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100人の英雄を育てた最強預言者は、冒険者になっても世界中の弟子から慕われてます  作者: あまうい白一
第二章

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39話 かつての預言者の力

背後で狼たちが迎撃される音を聞きながら、俺は、アビスフェンリルと対峙していた。


 ……フィーラとリンネがいる以上、後退している人たちに心配はいらないからな。

 

 だから、目の前にいる瘴気を漂わせた魔獣にだけ、意識を集中させて、その動きを観察していた。すると、


「貴様は……ああ、そうか。先ほどから考えていて、声が聞こえてきて、思い出したぞ。――貴様が、ワシ達の盟主を切りつけ、ワシ達の神を遠ざけた男か……! 預言者アイゼン……!!」


 不意に、アビスフェンリルがそんな事を言い始めた。

 名前を呼ばれたし、言い方から察するに顔も知っているようだが。


「俺は会った事はないんだけどな」

「ワシも今会ったばかりだが……貴様への恨みが盟主の血肉から聞こえてくるのだ。――だからまず手始めに、供物として食わせてもらうぞ、預言者アイゼン……!」


 その言葉を皮切りに、アビスフェンリルは動き出す。

 一歩をこちらに踏み出し、左側にある頭がこちらを向いた。

 

 そして、口腔に、黄色の光を溜めたと思うと


「【サンダー・ブレス】」


 瞬時に雷撃のブレスを放ってきた。

 地面を削りながら、雷撃が突き進んでくる。


「……これだけ発展した街を壊しながら攻撃されるのはよろしくないな」


 だから俺は、目の前に杖を突きさし、

 

「【我が兵装よ 吸い込み 受け止め 気合を入れて流しきれ】」


 言葉を放った。

 瞬間、俺の前まで来ていたブレスは、全て俺の杖に吸い込まれた。 

  

 それを見て、フェンリルはあざ笑う。


「馬鹿が! 止めた所で、その武器を壊して終いだ!」


 確かに杖はぎしり、と軋みを上げた。だが、


「……!」

 

 しかし、それだけだった。

 雷撃の威力を全て吸い込み、空へと逃がして、終わりだった。

 

「ワシの攻撃で壊れることなく、防ぎ切っただと……!?」

「それなりに特注な武器なんでな。良くやってくれる子なんだよ」


 俺は耐え切った杖を軽く撫でながら、地面から抜く。

 手触りは全く問題ない。消耗もしていないのがすぐに分かる。

 何故なら、武器自身が、そのことを教えてくれるのだ。


「ああ、良い武器だ。良いものをたくさん見せてくれた街を壊させはしないって、俺の気持ちに同調してくれるっていう意味でも良い武器だよ」

「だからどうした……。そんな貴様の意思ごと、切り裂いて殺してくれる……!!」


 アビスフェンリルは、怒りの感情と共に、こちらへ跳躍した。

 その体格に見合わぬ高速、十数メートルの距離が一歩で詰まる。

 

 そして、その速度のまま、右腕の爪を振るった。が、

 

「肉弾戦は、こっちに分があるみたいだな」


 遅く見えた。

 故に俺は、身を低くして掻い潜る。


「避けただと……!」


 回避の動作と共に、俺は剣を抜く。

 そして、数歩接近する。

 だが、それを見て、アビスフェンリルはほくそ笑む。


「無駄だ! 私は、神の力によって強化されている……! ただの刃などで殺せると思うな……!」


 確かに、アビスフェンリルは硬い体毛と毛皮を持つ。

 故に、刃は通り辛く、断ちづらい。故に、目の前のフェンリルの言っている事は分かる。切ったところで、致命傷になり辛い事も。だから、


「無駄に斬らないさ。……お前のようなフェンリルは、戦時に嫌というほど相手にして来たからな」

「なんだと……!?」


 俺は斬撃の間合いになっても剣を振るうことなく、更に近づく。。


「ふん、特攻など……そのまま至近距離で食らうが良い!」


 こちらの動きを見たアビスフェンリルは、後ろに一歩を踏んだ。

 そのまま左にある口腔に、雷撃のブレスを溜めていく。

 

 それを、俺は見逃さない。

 

 ……致命傷を狙うには、口の奥、喉の内部にあるコアを狙うべきという事も知っているのだから……。

 

 雷撃を溜めるブレスの口の奥。そこに闇色をした球体がある。それがコアだ。

 故に、ブレスが発射されるよりも一瞬早く、フェンリルの下方へ潜りこみ、

 

「話し合いが出来ないなら、口は閉じてろ」

 

 剣の腹で、思い切りフェンリルの顎下を殴った。

 

「ぐっ……!?」

 

 刃筋も何も考えないフルスイングだ。

 打撃により、顎が下から跳ねるように動いた。

 当然、フェンリルの口は一気に閉じる。

 

 ……ブレスを放ちかけていた口が、だ。

 

 そして、勿論、口が閉じても、発射されるはずだったブレスは消える訳もなく、

 

 ――ドン!

 

 ブレスが口の中で爆発した。


「……っ……ぐ……ォ!?」


 雷撃が口腔で爆発したその首は、煙を上げて、半ばはじけ飛ぶ。

 本来は街に向かって放たれるべき威力が、集中したのだから、それくらいのダメージがあって当然だ。

 

 アイゼンは、フェンリルから少し離れた箇所で、フェンリルの状態を確認していた。

 

「ぐ……そ……に、ヒト如きに……よくもワシの首の一つを……!!」

「許さんぞ……【ブリザード・ブレス】!」


 頭は違っても痛みは共有しているのか、残った二つの頭で、アビスフェンリルは睨みつけつつ、ブレスを吐いてくる。


「……頭一つ、コア一つ破壊するだけじゃ、足りないか。普通のアビスフェンリルなら、それで怯むなり、大人しくなるなりするんだが……」


 今、目の前にいる巨大なアビスフェンリルは、違うようだ。

 殺意がさらに増している。

 

 人の意思が入ったからか、邪神の力を浴びて正気を失っているからか。どれかは分からないが、

「……この分だと、三つの口にあるコアを潰して、倒すまでダメそうだな」


 既に一つの頭は潰してある。ただ、その半壊した三つ目の頭も、今では回復しつつあるのは確かだ。

 

 ……三つのコアを全て潰すまで、回復は続くんだよな……。

 

 冷気を吐いている口の奥、コアが見えた。そして先ほど、炎を吐いている口の奥にも、コアを確認していた。 

 コアを複数持つタイプの魔獣は、全てのコアを潰さなければ、倒しきれない。

 アビスフェンリルは再生能力が特段高い魔獣ではないけれども、時間を掛ければ掛けるほど、回復力で持ち直されるのは間違いない。

 

 今回もそういうパターンだ。

 ならば、取るべき作戦は幾つかあるのだが、


「我が身の全てを使って、貴様だけは、殺してくれる……!」


 こちらが思う間に、フェンリルの口に魔力が溜められていく。

 炎と冷気の二種のブレスだ。

 その口の奥にコアが見えた。

 

 ……あまり悠長にやっていても、街に炎や冷気の被害が及んでしまうな。

 

 ならば、


「ブレスを抜けて、三つ首にあるコアを同時に攻撃するのが最も迅速で、被害が少なく、手っ取り早い、か」


 必要なのは、ブレスを突き抜ける勢いと速度、フェンリルの身体を覆い尽くすような一撃。

 やる事は分かった。

 使うべき技も決まった。


 だから、それをする為に動く。ケリをつけるために。

 

「ああ、そうだ。――アビスフェンリル、お前に、決着の言葉を予えよう」

「戯言を……! 決着をつけて、勝利するのはワシの方だ……!!」


 怒りに満ちた叫びと共に、


「【ブリザード・ブレス】!」

「【ブレイズ・ブレス】!」


 アビスフェンリルはブレスを発動した。

 二つの首から発射されたそれは、俺に向かって一直線に進んでくる。それに対し、


「――フェンリルの防御力に対して斬撃は通じにくくとも、刺突は別だ」


 俺は刀身を地面と水平に構え、大きく息を吸い


「【我が身体よ、熱く、速く、燃え上がれ】……!!」


 言葉を身に纏わせて、共に走り出す。

 同時、俺の身体の周囲から青い炎が噴き出し、動く身にまとわりついた。


「な……!? お、己の体に炎を!?」

「ただの炎じゃないさ。冷えるのも、燃えるのも御免だからな」


 僅かな熱さは感じるが、体には全くダメージはない。

 己の言霊と魔力によって、魔力の炎だ。

 コントロールは万全に出来ている。


 その青い炎は体の周りを覆うように流動する。

 まるで俺の身体を中心とした竜巻のように。

 その青い炎の竜巻による回転は、自分に向かってくる炎と冷気のブレスを、弾いては散らしていく。

 

「な……わ、私の炎と冷気を真っ向から防いで抜けてくるだと――?!」


 フェンリルは驚愕の声を上げるが、その驚きはまだ早い。

 

 ……この炎は防御に使うための物じゃない……!

 

 加速するごとに炎の勢いは強まり、更に熱も増していく。

 

 それは、向かってくるブレスすら、弾き散らす前に燃やし尽くすほどに。

 

「……!?」

「【一閃なる炎熱よ 我が敵を 穿ち抜け】」


 今度こそ、フェンリルは驚きに目を見開いた。

 そして体を動かし、ブレスを止めつつ、その場から離れようとする。

 

 だが、もう遅い。

 

 ……既にこちらの技は発動しているのだから――

 

 それは体に炎と熱を纏い、一直線に穿つ、刺突の剣技。

 動きだしたら、ほんの刹那で相手を貫く、己の動きを灼熱の槍と変える一撃――


「――【雷火突貫の宣告】(アルドール・ジャッジメント)」


 放たれた熱の塊はそのまま、アビスフェンリルの口腔に突っ込んだ。そして、

 

「ァ…………!?」


 口腔のコアごと、アビスフェンリルの身体を貫いた。

 その動きの後に残るのは、

 

「ゴ……ォォ…………」


 アビスフェンリルのうめき声。

 強力な熱が、一直線に突き抜けたことで、焼け焦げた跡。

 

 そして、焦げ跡の真ん中で、崩れていくアビスフェンリルの姿だった。




 真っ赤に染まった地面の上で、アビスフェンリルが砕かれる瞬間を、ロウとデイビットは見ていた。

 

「なんと、凄まじい威力……ですか」

「ああ……。百英雄であるデュロム嬢も、あそこまで強いとは思わなかったが……アイゼン殿はそれ以上だな、こりゃあ」

「ええ、これほどの力を持ちながら、普段はとても物静かで、温厚で、話をよく聞いてくれるなんて……。これが、預言者の……いえ、百英雄の師匠と呼ばれる方なのですね……」

 

 そんな言葉が、フェンリルの身体と同じように、交易都市の空気中に溶けていくのだった。

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