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100人の英雄を育てた最強預言者は、冒険者になっても世界中の弟子から慕われてます  作者: あまうい白一
第二章

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23話 それぞれの行動



 デイビットに付いていく形で俺は二階の奥にある通路を歩いていた。

 その最中で、デイビットは苦笑と共に俺に声をかけてくる。


「さっきはすまないな、受付で手間をかけさせて。どこからアイゼン殿の話が漏れるか分からなかったから、迂闊に部下に話を通せなかったんだ」


 どうやらデイビットは、見た目や喋り方に勢いはあるものの、実際には慎重に動く性格のようだ。

 ……その辺りは、ロウが持っている雰囲気に近いな。

  

 似た者同士なのだろう。

 ユリカが代表者は口が堅いとか言っていたけれど、二人ともそうらしい。とはいえ、

 

「別に全然手間じゃなかったぞ? 直ぐにデイビットが出迎えてくれたし。待つ事もなかったしさ」


 大丈夫だったと伝えると、デイビットの苦笑がほぐれた。 


「はは、本当にタイミングが良かったよ。……それと、ギルドに来てくれて嬉しいぜ」

「まあ、食事の場で約束したからな。そりゃあ来るさ」

「それでもだよ。言霊でもない口約束を守って、こうして実際に来てくれたんだから、有り難い事さ。この仕事をしていると、約束や契約で時折り良くない気持ちになっちまうからな」

「苦労してるんだな」

「はは、戦争でがっつり苦労したアイゼン殿に言われるほどのもんじゃないだろうけどな」


 などと会話している内に、俺は建物の三階まで来た。

 目の前には『第一応接間』と書かれた大きい扉がある。

  

「この部屋でちょっと話を出来ればと思うんだが……その前に少し言っておく事があってな。中にはロウ以外にも、もう一人いるんだ」

「もう一人? 俺の弟子とか? もしくは、ロウやデイビットの知り合いか?」

「まあ、後者だ。というか情報提供者だな。昨夜言った通り、この街の運営を務めている、百英雄の一人と、アイゼンさんを静かに合わせられないか、と思って色々と調べたんだけどさ。結論から言うと、市長は今、この街にいなかったんだよ」

「おお、そうだったのか」


 弟子も忙しい身だし、いつまでも一か所にとどまっている者も少ない。

 だからそうそう会えると思っていなかったし、その辺りは仕方ない事だろう。と思いながら俺は続くデイビットの話を聞く。


「――でも、詳しい事情を知っているヒトがいてな。で、その人がウチに来る予定も元々あったんで、どうせだったら直接説明して貰おうと思ってさ。この部屋に呼んでいるんだけど……嫌じゃ無ければ会ってくれるかい? 事後承諾みたいになっちまってるかもしれないが」

「ふむ……? 全然嫌じゃないから問題ないぞ。むしろ色々と話を聞ける人と喋れるんだから有り難いくらいさ」


 そう告げると、デイビットは安心したように小さく微笑んで、


「良かった。それじゃあ、中に入ってくれ」


 扉を開けてくれた。

 中に入ると、そこには大きな机と椅子が並んでいるのが目に入った。

 既に椅子の二つは埋まっており、 

 

「ああ、いらっしゃいましたか、アイゼンさん」


 その内の一つに座るロウがぺこりと会釈をしてきた。

 

 俺も会釈を返していると、ロウの隣。

 椅子に着いていた整えた髭を生やした中年男性が、俺と目が合うと同時に立ち上がった。


 小奇麗な服に身を包んだ彼は、そのままこちらに一礼して、


「おはようございます。そして、どうもお初にお目にかかります預言者のアイゼン様。交易都市の副市長を務めるウッズと申します。本日はよろしくお願いします」


 そんな風に自己紹介して来た。


「副市長さん? この人が、市長の事情を知ってるって人か」

「そうそう。この人も、口の堅い人でな。市長にすら下手に情報を漏らさないレベルの人だから、俺達経由でアイゼンさんのやりたい事を話させて貰ったんだけど、そしたら、直接話させてほしい、って言われたんだよ」


 なるほど。こちらの事情を把握した上で、ここに来てくれたのか。

 説明する手間が省けて助かるな、と思いながら、

 

「こちらこそよろしく、ウッズさん。アイゼンだ。今日は色々と話してくれるようでありがたいよ」


 俺も挨拶を返す。すると彼はゆっくりと頷き、


「いえいえ、本日はお話の機会を、頂けて助かります。我が都市の行動力だけは抜群な市長から、貴方様の事は良くお聞きしていたので。会えて光栄です」


 かしこまった様な口調で言ってきた。


「それで、アイゼン様は世界を周りつつ、百英雄の方々とお忍びで会っているとお聞きしましたが、事実でしょうか?」

「ああ、デイビット達から聞いていたんだったな。その認識であってるぞ。教え子たちも忙しい立場だし、あんまり騒がしくしては良くないだろうから。静かに挨拶程度を出来ればいい、くらいの気持ちで、世界周遊している感じだな」


 意図まで伝えると、ウッズはなるほど、と小さく頷いた。


「……市長もよく、『師匠は思慮深い方だ』と仰っていましたが、アイゼン様は今回も、色々と事情を考えて動いてくれているのですね。有り難いです」

「思慮って言うほどのものでも無い気はするけどな」

「いやいや、ウチの市長も、アイゼン様に会って喋りたいという事は言っていましたからね。もしも突然目の前に現れたら、一日仕事に手が付かなくなる可能性も考えられる、とか話していましたから。そうなると結構困るので、感謝しかありませんよ」

「そんな事を言っていたのか……」


 副市長と顔を見合わせた俺は、彼と共に思わず苦笑する。

 慎重に動いていて良かった、とそう思う。

 

「――って、そうだ。その市長だけれど、今はいないんだっけ? さっきデイビットからちょっとだけ聞いたけど」

「あ、はい。我が都市の市長は、ただいま、ちょっと仕事で南部の都市に出張しておりまして。帰りまでは一週間から二週間は掛かる、という状態なのです」

「ふむふむ、そこそこ長めの期間、この街にはいないんだな」

「そういう事になりますね。とはいえ、市長は数人の連絡員を連れて出られたので、帰還する際には、彼らが先に街に帰って来る事になりますから。市長が帰られるタイミングは、こちらの方で分かるので、その時にまたご連絡出来るかと思います」

「おお、こちらに戻ってくる時期を知れるのは有難いな」

  

 時間が決まっていれば予定も立てやすくなるし。

 こちらも急いで世界を周っているではないし。

 元々、交易都市の観光の為に何週間かはいようと思っていたのだから、その位の時間があっても全然平気だ。

 

「連絡は、私がアイゼン様の赴かせて頂くか、もしくはデイビット様やロウ様など、言霊の扉経由でお渡しできればと」

「ふむ? 俺は別に構わないが、デイビット達は橋渡し役になって貰っても、大丈夫なのか?」

「勿論、一向に問題ないぜ」

「はい。なんでしたら今回みたいに、面会のセッティングもさせて貰いますよ」

 

 デイビットとロウはそんな感じで快い返事をくれた。

 だとしたら、俺としては、特に何か言う事はない。


「それじゃあ、諸々お願いするわ、ウッズさん」

「了解しました。……今回アイゼン様が必要とされている市長周りの情報は、このような感じで宜しかったでしょうか? 他に何か、聞いておきたい事など御座いますか?」


 聞かれ、数秒考えたが、必要な情報は既に貰っている気もする。だから、


「いや、もうないかな。色々と教えてくれて助かったよ、ウッズさん。それにデイビット達も。今回の取り計らいをしてくれて有難うな」


 俺は目の前にウッズと、近くにいるデイビット達に礼を言った。

 

「喜んでもらえて何よりだよ」

「ええ。ようやく恩を一つ返せた気がしますよ。商人として通すべき筋の第一歩を果たせましたよ」

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また小説2巻も11月20日に発売します! どちらも面白く仕上がっていますので、是非よろしくお願いします!


また、ウェブ版もいつも応援ありがとうございます!

面白いと思って頂けましたら、下のブクマ、評価など、よろしくお願いします!!

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