6月10日日報、ギルドハウスに着いてその後
一日一回も更新できない、かといって二日に一度! とかいうとそれはずるずると三日四日とかになってしまうので一日一回更新しようという心構えでいる。
「マスター、ソウさんご結婚おめでとうございます!!」
ギルドに入れば大歓迎をされた、先に帰った皆で歓迎の準備をしていたらしい。
エントランスに大きなテーブルに沢山の料理が並べられている。レイドボスという立場上外では精々モンスターを生食していたからとても楽しみだ。
「ん~っみんなありがとー、愛してるよ!」
歓迎会の用意をしてくれたみんなを労って愛想を振りまくフレス、愛してると言うのは少し妬けるな……何だかんだ言って結婚したという事実が、こうして祝われて初めて実感してフレスに対して執着が出て来たか。
『ありがとう、いやこんなポッと出が君らの大事なマスターを取ったというのに祝われるとは思っていなくて……その少し驚いた』
「何を言ってるんですか、ソウさんはポッと出じゃないですよ。レイドボスとして全プレイヤーが知ってる、いわば有名人……有名犬じゃないですか」
有名犬……まあ現実でも多少知名度のある方だけど、こっちに長く入り浸ってるからそういう尊敬の眼差しみたいなのは久々だ、確かウルといったか彼は、実にいい子じゃないか。
「旦那様、みんな旦那様が仲間になって嬉しいんだよ? ずっと憧れてたから、レイドボスとして他のよりカッコいいって」
「嬉しいのは違いないけど、カッコいいからというよりフレスが欲しいってずっと言ってたからでしょ、やっと夢が叶ったんだって」
「えー、リュールちゃんだって竜騎士になりたいって、言ってるじゃん、レイドボスのスカイドラゴンみたいな龍に乗りたいって」
それであのバカでかい扉なのか?
スカイドラゴン、正式名称は違うがプレイヤー間ではそう呼ばれる俺と同じレイドボスにして、リアルでは俺の同期の上司として親交がある奴だ。
『なんだリュールは、アレがいいのか』
「べ、別にフレスみたいにテイムしたいなんて無理だし。乗れたらな、ってぐらいよ、私のは本当に夢物語でしかないんだから」
しかしアレで竜騎士か……あいつ西洋竜ではなくうねうねした東洋龍だぞ、それに乗って竜騎士は少しイメージが……いやそういえばリュールも侍風だし合わなくもないか?
『東洋風龍騎士、か』
「そうだよー、リュールちゃんスカイドラゴンさんに、合わせて東洋風の衣装にしてるんだよ!」
「ばっ、何言ってるのよこれは私の趣味……というか実家が剣術道場だからこっちがしっくりくるっていうか……」
「ええー、でも私がここのドアとかでっかくするって言った時に、もう少し大きくしようって言ったのリュールちゃんだし絶対にスカイドラゴンさんを意識してるよね?」
フレスとリュールの姦しいやりとり、終いには顔を赤らめるリュールを見ていると微笑ましくなり、力になってやりたいなと思った。
『ならば話をつけてやろうか? アレとは少し縁がある』
所謂年の離れたお友達、という奴だ、俺にとって兄貴分になるのかな。
「ほ、本当に!?」
『ああ、可能だ、一週間後に出社日でな、会社で恐らく会うだろうからその時にさりげなく口利きをしておく。男だから本当に契約するなら、あー……なんだ、リュールがもしよければだが……』
俺みたいに現実の結婚になるだろうが、構わないのか? という確認。
しかしその点よりも違うところが気になったらしく。
「出社日……? 会社で会う?」
「そういえば、旦那様は公務員って言ってたけど……」
どこまで話すか、仲間になったことだし、皆の人となりはなんとなく察したから、多少は喋ってもいいと思うが。
『ああ、俺はな……自宅警備員でな、在宅のVR警備を任務与えられている。スカイドラゴンら、他のレイドボスもほとんど同僚だ。中にはNPCのレイドボスも居るには居るが……』
それもごく僅かだがぼかして置かないと誰がプレイヤーか、バラしたら俺が吊し上げられる。
「自宅警備員! そ、それって≪十二星護将≫さまたちみたいな!?」
食いついて来たのはフレス、がっしりと顔を掴まれ顔を近づけてくる。
『近い近い……まあソレだ、ちなみに≪十二星護将≫だと誰が好きなんだ?』
参考までに。
「え、えっと……旦那様と結婚したから、1番好きなのは旦那様だけど……第七位の双二様っ!」
キャッ言っちゃったとか言っているが……それ俺じゃん。
ふーむしかしソレをばらしていいとはまだちょっとな、俺の立場上みだりに教えるわけにはいかないんだ。
『そうか、彼かっこいいもんな』
すまないな、と嘘をつくことを心の中で謝罪しつつ自分を持ち上げる発言をしておく。
実際、イケメン・エリート家系・地球防衛第七位とか十二の中でも女性に人気だと自負している。
龍のやつも人気だがあっちはちょっとオジサンに片足突っ込んでるから。
「そう! 凛々しく勇ましくて、強くてカッコいい! 旦那様みたいにモフモフだったら最高だったんだけど」
『モフモフだったら人間じゃないな……。それでリュール、どうする?』
「どう、とは?」
『龍と契約して龍騎士になるのか、どうか、その時は結婚になるが……』
「っ……実際に会って話をしてみたい、かな……私は流石にフレスみたく即決とはいかないかも」
確かに即決はしがたいだろう、俺も即決できなかったしな。
『分かったそれとなく聞いてみるよ』
「それじゃあ話もそこそこで、せっかくみんなが用意してくれたんだから冷めない内に食べよっか!」
全体的にレベルの高い料理が並んでいるが、よく見ればどことなく菓子の類が多いような。
ケーキ類なら冷えても良くないか?
『ケーキ類が多いな、パティシエでも居るのか?』
「そうだよー、ウル君はね……お菓子作りがとっても上手なんだ! 食べるのも好きらしくてね、色々研究してるんだよ!」
それにしたって犬用ケーキまで用意するか、普通……別にモンスターだし雑食だから犬用じゃなくてもいいんだが、それに犬用って味気ないし。
その後わいわいがやがやと騒いで、ちょいちょい末端メンバーなどの自己紹介などを聞いたりして親睦を深めつつ歓迎会はお開きとなった。
最後に、今回の歓迎会とは別に結婚式もやろうなんて話になっていたが、そういうのはよくわらかないので女性陣に一任することにした。
「こっちだよ、早く早く」
それで俺は今日からフレスの部屋で寝泊まりすることになるわけだが……。
『本当に一緒に寝るのか? 別に俺はどこでも寝れるぞ』
「駄目だよー私楽しみにしてたんだから、旦那様のモフモフに包まって寝るの」
『しかしなぁ、さっきも散々モフってただろ』
「それはそれ、これはこれ、それに外じゃ出来ないことするんだよ!」
なんだよ、何する気だ……。
恐る恐る中へ入れば、確かに俺でも寝れそうなやたらデカイ、ギガキングサイズみたいなベッドがあった。
フレスは支度があるとかで一度部屋の奥へと行き俺はそのまま寝るのでさっさとベッドに上がり体を横たえた。
「おまたせー」
フレスが来た、頭だけ起こして彼女を見……はい?
「さぁ一緒に寝ようか、旦那様……全身余すことなくそのモフモフに包んでね!」
『……服は?』
「モフを感じる肌面積を増やすために捨ててきたのさ」
『馬鹿なの?』
「元々あまり服を着ては寝ないから安心して」
フレスはその凹凸のあまりないスレンダーのボディを晒したまま、大胆にも俺の腹まで近づけば迷いなく腹部の毛皮に抱き着き毛に全身を包ませてそうそうに眠りについた。
『早い、おやすみすら言わないの?』
「うへへ、おやすみぃ……」
今のはスキル≪寝言≫ではないか、無駄スキル百選にも選ばれる特定の言葉に寝言で答えるという設定が出来るスキルだったはずだ。
「もうモフれないよぉ」
いやモフってるから。
『しょうがないやつだ……全く、おやすみなさい』
俺は視覚操作でメニューを開きそこからスリープモードを選択して眠りについた。
6月10日、本日の警備終了―――。
物語の都合上設定とか世界観は最初は出さない方針、二章的な部位でだそうかなと。
それとこういうのだとありがちなステータスも伏せる、もしくは本編に書かずどこかの段階であとがき部分に書きます。
本編の文字数に文字数稼ぎみたいにステータス長々と入れるのはあんまり好きじゃない。
前の話でスキルとか権限とかだらだら書いたのもあんまり気分良くなくて、ご了承ください。