第33話 言葉の力
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オーガの腕を落とした俺は、しかし、警戒は解かなかった。何故なら、
「グオオオオオオ! ――【イビル・アイスブラスト】!」
片腕を断たれてなおオーガの戦意は失われておらず、腕を再生しながら、もう一方の手を突き出して、氷弾の雨を打ち出してきたからだ。
けれど、腕の一本位でオーガが怯まないのは分かっていた。ゆえに、
「【我が身体よ 素早く 高速で 斬り刻め】――【疾風斬】」
俺は即座に預言魔法を行使した。
言葉の魔力によって強化補助を得た俺の身体は、その通りに動いた。
刀身すらぶれさせる速度で剣を動かし、氷弾を切り落とす。
更には、そこで止まることなく、オーガの方へ踏み込んだ。そして、
「……!?」
氷弾を撃ち込む際に突きだしていた腕を切り裂いた。
「グオオオ……!」
深々と切りつけた腕からは血が噴き出た。
オーガは驚愕の表情を浮かべるが、負傷部位は直ぐに煙をあげて、修復に入ろうとする。が、
「まだだ。――【身体よ 更に加速せよ】」
俺の身体は、言葉通りに、全身の動きを加速させた。
その勢いのまま連撃する。
再び放たれた二度三度の斬撃が、オーガの上半身を深々と切り刻んだ。
「グゥゥオッ!?」
腕から胸にかけて斬撃を受けたオーガは、声を上げながら飛び退いた。
己の弱点である核がある心臓部を攻撃された事による、本能的な危機回避の動きだろう。
それなりに攻撃が効いているようだ。治りきっていない裂傷からもそれは分かった。
「治しきる前にある程度のダメージを重ねて与えれば、再生しきれないみたいだな」
幾ら瘴気で再生能力が上がっていても限界はある。
そして久々に自分の身体に言葉を預けたが、動作の方も問題ない。
言葉通りに機能している。預言魔法で強化した事による損傷も無い。
無理なく、攻撃が出来る。
とはいえ分厚い筋肉だ。先ほどの攻撃では心臓部の核にまでは届いていない。その証拠に、
「……グ……オォォ……!!」
今だオーガの戦意は消えておらず、再生した右手に、再び作り出した氷のメイスを握りしめて、こちらに殺意をぶつけて来ている。
断ち切った左腕も、今では半ばまで再生が終わっている。
手や足を少し切ったくらいでは、止まらないし終わらないだろう。
多少の攻撃では相手を激昂させるだけで、得も無い。だから、
「必要なのは、心臓にある核を打ち抜くに足る、貫通力を持った攻撃だな……」
終わらせるために、やるべき事は見えた。
後は事をこなすのみ。
……今の俺でも、それ位は出来るのだから。
俺は、剣を腰だめに構えて、預言魔法を体に与える。
「【我が身体よ 更に強く 力を溜めよ】」
瞬間、俺の手足から僅かに光が零れだす。
預言魔法による身体強化が発生しているのだ。
その言葉通り、力が溜まっていく。
「……!」
ただ、それを気にする事も無く、ティターンオーガは突っ込んでくる。
こちらの身体を叩き潰そうと、氷のメイスを振り上げて、
「オオオオオ……!!!」
突進の勢いと共に、全力で振り下ろしてきた。
空気とメイスが衝突し、白い煙さえ生まれる様な一撃だ。だが、
「【鋭き斬撃よ 止まることなく 突き進め】……!!」
それが直撃するよりも早く、俺は身体強化と共に一歩を踏み込む。
そこから、放つのは、預言者としてかつて使っていた技だ。
言葉の魔力によって強化し身体と剣を用いて、突進と共に打ち出される一閃の斬撃。
かつて邪神を倒した時にも使った、一つのスキルとして成立したその技は、
「――【絶対切断の宣告】(ドゥームズ・ジャッジメント)」
超高速を持って、目の前にある大気すら断ち切り、輝くような軌跡を描いて、放たれた。
「ォ……!」
その斬撃は勢いのまま、巨躯鬼が振るうメイスと激突し、そして、
「――」
なんら拮抗することもなく切り砕いた。
更にその斬撃はそのまま、持ち手である巨躯鬼の胸元まで届き、砕くように吹き飛ばした。
核ごと身を破壊された巨躯鬼は、
「……!」
声にならない音を吐き出しながら、再生することもなく、崩れ落ちて行った。
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皆さんの応援で、ここまで来ることが出来ました。どうもありがとうございます。
これからも『最強預言者』を応援して頂けますと嬉しいです!




