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100人の英雄を育てた最強預言者は、冒険者になっても世界中の弟子から慕われてます  作者: あまうい白一
第二章

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33話 出てくる新情報 その1


 デイビットは、牧場の厩舎にいた職員を連れて、アイゼン達が待つ牧草地へ向かっていた。

 

「もう集まったと聞いたときは驚きましたよ……。流石は言霊の扉と、副市長が一押しする協力者の皆さんだなあと」

「はは、俺たちよりも、その協力者――アイゼンさんたちのほうが何倍も活躍しているんだけどな。今も、メタルシープから話を聞いてくれているし」

「そこもビックリです。魔獣と会話できる方だったなんて。副市長の話ではとにかくすごい方だとしか聞いていませんでしたから。……本当に、何者なんです?」

「いや、まあ、俺からも、副市長と同じ所までしか話せないんだけどな。とても優秀で、有能な人である事だけは保証するよ」


 そう言うと、職員は、『あー』と、考える様な声を上げた後頷いた。


「なるほど。色々事情がおありなのですね……。ただまあ、報酬の方はしっかり払わせて頂く事にします。想像以上に早いので、その分も上乗せして」

「ああ、ありがてえ。ただ、さっきもいったけれど、活躍したのはアイゼンさんたちだから。その上乗せ分は、そっちに渡すようにしてくれると助かる」

「かしこまりました」


 などと話している内に、視線の先にアイゼン達が見えるところまでやってきていた。

 デイビットは彼らに、声を掛けようとして、

 

 ……ん? 

 

 しかし、様子がおかしい事に気付いた。

 アイゼンが何やら首を傾げているのだ。

 だから、デイビットは少しだけ足取りを早め、


「アイゼンさん。職員さんを連れてきたんだが……何かあったのか?」

 

 聞いた。すると、アイゼンは、難しそうな表情をして、


「それがなあ。メタルシープたちに話を聞いた感じ、職員さんに色々と聞かなきゃいけない事が多い感じになってな」


 そう言うと、職員も職員で首を傾げた。


「聞きたい事、ですか? 私に分かる事であればお答えさせて頂こうと思いますが……なんでしょう?」

「まず初めに事実を確認したいんだが、この牧場で保有しているメタルシープは全部で百匹だったよな?」

「はい。それは間違いありません。百匹を増やしも減らしもしないようにするというのが、この牧場を続ける条件でもありますので」


 職員の言葉に、アイゼンは頷いたあと、羊たちに視線を送った。


「でもな、ここにいるのは、八十匹だったんだよ」

「え……? でも、厩舎にいるのは十五匹でしたから……五匹、足りませんよ?」


 アイゼンと職員の言葉に、デイビットは意外そうな声を上げる。


「マジか。……でも、見える範囲に羊はいないぞ」


 デイビットは周囲を見渡す。

 しかし、アイゼンが取りまとめている群れ以外に、羊の姿は一つもなかった。


「ああ。デイビットの言う通りでな。フィーラやリンネ、言霊の扉の皆にも軽く見回って貰ったんだけど、やっぱりどこにもいなくてさ。外に逃げたのかって思ったんだけど……そう言う形跡もなかったんだよな?」


 聞かれ、職員は、数秒目を瞑って考える様な素振りをしてから、頷いた。

 

「そう……ですね。一番外側の金属柵も破られてないので、外に脱走したとは考え難いです。柵は高いですし、ジャンプで飛び越える事は、羊たちの運動能力的に不可能な筈ですから」


 メタルシープは、走行は得意であるが、跳躍はそこまで上手くない。というか、苦手な魔獣である、というのは事前に調べて分かっている。

 そして職員の話でも、高い柵を超えられるほどの能力はないという。

 

「なら、残りの五匹はどこにいったんだ?」

「うん。そこが疑問点の一つでな。……悪意なしに聞くんだが、職員さんがメタルシープを五匹を処分したとかは、無いんだよな?」

「ええ。勿論。そのような事は全く。私だけではなく、牧場職員全員が、丹精込めて世話をしているメタルシープを、処分するなど有り得ないと自負できます」


 職員はきっぱり言い切った。

 実際、殺処分させないために、自分達のような職業者に依頼しているのだから。その辺りは信用できる。

 それは、アイゼンも同感らしく、だよなあ、と頷いた。そして、


「ということは、別人っぽいな」


 そんな事を言った。


「ん? 別人というと」

「――いや、さっきからな。この羊たちは、『攫われる』とか、『食われて持っていかれる』とか、そういうことを言っているんだよ」


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