8話 時代と警告
荷台で休んでいた所に衝撃を感じた俺は、その衝撃を作った原因である野盗たちの前に降り立っていた。そんな俺を見て、
「てめえ、何者だ」
まず、中央の最も体格のいい男が、長剣を抜き放ちながら言った。
話を聞いていた限りでは、彼がボス格らしい。
「杖を持ってるし、魔術師の護衛か?」
「宿場町でマーキングした時にはいなかっただろうし、雇いやがったか」
「まあ、近づいちまえば、問題ないけどよー」
彼の周りにいる野盗も口々にそんなことを言ってくる。
……邪神との戦争時にも、それなりに野蛮な奴らはいたものだが……。
今もいるという事なのだろう。
……無くなる訳がないのだから、当然と言えば当然なんだけどな。
そんな事を思っていると、
「どうしますか、先生」
リンネも荷台から降りて、こちらへ来た。すると、
「マジかよ。美人がいるじゃねえか」
盗賊の中の一人、顔の半分を布で隠した、体格のいい男が笑うような口調でそう言った。
「そうっすね、ボス。しかもエルフとは。生かして売れば価値が高く付きそうだし、儲けものですぜ……!」
「カンパニーの馬車の荷を狙ったら、おまけがついてくるとは。稼げそうでありがてえ話だ」
野盗たちはにやついた笑みを浮かべて、そんな事を言ってくる。
なるほど、人身売買も行う系の、野盗か。
……世界が発展していても悪人の行為そのものは、昔と変わらないのかもなあ。
まあ、仕方がない。
魔獣と同じで、物騒な奴らは出る時は出るものだ。
そう思いながら、俺は彼らに言葉を飛ばす。
「一つ聞く」
「なんだ、ひょろい魔術師さん。助けろって話なら、目と耳と喉と心臓を焼く位して貰わないと無理だぜ?」
「はは、頭の言う通りだ。何せ、もう顔を見て、声を聞いてるんだからな」
「いや、そうは言わない。――ただ、今すぐ街の警護隊に、出頭する気はないか? とは言うだけだ」
こちらの要求を簡潔に述べた。
すると、野盗たちは一瞬、目を丸くして、
「ぶははは!」
まず野党の頭が噴き出すように笑った。そこから部下たちも重ねて笑い声をあげる。
「ははは、随分と上等な命乞いだ! 冗談が上手いな、魔術師さんよ。まあ、一笑いさせてもらったところで――話は終わりだ」
そして野盗たちはひとしきり笑った後、
「いけお前ら。冗談のお礼にいたぶりつつ、綺麗に片付けてやれ」
「うっす!」
武器を抜いて、集団で突っ込んできた。
もはや、俺やロウに対しては殺意しか向けていない。
それを見て、俺は頷く。
「うん、出頭の気はないか。じゃあ仕方ない」
俺は杖を肩に担う。
その動作を見て、先頭にいた三人の野盗が声を上げた。
「はは、今更、魔法の準備か」
「俺たちの接近の方がはええのに、悠長な事だ!」
「そんな奴の魔法が、当たるかよ!」
そのまま、怯むことなく、突進してくる。
どうやら、魔術師相手に対しては自信があるようだが、関係はない。
「――強盗の現行犯ってことでな。俺が街の番屋に突き出そう」
声と共に、魔法を使う事もなく。
一息に杖を振るった。それだけで、
「「「――っ!?」」」
三人の頭と体を撃ち抜き、地面に転がした。
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