2話 見るところは各所に
開拓都市から南に向かって半日。
俺と、旅の同行者であるエルフの少女――リンネは、日がまだ高いうちに、都市間の宿場町までたどり着いていた。
「馬車を使わなかったから、ちと時間が掛かるかと思ったけれど、地理の変化を確かめながら来るとあっという間だったな」
俺の言葉にリンネは桃色の髪を静かにゆらしながら頷いた。
「ええ。街道もしっかり整備されていましたし、全然疲れませんでしたね」
「弟子たちの幾人かが『移動の重要性に関しては分かっているから、道の整備にも結構力を入れています』って手紙でアピールしてきていたもんな」
ここまでの道は形が整った石が引かれていたり、少なくとも歩きやすいように土がしっかり固められていた。
『昔に比べて歩きやすい所が多いですから、散歩もお勧めです。どうぞ来て!』などとも、届いた手紙には書いてあったっけ、と俺は思い返しつつ、周囲を見る。
宿場町らしく小さめの宿屋と幾つかの商店がある。
時間が遅ければここで休んでいくことも出来るが、空を見ればまだまだ日は高い。まだ、進んでも良いだろう。
「この宿場町を抜けて更に進むと、交易都市だが……さて。ここからはどう進むかな」
「どう進むとは、何か他に方法があるんですか?」
「ああ。弟子の一人が馬車のカンパニーをやってて、色々な宿場町に支部を置いているって言っていたよな?」
「はい。数年前に、『始めました』と手紙に書かれていましたね。馬車をレンタルするシステムの組合だとか。大分繁盛している、とか」
「そうそう。その支部の一つがこの宿場町にもあるっぽくてな。
それは、この宿場町に来る前、開拓都市にいるときに、ユリカから聞いたことだった。
交易都市は、その名の通り交易で使われる事も多い。
その為、都市間を行き来する最中に商売し、所持品が増えることもあるから、レンタル馬車の支部が作られているのだ、と。
無論、俺たちのような一般冒険者でも、金を払えばそこで馬車を借りる事も出来る、とのことだ。
「なるほど。そうだったんですか」
「ああ、俺としては気分的にはまだ、徒歩で行きたい気もあるんだが、リンネが疲れているなら、馬車にしようとは思うけど、どうする?」
一応、二通りの方法があるので聞いてみた。
するとリンネは首をゆっくり横に振り、
「お気遣いありがとうございます。でも勿論、アイゼン先生のお好きな方で! というか、私も全然平気ですしね。ゆっくり先生と歩けるのは、楽しいですし、こうして一緒にいられるだけで元気も湧いてきますから」
満面の笑みでそう言ってきた。
言葉や表情に疲れは一切見られない。
「それに、私だって先生にみっちり鍛えられたんですから。これ程度の距離を歩いた位じゃ疲れませんって」
リンネは己の腕をぽんぽんと叩きアピールもしてくる。
「はは、それもそうか。んじゃまあ、基本徒歩で行こうか。――ただ、馬車に乗らなくてもちょっと、弟子が作った支部ってのをこの目で見てみたいからさ。運営所には寄ってみるか」
「はい! 了解です、先生!」
そうして俺は今日も、リンネと共に、弟子たちや人々の頑張りで、発展した世界を楽しんで周っていく。
本日、6/19に、『最強預言者』の書籍版1巻が発売されます!
書き下ろしも、かなりあります!
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