしは良い経験になると思うが、行くか行かないかはウタが決めなさい」


ひやかしの花嫁候補集めかー女のドロドロとした修羅場だらけって感じで正直行きたくないけど、小国としては顔を出さないのも失礼にあたる。

まあ、そもそも、私が選ばれるわけないし、顔だけ出してお断りされるぐらいが丁度いいだろう。


「行ってきます。そして、盛大にお断りされてきます」

「ははは、ウタらしいな」


笑っている父とサジイとは正反対にエドは一気に眉間にシワがよっていた。


大国王子の花嫁候補が集まる会の場所まで、なんと一週間の旅だ。

一人だけ世話係を連れて行ってもいいとの事で、私はお手伝いさんのネルおばさんにお願いしようとしたが、なんと当日体調が悪くなり、急遽エドがついて行くことになった。

馬車に必要最低限の荷物を積み込み、エドと旅をすること3日

その間、いつもに増してエドの機嫌が悪い。


「…エド、いい加減機嫌なおしたら?嫌ならついてこなくてもいいのに」


正直、世話係がいなくても私一人でなんでもできる。


「別に機嫌悪くないです。ただ、浅はかなウタさまの考えにあきれているだけです」

「ほう、どの辺りが浅はかかな?」


どうやらエドは軽く私を挑発したいようだ。

私は不適な笑みを浮かべていると、エドはなにもわかってないとばかりに首を横にふった。


「花嫁候補という立場で出向くという事は、気に入ってもらえたら花嫁になるという事です。何かされたらどうしますか?いや、それよりも何かされそうになってウタさまが反撃したら…うちの国は攻め落とされますよ。」

「いやーエドは私が王子に気に入ってもらえると思ってるの?まあ確かに私は魅力的な女性ではあるけど」

「まったく、そんな事ないです」

「ぐ…」

「とにかく第一王子との接触は出来るだけさけて、とっとと縁談を断っていただき早く帰りましょう」


なんだか、いつものエドと様子がちがうと薄々思っていた。

大国領地に入りあと1日で王都にたどり着けるところまで来た道中、山道の前方に止まっている馬車がいた。

それがみえると馬扱者が遠目で馬車を停めた。


「エドさん、マズイな…ありゃ山賊に襲われてる。近付かない方がいい」

「…そうか、一旦もどって別のルートを」


馬扱者とエドの会話に私は割って入った。


「ちょっと!まだ助けられる人がいるかもしれないのよ!近づいて」

「ウタさま。リスクは回避するべきです。山賊がまだいるかも知れません」

「襲われて大変な人がいるのは間違いないでしょ?救える人は助けたいの」


私とエドが睨み合っていると、悲鳴が前方の馬車の方から聞こえてきた。


「エド!!」


エドは顔をしかめて馬扱者に近付くように指示を出した。

そして、近付くと数人の山賊に対して、一人の騎士が応戦しており、その後ろには幼い女の子が怯えてしゃがみ込んでいる姿が見えた。


「ウタさまは絶対ここで待ってるように!」


そう叱りつけるように私に告げてエドが剣をもって加勢に向かった。

私は身をのりだし心配そうに眺めていると、女の子の背後から隠れて近付く山賊に気がついた。

騎士とエドは他の山賊たちとの戦闘で気がついてないので、私は馬車を停める時につかう棒を持って急いで女の子のもとに駆け出した。

女の子を捕まえようとしている山賊の背後に回り、私は棒をおもいっきり山賊の後頭部に叩きつけると、山賊は気絶をして倒れた。


「大丈夫?」

「ぅっ…う…」


怖くて泣いている女の子は顔をあげると、とても可愛らしく、ピンクのウェーブがかった髪に大きな瞳、まるでお人形さんのようだ。


「ウタ!!!」


私が女の子に見とれていると、残り一人となり発狂した賊が私たち目掛けて剣で切りかかってくる。

私はそのひと振りを棒で受け止めると、その賊は背後から血しぶきを巻き上げ崩れた。

そして、それは黒髪で黒く鋭い瞳の騎士がやったのだとすぐにわかった。

この騎士、たった一人で10人以上の山賊を相手していたのか。

なかなかの腕前だ。

転がっている山賊の亡骸を見て私は感心していた。


「ウタさま、大丈夫ですか」


エドも3人ぐらい倒し、私の元に近付くと黒髪の騎士は私の前に片膝をついて騎士の礼をした。


「わたくしは王族騎士のクロスと申します。こちら大国の第一王女エリ・スルバリア姫です。エリさまを助けて頂き、ありがとうございます」

「え、いや、そんな大したことは」

「どこかのご令嬢さまとお見受けしますが…」


私が答えようとしたとき、私とクロスの間にエドが入ってきた。


「シスギル国のウタ姫です。王都に向かう途中たまたま通りかかっただけですので、どうぞお気になさらず。」

「…王都に。図々しいお願いではございますが、馬車が壊されてしまい王都に戻る手段がございません。エリさまだけでもいっしょにお連れしては頂けないでしょうか」

「…わかりました」


エドは警戒をしているようで、表情は暗かったが私はあえてにこりと微笑みエリさまとクロスに話しかけた。


「エリさまだけでなく、クロスさまもどうぞ遠慮なく」


エリさまはクロスにしがみついて怯えている。

ここで引き離すのは可愛そうだと思ったのだ。

クロスは少し驚いた表情で私を見ると深々と頭を下げた。

それから馬車に乗って、急いで王都を目指した。

本当はもう一泊して行く予定だったが、エリさまがまた狙われる可能性があることと、少しでも早く安心出来るところに行かせてあげたかったからだ。

夜通し馬車を走らせ王都にたどり着き城に向かうと手厚い歓迎をうけ、王と王妃、それから第一王子ネシルから感謝をされた。


「エリの命の恩人だ。どうぞ、ゆっくりして下され。そうだ、城をネシルに案内させよう。」


ネシルはつまり、私の婚約者ということである。

エリさまと同じピンク色の短髪に整った顔立ち。

ニコニコとしている表情がどこか違和感を感じた。


「では、部屋と城内を案内しますね。こちらにどうぞ」


片手を差し伸べられ、エスコートされることになった私は苦笑い浮かべて素直に従った。

一通り案内され私の部屋に案内される。


「それでは、ゆっくりお過ごし下さい。わたしはこれで」

「はい。ありがとうございます」


エスコートされてた手が離されたので、私は頭を下げて感謝を言った。


「…あと、ひとつだけ。念のためですが、勘違いはしないで下さいね。わたしはエリを助けたお礼に案内したまで。決してウタさまを気に入ってるとか、そういうのではないので」

「はぁ…」


ニコニコしているが目が笑ってない。

そして、言ってることも遠回しに婚約者として眼中にないということだ。

私も決してネシルに気に入られる為に来ている訳ではないので、お互い意見が合いそうだ。

私は遠ざかって行くネシルを見送ると部屋に入った。

すると、城に着いたとたん姿をくらましていたエドが部屋でお茶を入れているではないか。


「エド!どこに消えてたの?」

「少しヤボ用がありまして」

「主を置いてヤボ用ね…まあ、別にいいけど」

「申し訳ございません」


全くもって心がこもってない謝罪を受けてもね。

とりあえず、明日の婚約者たちの顔合わせまで私はゆっくり過ごすことにした。


次の日、昼過ぎにネシルの婚約候補者が集められた。

その数なんと20人。

美人はあたり前、いかにも自信がありそうな女性たちが集まっている。

まるで、ミスコンだ。


「貴女、どちらのご令嬢?」


紫色のまきがみで、いかにも鼻で人を笑いそうな女性に話しかけられた。


「シスギル国の者ですが…」

「ああーあの小国ね。わたくしはジバン国のセシリアと申しますの。どうしても、この会に来てほしいと頼まれて来ましたのよ」


人を蔑む態度に少しイラッとしながらもジバン国はうちの取引相手でもあるから大人しくしたがっておこうと思った。

所々で私と似たようなやり取りがあり、定刻になるとネシルが現れた。

その側に護衛のためかクロスがネシルの少し後方で腕を組んで無表情でたっている。

昨日大変だったのに今日も仕事が…お疲れ様です。

そう思って眺めていると、クロスと一瞬目が合った。

黒く綺麗な瞳にみとれてしまい、まるで、時間が止まったように感じた。


「…」


すぐにお互い視線を戻すと、ネシルが話始めた。


「お集まり頂き、ありがとうございます。いま、お越し頂いております中から、わたくしは3人婚約者を選ばなくてはいけません。7日間と短い間ですが、より多くの貴女とコミュニケーションをとらせて頂き、決めたいと考えております。何卒、よろしくお願いいたします」


7日間…長い。

出来れば、明日にでも正式にお断り頂ければ喜んで帰るのに。

ネシルのスピーチが終わると何人かの女性はネシルに集まり、既に人だかりが出来ていた。

必要以上の接触をしてこないよう、クロスが護衛をしているようだ。

私は遠目で眺めているとネシルの進行方向にグレイのストレート髪でとても美しく知的な雰囲気の女性が立っていた。


「ごきげんよう。ネシルさま」

「セレナ、来てくれて嬉しいよ」

「ネシルさまの願いとあらば、断るわけございませんわ」

「ありがとう。」


ふたりは知り合いのようで、あまりにお似合いのふたりの空間に誰も入れない様子だった。

婚約者のひとりは彼女で決まりだろう。

それから、それぞれ個々に行動を取っても良いことになったが、平等性を保つため、お茶会のグループわけをされた。

決まった内容はそれぞれの使用人に渡され、私は明日の13時からのグループに入っていた。

部屋で待機していたエドはずっと不機嫌なままだ。


「このメンバーはどうやって決めたのでしょうね」

「さあ?どうして?」

「ウタさまとルルアさまは正直、このベネッサさまの引き立て役かと」


引き立て役?!


「ベネッサさまって?」

「国をまたいで大きな商売をしております貴族のご令嬢です。気が強く、美しく、頭がきれる優秀な方です」

「よ、よく知ってるわね」

「ウタさまが世間知らず過ぎですよ」

「ぐぐ」

「恐らくお金でも積んだのでしょうね」

「どうだろうね…」


正直興味はない。

そうこう適当に過ごしていると次の日になり、お茶会が開かれた。

指定の場所が準備され、使用人を連れて参加をする方式だ。


「…ねえ、エド。どうして眼鏡しているの?」


いつもは眼鏡をしていないエドがまるで変装をするためにだて眼鏡をかけていた。

どうもここ最近様子がおかしい。


「…たまには気分を変えたくなる時もあります」

「私は余計な詮索はしたくないけど、隠し事されるのはすきではないわ」

「…知ってますよ。近いうちに説明します」

「そう」


お茶会の席には既にルルアさまとベネッサさまが座っていた。

ルルアさまは私と同じ小さな国のお姫様でまあまあのルックスにまあまあの性格のようだ。

それに比べて、ベネッサさまは美しく磨きあげられた黒い真珠のような令嬢でとても自身に自信があるようだ。


「ごきげんよう。ウタさま。本日はよろしくお願いしますね」

「お願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いいたします」


軽く挨拶を交わすと定刻通り、ネシルがやって来た。

ネシルの護衛にやはりクロスが付き添っている。


「美しいお嬢様たち、お待たせしました。さあ、席に座って」


他愛のない話から始まり、ほぼベネッサさまとネシルの会話に私とルルアは相づちをうつだけだった。

はあ…早く終わらないかなー

そう思いながら視界に入るクロスを見るとクロスもお茶会が終わるのをじっと辛抱していた。

毎日ちゃんと鍛えているのだろう。

しっかりとした身体つきに護衛としての隙は一切見当たらなかった。

うちの護衛騎士たちを鍛え直してくれないかな。

ちょっと依頼してみようかな。


「ウタさま?」

「え?あ、はい」

「…そんなにクロスが気になるのですか?」


にこりと微笑みかけているネシルに私も微笑み返した。


「とても優秀な騎士をお持ちで羨ましく思います。うちの護衛騎士たちを鍛えて頂けないかしらと思って」

「クロスは騎士団の中で一番優秀な騎士です。彼に憧れる女性は多い。あ、でもわたしの次ですがね」


爽やかな笑顔で自慢をしているネシルにベネッサさまが同意をした。


「そうだ。うちの騎士団から必要な人数派遣しますので、その騎士たちをクビにしてはどうでしょう?」

「…」


親切で言っているのか、わからないがネシルの提案に私は気分を悪くした。

確かにうちの護衛騎士はポンコツだけど、それは環境が平和なだけでヤル気や国を大切に思う心がある彼らをクビにするつもりはない。

こうやって相手の心を乱して落ち度を探しているのかも知れない。

ここは、私は怒ってもいい所なのか。


「お言葉ですが「ウタさま」


私が反論しようとすると後ろに下がっていたエドに遮られた。

エドは私に近づき、わざと回りに聞こえる声で耳打ちをした。


「そろそろ約束の御時間でございます。」

「え?」


約束なんてしてないが…


「こんなところでムダ(・・)な時間をつかうのは勿体無いので」


なんとエドらしかぬ失礼な発言。

私が驚き目をぱちぱちさせていると、ネシルが椅子から立ち上がって目を見開いて固まっている。


「さあ、ウタさま行きましょう」

「え、ええ」

「ちょっと待て!」


今まで、ニコニコしていたネシルは信じられないといった顔をしてエドに詰め寄る。


「ネシルさま?ちょっと」


私は慌ててエドとネシルの間に入って背中でエドを庇った。


「エイド…お前なのか」

「エイド?」


私がエドを見るとエドはシラケた顔をして、小さくため息をつく。


「いいえ、わたしはウタさまの側近、エドでございます。さあ、ウタさま行きましょう」

「エイド…」


わたしとエドは放心状態のネシルと他のお嬢様たちを残して、その場を去った。

部屋に帰ると私は無言でエドをじっと見つめた。

エドはだて眼鏡を外してお茶を入れる準備を始めた。


「説明しますから、お掛けください」


私はエドに言われるとおり、ソファーに腰をかけると、優雅な所作で香りのいい紅茶が目の前のテーブルに準備された。


「王、ウタさまのお父様に拾われる前まではこちらで書官としてお世話になっておりました。」




最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

4話完結予定です( ´・∀・`)

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