第5話 side 受付 預言者にとっての程よい力と、ちょっと異なる外部の認識
『開拓の都市』のグローバルギルドで受付を務めているカティアは、目の前で魔力調査をしているアイゼンを不思議な人だ、と思いながら見つめていた
いきなり預言者の話をしだす辺り、世情に疎い人なんだろうとは思っていたが、まさかこの魔力チェックもしらないとは。
……カードも持っていないという事でしたし、恐らく、グローバルギルドの利用も殆どした事がないのかもしれません。
顔立ちも若いし、職業診断を受けてから直ぐにギルドに来なきゃいけない訳でもない。学生をしたり、家業を持つ人たちなどは、グローバルギルドに来るのが基本的に遅くなる。
……でも、そういった人たちを、安心させて案内するのが私たちの仕事ですからね……。
自分もこの仕事について数年を経て、こういった手合いには慣れている。
だからいつも通りやるだけだ、とそう思いながら接していた。けれど、
……この人は、とんでもない力と才能をお持ちなのかもしれない……。
目の前で起きている光景――魔力調査版を割り続けているアイゼンの姿を見ていると、何だかそう思えて仕方なかった。
通常の平均値である最初の魔力調査板を瞬く間に砕き、二枚目もあっという間に乗り越え、更にはCの水晶を割った。
そして今やBの水晶にヒビを入れている。既に五割ほど、砕けていると言っても良い。
今までこんな人、見たことがない、とまず思った。それと同時に、
……これが、グローバルギルドの職員たちでよく噂される、圧倒的な新人さんを担当する時のドキドキ感、なんでしょうか……!
そう。グローバルギルドには人が集まり、才能も集まる。
それ故、新人ながらいきなり飛び切りの成果を出す瞬間に直面することもある。
Dランクの新人職業者の誕生を、自分の同僚が興奮したように話してくれた記憶もある。あの時は実感が湧かなかったが、
……これが、その興奮ですか……。
そう思った瞬間、
「――」
魔力調査版の発光が止まった。
つまり、調査の終了を意味する。
そして、カティアは調査板を確認する。
Bの水晶のヒビが広がり、割れる寸前まで行っているが、しかし、ギリギリで割れていない。
これだと、ランク判断はCとすべきだろう。けれど、
「Cで止まったとはいえ、も、もう少しでBランクの魔力……!? 凄い、ですよ、これ……!!」
正直、Cランク以上の魔力を持つものは、そう多くない。
カンパニーの幹部クラスや、戦争で活躍した戦士の生き残り、その他英雄に近しい人々がようやく辿り着いている、という飛び切りのラインなのだ。
人外の英雄に触れている、と言っても良いかも知れない。
だから、自分が驚きの声を上げたのだが、
「あ、ああ……」
何やら困った様な、ぎこちない笑みを浮かべている。
本当にあと少しでBランクだったのだから、落胆しているのかもしれない。
Bクラス以上は、首都の王城に報告書を送り、ギルドでも貴重な人材として扱われる事になる。
その立場に、あと少しで手が届きかけていたのだから、無理ないかも知れない。けれど、
「でもでも、この結果は素晴らしいモノなんですよ! 精霊術士になって、いきなりCランクだなんて。私が担当した中で、こんな凄い精霊術士の新人さん、見たことありませんもの!」
本心からの言葉だ。
酒場にいる周りの人々も目を見張って、頷いているし。
優れた職業者であり、優れた精霊術士になれる能力を持っている。
この事実は確かなのだ、と伝えると、
「そっか。うん。受付さんが言う通り、素晴らしい結果だったと思っておくよ」
そう言って、普通の笑みを浮かべてくれた。
その様子を見て、悪い気分は抱いていないようで良かった、とカティアは思う。
「はい、そう思ってくださいませ。アイゼン様は、とっても才気ある方なんですから!」
優秀な職業者の誕生に立ち会えて本当に良かった。カティアは目の前の精霊術士の新人から見えてくる、ワクワクするような期待感を抱きながら、そう思うのだった。