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100人の英雄を育てた最強預言者は、冒険者になっても世界中の弟子から慕われてます  作者: あまうい白一
第二章

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9話 昔と今の違い


「……あ?」


 突進していた三人が、一斉に地面に倒れ伏した。

 そんな、光景に対し、野盗の頭は目を疑い、思わず呆けた声を出した。


「魔術師のくせに、近接戦闘をしてくるだと……!?」


 打突音は少なくとも三回重なって聞こえた。

 その事から、接近するほんの一瞬で、あの魔術師は最低でも三回、杖を振ったのだろうが、

 

 ……《盗賊剣士バンディッド》の職を持ち、動体視力に秀でている自分でも、見切れなかった。

 

 明らかに、こちらを上回る速度で動いていた。

 接近戦を得意とする戦士系の職を持つ部下たちだったというのに、それが何も出来ずに倒れてしまった。

 

 肉体強化の魔法はあるが、それにしてはあまりに早すぎる。

 そんな動きだった。


「な、何だアイツ……!」

「い、今の、杖を振るったのは、魔法なのか……!?」


 突っ込んでいた他の部下たちも、それが分かっているからか、驚きにより、足を止めてしまっていた。


「さて、次だ。――【加速せよ】」


 その足を止めた部下たちを見て、魔術師は再び動きを見せた。

 高速で、一気に距離を詰める歩法を。


「は、はやっ……!」

「ごっ……!?」


 接近するなり、魔術師は杖を振り抜き、足を止めていた二人を殴り倒した。


「残りは、数人か」


 そして、魔術師はこちらを見据えてくる。

 あんな動きをしておきながら息も切らしていない。


「な……なんなんだ……今の……!!」


 そんな彼の目つきと、他の仲間が倒されていく姿を見て、部下の一人が恐怖を覚えたようだ。

 表情に焦りも生まれる。

 そんな部下に対し、野盗の頭は声を上げる。


「馬鹿野郎。落ち着け! 別の奴から狙えばいいだけだろうが!!」

「お、おう! そうだ……! こ、この女を人質に取れば――」


 落ち着きを取り戻した一人が、近場にいたエルフの少女目掛けて走り出した。

 あの華奢な少女も魔術師の仲間だろう。

 

 ……魔術師からは距離がある……。

 

 魔法の誤射の危険性を考えればエルフの少女に接近してしまえば撃てもしない。

 向こうが手出しできない状態で、エルフの少女を押さえつければいい。部下はそう思ったのだろう。

 良い選択肢だ、と、野盗の頭はそう思った。だが、 


「人質? 私が先生の足手まといになるような事をするとお思いですか……?」


 エルフの少女は冷たい声と、冷たい表情を、近寄る部下に向けると、


「がっ……!?」


 一瞬で、双剣を抜き、部下の肩に突き立てた。

 近場にあった樹木に縫い立てるように。更には、


「そのような手で、触れさせる訳がないでしょう。――【電撃刃ボルト・エッジ】」

「っ~~!?」


 双剣から電撃が放たれ、部下は倒れた。

 それを見てから、エルフの少女は、双剣を懐に納め、 


「こっちは済みましたよ、先生」


 こちらを見て声を飛ばした。いや、正確には、己の近くにいた部下を打撃し、昏倒させている魔術師を見て、だ。


「ああ。こっちも終わった。あとは――お前でラストだな」


 いつの間にか、立っているのは自分だけになっていた。 

 

 全員が、うめき声すらあげずに、倒れている。

 あまりに、全てが早すぎる。


「ま、魔術師相手に、こんな、バカなことが……。お、お前らは、一体何者なんだ……!」


 杖を肩に担いながら近寄ってくる魔術師相手に、野盗の頭は直剣を構える。

 しかし、それを見ても、魔術師はなんら怯える様を見せることなく近寄ってきて――

  

「なに、今はただの――冒険者だよ」


 言葉が放たれると同時、男の姿は目の前から掻き消えた。

 そして、次の瞬間、

 

「が……!?」


 強烈な衝撃を顎と腹部に受けた。

 もはやどこから、どの角度で打たれたのかも分からない高速の一撃。

 それを食らった野盗の頭は、

 

「――」

 

 そのまま意識を完全に手放すのだった

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