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100人の英雄を育てた最強預言者は、冒険者になっても世界中の弟子から慕われてます  作者: あまうい白一
第二章

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26話 依頼へ



 宿屋に帰った俺は、部屋に戻るなり、リンネとフィーラに言霊の扉に行ったことや、受けた依頼について話をした。すると、


『依頼を受けてきたんですか!? 絶対に一緒に行きます!』

『昨日仲間入りしたばかりのフィーラちゃんを置いていくなんてこと、させないからね、マイマスター!!』


 という返事が食い気味で返ってきたため、軽く荷物の整理をした後、三人で言霊の扉の本社へと戻った。

 

 受付には既にデイビットが待っていて、そのままの足で、本社の奥にある広い部屋に通された。 そこには、十数人の、体格の良い人々が集まっていた。そして、

 

「皆。良く集まってくれた。こっちに注目してくれ」


 俺たちが部屋に入るなり、デイビットがそんな声を飛ばした。

 集まっていた面々は皆、その声に反応し、ざっと、一斉にこちらを向いた。


 そして、こちらを向いた中で一番前にいた筋骨隆々な男が、言葉を返してきた。 


「イエスボス。しかし、この方々は一体……?」

「ああ、彼らが来る前に軽く説明したけれど、有り難くも今回の依頼に協力してくれる人たちだよ」


 そんなデイビットの言葉に、言霊の扉の面々はざわめきだす。


「協力してくれるって……あの方、百英雄のフィーラ様じゃないの……?」

「あ、ああ。確かに。楽聖の英雄が、この仕事に参加してくれるってマジか……」

「楽聖様の演奏魔法って、確かこっちの能力やテンションを高めてくれるんだよな? 店にいる時に少しだけ受けた事があるけれど、それをやってくれるなら、ガチで有り難いぞ……」


 声は主にワクワクとしたもので、何やら期待するような目もフィーラには向けられていた。

 

 ……百英雄に対する尊敬の念は凄いんだ、とデイビットもロウも行っていたけれど、こんな感じなんだなあ。

 

 かつての教え子たちが、こんなにも受け入れられている様子を見ると、自分のことのように嬉しくなる。

 

 一方、百英雄に対する声ではないものも、ちらほらと聞こえて来る。


「しかし……向こうの魔術師さんとか、エルフの女の子は大丈夫なのか?」

「ああ。エルフの子なんて華奢ですし、魔術師さんも引き締まってる体に見えますが、ちょっと細めですからね」

「うーむ。今回は結構、肉体的に危ない仕事だから……ボスが連れてきたんだから、力不足とかにはならないと思うが、でもなあ……」


 大体が、そんな感じで、心配してくるような言葉だ。

 幾らか小声ではあるが、零れてくる。


 ここにいる面々は、大体が筋骨隆々としている。

 見るからに腕っぷしが強そうな人々だ。そういう言葉が出てくるのも必然か、と思っていると、

「あー、一応、言っておくぞ。お前ら一人一人に、この人たちの事を詳しく説明出来てねえのは申し訳ないと思うけど、この人達は俺のお墨付きで、むしろ力を不安視するのは失礼なくらいの実力者ってことは確かでな。――だから、心配するのはいいが、行き過ぎて侮る事なんて事は、もっての外だからな。その辺、注意しとけよ」


 力強い言葉でデイビットは告げた。

 その表情は、微笑んでいるように見えるものの、目は笑っていない。

 真剣なものだった。

 

「――う、うっす! 了解っす、ボス!」


 その返事を受けて、今度こそデイビットは笑った。


「ああ、分かればよし。――じゃあ、依頼に持ち込むアイテムの準備とチェックを開始してくれ」「イエスボス!」


 その返事を合図にして、言霊の扉の面々は動き始めた。

 各々が、部屋にある棚から、ポーションや革袋などの荷物を取り出したり、自らが持つバッグの中身の確認をしていく。


 そんな彼らの動きを見た跡、デイビットがこちらに歩み寄ってくる。


「カンパニーとして、依頼前に荷物の準備とチェックをするっていうのが定例になっていてな。終わるまで、ちょっとだけ待っていてくれ、アイゼン殿」

「ああ、了解だ。……しかし、何というか、統率が取れているというか。デイビットは人望があるんだな」


 見ていてそう思った感想を口にすると、彼は苦笑した。


「はは、まあ、カンパニーの上役にいるから多少はな。それでも、英雄に慕われてるアイゼン殿ほどじゃねえさ。――というか、さっきは部下たちがすまねえな。説明があまり出来てない分、見た目で判断しちまっててさ。気を悪くさせるかもしれねえことを、謝るぜ……」


 デイビットは申し訳なさそうに言ってくる。ただ、

 

「いやあ、彼らに悪気がないのは分かるし、見た目で言われてる事は間違いじゃないからな。ここにいる人たちは、体がガッシリした人たちが多いんだしさ」


 先ほども思ったけれども、そんな人たちから見れば、やはり俺たちは細めだろうと思うし。

 リンネが華奢というのは、俺から見てもそうなのだし。


「事実なんだから、気分を悪くしたりなんかしないさ。むしろ心配してくれて言ってるんだろうな、って思ったよ」


 そう言うと、デイビットは微笑する。


「ああ……奴らの気持ちを汲んでくれてありがとうよ。……まあ、言霊使いとしては、相手に伝わる印象を考えて喋って欲しいとは思うけどな。誰しもアイゼン殿みたいに、相手の事を汲んでくれるわけじゃないんだから」

「まあ、その辺りは個々人で気付く所だからな。……何にせよ、今日はよろしく頼むわ」

「ああ、こちらこそ、よろしくお願いするぜ、アイゼン殿」


 そうしてデイビットと言葉を交わしていると、


「――ボス! 準備と確認、完了です!」


 そんな声が響いた。

 見れば、その場にいた全員が、荷物をもって整列し直している。


「おう、手早いなお前ら」

「いつも動きだしの早いボスを見てればこうなりますとも」


 そんな部下の言葉に、デイビットは苦笑を浮かべた。

 

「はは、ありがてえ事だ。……それじゃあ、出発するぞ!」

「おす!!」


 そしてデイビットの号令と共に、俺たちは、依頼の目的地に出発していく。

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