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100人の英雄を育てた最強預言者は、冒険者になっても世界中の弟子から慕われてます  作者: あまうい白一
第二章

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38話 楽聖


「弱らせた餌を逃がすわけがなかろう……! ゆけ、【シャドウ・ウルフ】」


 リンネは、アビスフェンリルの視線が、けが人を連れて下がる自分たちに向けられたことに気付いていた。

 そして、彼の指示で、周辺に散らばっていた真っ黒な狼たちが、走り寄ってくるのも。

 

「迎撃しますか……」


 このままでは追われる事になるし、倒してしまった方が良い。そう思って、リンネは腰の剣を抜こうとしたが、

 

「リンネちゃんはそのまま、人を守りながら運んでいいわよ。ここは私がやるから」


 そんなリンネの前に、フィーラが立った。


「フィーラさんが、戦うのですか」

「ええ。そうよ。……マスターはこの人たちを下がらせると言ったのだから。その言葉に逆らうというなら――排除しなきゃ気が済まないもの」


 フィーラは笑みで、しかし、全く笑っていない声で言いながら、先の牧場の時と同じように、バイオリンを取り出した。


「フィーラさん……? その楽器で何を……」


 演奏魔法で周囲にいる人々は強化出来るだろうが、既に戦闘は出来ないほど消耗している人たちだ。

 強化しても意味は薄いし、何より、

 

 ……目の前から狼が迫って来ているのに演奏している暇など無い筈です……。


 だからそんな言葉が零れたのだが、


「違うわよ、リンネちゃん。これは、楽器じゃないの。残念ながらね」


 フィーラは少しだけ悲しそうな笑みを浮かべつつ、言った。

 そんな彼女に、

 

「――ガアッ!!」


 接近していた一匹の狼が突っ込んできた。

 その顎で、フィーラの腕を噛み潰そうと。しかし

 

「――」


 一瞬で、狼は、その顎から真っ二つに切り裂かれた。


「え……?」


 見れば、先ほどバイオリンの弓を持っていたフィーラの右腕には、一本の細剣が握られている。

「普段は楽器を弾く弓にしているんだから、あんまり汚さないで欲しいわね」


 その形状は、やや弓に近いものの、しかし、完全に剣と言っていいものだ。


「バイオリンの弓を、剣にしたのですか……?」


 魔法か何かで変質させたのだろうか。そう思ってフィーラに問うと、彼女は首を横に振った。


「それが、違うのよ。こっちが元々の形なの」

「元々の形、ですか……?」


 こちらが話している間に、再び狼はこちらに来る。だが、それはフィーラは分かっていて、すぐさま反応し、狼の方にバイオリンを持った左腕を向けた。そして、


「【楽団武装:展開――魔砲】」


 バイオリンの形が変容していく。

 細長い弦楽器の形から、出てきたのは金属色が目立つ砲だ。

 そのまま砲は、フィーラの左腕に接続される。

 

「また、武器に……」

「当然よリンネちゃん。――私は、全身に兵装を仕込んだオートマタだもの」

 

 その言葉と同時、砲の先端に、魔法陣が幾つも生まれた。そして、次の瞬間、


「【魔砲・発射】」

 

 楽器から変容した砲から、幾つもの魔力の弾丸が、発射された。


 連続で打ち出された魔力の塊で構築された弾丸は、追って来ていた狼達を一斉に打ち砕いていく。

  

「す、すごい威力です……」

「ええ、でも、人を楽しませることにはあまり向いていないからね。普段は、楽器に改造して使っているの。……どう、リンネちゃん。これが私の秘密の一つだけど……怖い?」


 フィーラはそう聞いてくる。

 その表情はとてもフラットで、何の感情も見せてこない真面目な物。あれほどハイテンションだったフィーラだというのに、非常に珍しい顔だ。

 だからこそ、リンネも真面目に答えるべきだと思い、まず、初めに浮かんだ感想を答えた。


「えと……とても、格好いいと思います……!」


 そう言うと、フィーラは一瞬目を丸くして、

 

「ふふ」


 微笑した。


「え……? な、何かおかしかったですか?」

「違うわ、リンネちゃん。リンネちゃんは同門の皆も同じことを言ってくれたのよ。ええ、そう言ってくれるのは嬉しい事だわ!」


 先ほどまでフラットだったフィーラのテンションが一気に上がった。


「それに、マスターも、この音を褒めてくれたものね。人を守れる音だって」

「先生、そんな事を仰ってたんですね」

「ちゃんと真っ直ぐこっちの目を見ながらね。よしよしもしてくれたわ。――正直に言うと、あんまり響きの良い音じゃないけれど――でも人の笑顔を守れるなら、それはそれで良い音よね!」


 フィーラはそんな事を言いながら、再び左腕を構えた。

 未だ、こちらに雇用とし続ける影の狼たちに向けて。


「さて、それじゃあ、続けましょうか。これも私の楽団による演奏だから。オーディエンスとして、存分に聞いていきなさい、狼たち」


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