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第7話 新人精霊術士として増えていく知識と、増強される外部認識

 俺はギルドに併設された酒場の一角で、ドミニクから精霊術士についての話を聞いていた。


「講習って言っても、オレが教えられるのは基本的な精霊術士の立ち位置と、スキルくらいだから、気を楽にして聞いてくれ。……と言っても最低限の事は覚えて貰わないと、仕事した事にならねえから、ちゃんと説明もするけどな」


 人の良さそうな表情を浮かべながらドミニクは言ってくる。

 仕事に真面目そうな人だ、と思いながら、俺は彼に言葉を返す。

 

「了解だドミニクさん。話を聞くのは好きだから、どんどん頼むわ」


 言うと、彼は嬉しそうに微笑んだ。


「Eランクのオレにそういう事を言ってくれるなんて、アンタは良い人だな、オーティスさん。――それじゃあ、話させて貰うが、精霊術士はその名の通り精霊と触れ合って魔法やスキルを行使する職業だ。そして触れ合い方は色々あるが、基本的には自然の精霊に協力を求めるか、精霊と契約して力を貸して貰い続けるか、だな」


 ドミニクはそう言いながら、腰に付けたポーチを開けた。すると青色の光の球体が出てきた。

 球体は彼の腕を伝うようにして顔の近くまでいくと、ふよふよと漂い始めた。

 

「そいつは……精霊か」

「ああ、そうだ。光の下級精霊だな。俺が契約している精霊の一つだな」


 下級精霊は多くの場合、人型をする事はない。丸や四角など単純な形をしている事が多い。

 複雑な形を取るためには相応の魔力が必要だからだ。

 

 ……まあ、下級と呼ばれちゃいるが、弱いって訳じゃないけどな。

 

 下級であっても人を押して動かすくらいの力は持っている。それと契約出来ているならば、目の前の精霊術士は確かな力を持っているのだろう。

 

「オレの場合、カンパニーから来る依頼は斥候とか、マッパー役でな。こういった精霊に空を飛んでもらって、魔獣が周囲にいないか確認して貰ったり、行き先が合っているか見て貰ったりと、目の代わりになってもらっているんだ。――ま、一般的な精霊術士だと、カンパニーとの仕事では基本的に補助を務める事が多いってことだ」

 

 そう言いながら、ドミニクは自分の顔の周りに漂う光の精霊に触れながら、幾つもの仕事例を上げてくれる。

  

 ……なるほど、こういった事は手紙からは分からないからなあ。

 

 実際に経験した人に教えを受けられるというのは大変助かる。

 知識は頭に詰め込んでおいて損はないのだし。その時が来る来ないは置いておいても、知っておくことは大切だ。

 

「オーティスさんはカンパニ―に所属しないで『冒険者』になるって事だから、あんまり組織だった仕事はしないだろうけどさ。何かの縁でカンパニーと仕事する事になったら、そう言った補助系が殆どだと思っておくといいぜ」

「ああ、ありがとう、ドミニクさん。お陰で心構えが出来るよ」

「そう言って貰えると解説した甲斐があったぜ。じゃあ、知識はこの辺りで次は技術スキルだが、精霊との意思疎通方法、って奴を話そうと思う。これさえできれば、とりあえずどのカンパニーでも働けるし。冒険者としても役立つはずさ」


 言いながら、ドミニクは腕を突き出した。そして掌を天井に向け、

  

「【魔力球精製】」


 言葉を放った。瞬間、彼の掌の上に白い光の小さな珠が生まれる。その球を見た青い下級精霊はふわふわと白い光に近づくなり、少しずつ白の色を取り込み始めた。


「それが、意思疎通か?」

「ああ、その方法のひとつで、食事による取引ってやつだ。【魔力球精製】の魔法で精霊に魔力という食事を与えれば、それと引き換えに手伝ってくれるんだ。契約していない場合はちょっと多めの魔力が必要だが……これを使って、精霊を呼び寄せたり、契約している子たちに頑張って貰ったりするわけだ」


 食事による取引か。

 確かに精霊によっては、それでも仕事を引き受けてくれるかもしれない。

 

 ……彼らは基本的に律儀だし、自分が受けた分は変えそうとしてくるからなあ。

 

 そう思っていると、

 

「さっきの呪文は覚えたかい、オーティスさん」

「ああ。【魔力球精製】……こうだろう?」


 俺もドミニクの真似をすると、同じように白い光の珠が掌に生まれた。大きさは、ドミニクの二倍という所だ。熱くも冷たくもない。

 そして掌を閉じると、魔力の球体は掻き消えた。

 

「ああ、そうだ。一目見ただけで覚えちまうなんて、やっぱりCランクの魔力持ちってのはすげえなあ」

「いやまあ、そこまで高度な魔法でもなかったし、分かり易く説明してくれたからな。ドミニクさんも、そっちの精霊も」


 俺はドミニクと青い光の下級精霊を見ながら言った。

 

「はは、そう言って貰えるとうれしいねえ。――よしよし、お前も、今日も説明を手伝ってくれて有り難うな」


 ドミニクはそうして楽しそうに笑いながら、下級精霊を撫でる。

 すると下級精霊はぷるぷると震えながら、


「――」


 という音を返していた。それを見聞きして、

 

「なんというか、凄い信頼関係があるんだな」

「まあ、長年の付き合いだからな」

「なるほどなあ。しかし、ドミニクさんは、精霊と会話したりはしないんだな? その青い子、結構ドミニクさんに喋りかけてるのに」

「え……?」


 何となく呟いた俺の言葉に、ドミニクはその動きを止めた。


「まさか、オーティスさん。アンタ精霊の言葉がわかるのか……?」

「え? ああ、まあ、分かるかな」

「ええと、じゃあ、俺が撫でるといつも出してくる高い音があるんだが……なんて言ってるんだ?」


 ドミニクはもう一度青い下級精霊を撫でてみせた。

 すると、先ほどと同じように高い音が響いたが、俺にはちゃんと声としても聞こえていて、

 

「うん? えっと……『疲れないように大切に撫でてくれて有り難い。ただ毎回言うが、もうちょっと魔力球は少なくても構わないんだぞ? 分かってるか?』だそうだ」

「そ、そうなの、か……?」


 言うと、光の球体がピョンピョン跳ね始めた。


「これは……喜びの動き……ってことは、マジなのか」

「そのまま翻訳しただけだしな。嘘は言ってないぞ」


 下級精霊と言っても、契約できるような存在であれば、ある程度の人語を理解する事が出来るのだ。人と同じだけの発声器官を作るほどの力がないから、上手く喋れないだけだし。

 ただ、その場合はこちらが聞き取る努力をすればいいだけだ、と思っていたら、

 

「精霊の言語は人間には難解だから、『会話での意思疎通』が出来るのは、相当高位な精霊術士だけなんだが……すげえな、オーティスさん」


 ドミニクは目を丸くした状態で、そんな事を言い始めた。

 

「えっと……会話って、そんなに技術のいる事だったのか?」

「そりゃ、勿論だぜ! それなり長い間やってきたオレでも単語しか分からないし。動きでどんな感情を示しているかを感じ取るのもやっとだってのに、オーティスさんは喋れちまうとか……。オレからすると、さっきのは高音が鳴り響いているようにしか聞こえないからな」

「あー、そういう聞こえ方をしているのか。一応さっきから、喋ってはいたんだが」

「ああ、オーティスさんにはちゃんと聞こえるんだろうな。精霊語を話せるスキルを天性で持ってる人もいるって聞いた事はあるが……まさか新人で持っている奴を、この目で見るとは……」


 正確には、天性とかそういうものではなく、単純に精霊太上皇と何十年も一緒に喋っていたから覚えられたというだけである。

  

 ……そういう意味では、既に俺は精霊太上皇から言語スキルを習っていた、という事なんだろうなあ。

 

 それと預言者という事もあって、自然の声など、人以外の言葉を聞く事をずっとし続けて下地が出来ていた、というのもあるだろうが。

 まあ、精霊の言葉を話せるという事に違いはないので、特に急ぎ訂正はする必要もないだろう。聞いてきたら答えればいいし。そう思っていると、

 

「いや、すまねえ。驚いて言葉を失っちまった。――というか、ありがてえぜ、オーティスさん。教えるつもりが、教えられちまったな……ああ、本当に凄い、有望株だ……!」


 ドミニクは何やら震えていた。

 ただし、怒りや悲しみと言った震えではないようで、何やら目をキラキラさせながらこちらを見ていた。そして――


「うん、となったら、もう教えられる事はねえ……! 講習は以上だ、オーティスさん。既に意思疎通って部分では、オレよりもずっと優秀な精霊術士になってるようなもんだからな!」


 そんな風に、興奮した感じで告げてくる。

 

「オーティスさんなら精霊術士として問題なくやっていけそうだって、十年選手の精霊術士として太鼓判するぜ!」


 どうやら、精霊と喋れるというだけで、結構な評価を貰えたらしい。これは精霊太上皇に感謝しなければならないなあ、と考えていると、

 

「教えられる事が少なくてすまねえな、オーティスさん」


 申し訳なさそうに苦笑しながらドミニクは告げてきた。しかし、俺からするとそんな事はなく、


「いやいや。精霊との食事取引とか、一般的な仕事内容とか、そう言った情報は凄く有り難いもんだったよ、ドミニクさん」


 本心から言うと、ドミニクは頬を掻きながらも微笑の表情になり、


「……ふふ、オーティスさんは人を立てるのがうめえな。でも、それならよかったぜ。――そして今後は同業として、よろしく頼むわ」

「ああ、よろしく」


 そうして俺は、グローバルギルドの餞別を貰い、経験豊かな同業者の知人を得る事が出来たのだった


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