14話 発展した街から得られるもの
展望台から降りた俺たちは、そのまま、昔には無かった街並みを見ながら歩いていく。
よく見れば中心部に比べると、道も綺麗に整備されていて、並び立つ家の感覚もきっちりしている。
見比べてみるとかなり違いが見えて、面白い物だなあ、と思っていると、
「あ、見てください先生。何か看板が立ってますよ」
リンネが歩いていた道の前方を指差した。
その看板には『これより先、新造エリア。公園造設予定。足元にご注意。御用の方は都市運営まで』と書かれている。
看板の奥には、樹木がバラバラに並んだ区画がある。
そして、看板より先の道は、砂利などが多く、まだ未整備状態の部分が多く見えた。
「先生の記憶通り、この向こうも、街になりつつある新しい所なんですね」
「みたいだな。というか、こういう連絡もしっかりしているんだな」
街ごとに発展の仕方というのは色々とあるのだろうけれど、こういうやり方を見ていくのは何とも面白い。
……手紙だけでは、結果だけしか分からないからなあ。
過程がこの目で見て分かるというのは、なんともワクワクすることだ。そんな事を思っていると、
「――ん?」
「あ、先生。杖が光ってますよ」
俺とリンネが同時に気付いた。
身に着けていた杖の先が光っていたのだ。
「これは……力がどこかに置いてあるって事だけど……まさか……」
俺は杖を手にして、看板の奥へと向かう。
杖の光が強まる方向へ一歩一歩確かめながら歩いていく。
すると、
「これか」
バラバラに並んだ樹木の一つ。
その根っこに光が見えた。
そこに杖を近づけると、杖の先に取り付けられていた本がパラッと開き、
「【封印解除条件・認定・返還】」
との文字が書きこまれた。
そして、光は本に吸い込まれていき、輝く一枚のページとなって収まった。
そのページには、
「【スキル:魔力強化Ⅱ】」
と得られた力が文章として刻まれていた。
「おお、ここでも力の回収成功ですね、先生」
「そうだな。……しかし、こんな所にあるとはな」
今までは街から離れた場所に合ったけれども、今回は完全に街中だ。
……いや、違うな。ここも昔は、街から離れた場所だったんだ。
ただ、今は都市が広がっているから、街中に置かれているという状態になっていただけだ。
……基本的に自分が力を置いてくる際には、何も無い場所を選んだが……。
自分が力を置いてきた時には、何でも無かった場所も、現在では何かが置かれている事もある。今回はそういうケースだったのだろう。
「ある意味、街中で回収できるとは、運が良いことではあるな」
「ええ、流石は先生です! これを見越して散歩に出たと思ってしまう位に! やっぱり未来が見えてるんじゃないですか?!」
リンネは若干興奮したように言ってくるが、俺は苦笑と共に首をふる。
「いや、普通に偶々さ。元々、力の回収なんてのは、世界を周るついでに、機会があればやる程度って決めていたんだし。単純に縁があったって事だろうさ。……力が増してくれたのは有り難い事だけどな」
自分の中で、ほのかに魔力が強まった感覚もある。
きっちり力は戻って来てくれているのだろう。
街を見るための散歩をしただけで、こういう事が起きてくれたのは、何とも嬉しいことだ。
「うん。……ロウやデイビットっていう良い人らとも出会えているし、色々と有り難い巡り合わせの多い街だな、ここは」
「そうですね。美味しい物にも出会えましたし。あのお店の果物とジュース、とっても甘くて美味しかったですよ!」
リンネは楽しそうに微笑みながらそういう。
「はは、リンネが喜ぶって事は、相当に良い味を出していたんだろうな」
彼女も交易都市を満喫しているようで何よりだし、こうした良い巡り合わせがあってくれるなら幸いな事だ。
そんな事を思いながら俺はリンネと共に街をさらっと見回った後、約束の待ち合わせ場所へと向かうのだった。
最強預言者のコミック1巻が来月、11月19日に発売されます!
また小説2巻も11月20日に発売します! どちらも面白く仕上がっていますので、是非よろしくお願いします!
また、ウェブ版もいつも応援ありがとうございます!
面白いと思って頂けましたら、下のブクマ、評価など、よろしくお願いします!




