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100人の英雄を育てた最強預言者は、冒険者になっても世界中の弟子から慕われてます  作者: あまうい白一
第二章

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3話 伝わる時間


 レンタル馬車を行っている支部は、宿場町の中央から少し離れた場所にあった。

 そこそこ大きな馬小屋に、木造建築の小さな一軒家が付いている。 

 

 一軒家の中には受付カウンターと掲示板が置かれており、掲示板には馬車ごとの大きさや、状態が掛かれた札が掛けられて、今、レンタルできるかも分かるとのことだ。

 

 それは、手紙にも書いてあったし、入って直ぐの説明にも書いてあったので間違いはないらしいが、


「ん? これは、みんな借りられてるってことでいいのか」


 各馬車の札ごとに名前が割り振られているのだが、全ての札の名前の横には『契約済み(contracted)』という文字が刻まれていた。


「あ、はい。すみません、お客さん。何だか今日は人入りが多くで、皆出払ってしまいまして。どれも戻ってくるまで、夜くらいはかかってしまうかと思われます」


 そしてこちらの言葉に対して、カウンターに座っている受付の中年の職員が申し訳なさそうに言ってきた。


「おお、そうなのか。盛況だな」

「すみません、ご案内できなくて」

「ああ、いいんだいいんだ。ちょっと初めてこの宿場町に来たから、どんな感じか様子を見たかっただけなんだよ。交易都市まで歩いていくつもりだしさ」


 その言葉に中年の職員は首を傾げた。


「歩いて……ですか? ここからだと結構掛かると思いますが……宜しいのですか? 普通に歩いたら一日は掛かってしまうかもしれませんよ? その場合は商店で野営装備を買う事をお勧めしますが……」

「ああ、それは持っているから大丈夫だ。それに、歩きの速度は調整できるしな」


 野営用のマジックアイテムは持っているので、適当な場所でキャンプする事は可能だ。

 そもそも自分たちの足であれば、夜が更ける前には確実にたどり着けるし。

 

 着けなくても野営が楽しめると思えば、これまた問題はない。

 

「おお、そうだったのですか。野営用の装備をお持ちということは旅人さんですか?」

「ああ、冒険者をやって、街々を周ってるんだ」


 そう言うと、中年の職員はほほお、と声を上げた。


「おー。カンパニーに所属するのが安定なこのご時世に、旅に出られる冒険者さんは中々見ませんが……お二人ともお若いのに、勇気がおありなんですね」

「はは、ありがとうよ」


 実は二人とも若くはないが、褒めてくれるのはいくつになってもうれしいものだ。

 中年職員の言葉を聞いて、隣にいたリンネがえへへ、と笑っているし。

 

「そうなんですよ。先生は凄い勇気があるんですよ。今回の旅だってそうですし、いやあ、分かってくれる人がいて嬉しいですねえ……!」

「いやまあ、旅は、やりたい事をやっているだけだけどな。……しかし、ここのレンタル馬車は、毎回こんな大人気なのか?」


 手紙には、『繁盛はしているが、まだまだ客入りは甘いので、多くしたい』とか書かれていたのだが。

 実際には大繁盛しているように見える。

 

 だから聞いたら、中年職員は、うーん、と少し考えてから答えてきた。


「そうですね、この宿場町では、繁盛してますね」

「他は違うのか?」

「はい。ここは今、発展しまくっている交易都市の近くにありますので。最近になって、こうなることも増えてきたんです。少し前までは、他の支部と同じくらいで、何時でも一台は空きがある程度の客入りだったんですがね」

「へえ。つまり都市の発展によって需要が増えたのか」

「それだけにお待たせしてしまう方が多くなっているのは心苦しいですが。本部としては馬も人も、今は増員しようとしているそうです。……といっても、直ぐに人材が集まる訳でもないですし、他の宿場町でも、活況な所はあるので。全体的に人不足と言う感じですね」


 なるほど。手紙を貰った時と、タイムラグがあるからこそ、こういった事が知れたのか。

 

「他の宿場町を旅した時に見てみると、近隣都市の発展具合が分かって面白いかもしれませんね、先生」

「そうだな。――いや、面白い事を知れたよ。ありがとう、職員さん」

「いえ、こちらこそ、貴重な冒険者とお話が出来て楽しかったです。また、馬車が必要になりましたらどうぞお越しください」

「ああ。それじゃあ、お邪魔したよ」

「そして、お二人の旅に幸あることを願っています」


 そういって、職員はいい笑顔で礼をしてくる職員と別れて、俺たちは支部の外に出た。 


「うーん、なんというか、職員の雰囲気もいいし、良いカンパニーを作ったものだなあ」

「ですね。とはいえ、先生に教えを受けたら、人間関係を上手く構築することの大事さがよく分かるようになるので、さもありなんって感じはしますし。先生の教えが凄いって事でもあるんですが」

「はは、俺は教えただけで、実際に動いたわけじゃないからな。凄い事が出来てるのは弟子達本人の実力があるからだよ」


 自分は特に何も関係ない。

 

 ……ただ、なんだか弟子が上手くいっている様を見ると、自分のことのように嬉しくなってくるけどな。

 

 昔、面倒を見ていた子達が活躍しているのは、何とも良い事だと思うし。

 それが巡り巡って、自分の旅が面白い事になっているのだ。

 有り難い話だと思う。


「うん。そうだな。じゃあ、旅の幸運も祈られたことだし、ちょっと喫茶店でご飯休憩したら交易都市を目指すか」

「はい! 先生と一緒のご飯も、旅の醍醐味ですから。楽しみです!」


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書店でお見かけの際は、どうぞよろしくお願いします!!


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こちらも面白いので是非、御読み頂ければ嬉しいです!


そして、いつも応援ありがとうございます!

面白いと思って頂けましたら、下のブクマ、評価など、よろしくお願いします!


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