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100人の英雄を育てた最強預言者は、冒険者になっても世界中の弟子から慕われてます  作者: あまうい白一
第一章

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第29話 助けと焦り



 講堂が崩落し、瓦礫の山と化した場所で、ユリカは大きな声を上げていた


「怪我をされている方は校門近くの広場へ集まって下さい。シェルターがあります! そして、人が埋もれている場所に心当たりある方は、学園の職員に報告をお願いします!」


 彼女の声を聞いて、今しがた他の校舎から逃げてきた者や瓦礫から自力ではい出てきた者は、震えながらも動き出す。

 彼方で行われている戦闘の音が響き、時折怯えて足が止まるが、その度に魔法大学の職員たちがサポートして、広場まで向かわせていた。

 

 職員たち避難誘導はバッチリできている。 

 そして、埋もれている人の情報も集まっていて、既に何人かは救い出せている。

 

 ……職員さんが持ってきた名簿によると、講堂に集まっていたのは四十人……。

 

 講堂には魔法障壁が張り巡らされており、出入りする為には名簿への署名が必要なため、その数に間違いはない。

 現に、三十七名は瓦礫の中から救い出せていた。

 

 ……人に触れると柔らかになる魔法と素材のお陰です……。

 

 瓦礫に触れようとすると、ふよん、とした触感が返ってくる。

 クッションに近い手触りの、光の膜が、瓦礫を覆っているのだ。

 これが、メルが建造時に掛けた魔法の効果なのだろう。

 

 ただ、だからと言って瓦礫の重さが消えているわけではない。

 そこまで魔法は万能に守ってくれるわけじゃない。

 瓦礫が直撃したら衝撃は来るだろうし、頭部に直撃すれば気絶はするだろう。

 埋もれてしまえば、自力で出るのは厳しい。ゆえに、

 

「意識ある方は音か声を出してください!」


 残り三名を探すため、瓦礫の山に向けて歩きながら、ユリカは声を出す。

 けれど、返事はない。

 自力で探さねばならないが、

 

 ……これだけ乱雑としていると、気配を感じようにも、分かりません……!

 

 魔法で気配を探知しようにも、周囲に生物が沢山いるなか、個別で埋もれている人だけを判別するだけの精度を自分は持ち合わせていない。 

 職員にしても、そんな英雄クラスの魔法の使い手はいない。

 

 ……あと、三人。どこにいるのですか……!

 

 埋もれている子たちの声は聞こえない。

 意識を失っているのかもしれないし、怪我をして、声を出せないのかもしれないが、

 

 ……どうすればいいんですの……。


 歯噛みしながら、ユリカは瓦礫をどけていく。

 学生たちを置いていくという選択肢はないのだ。

 けれど、このまま時間を使い過ぎれば、自分達の恩師が危ない。

 

 ……あの魔獣と、学長は、相性が悪いのです……!


 早く助けに行かねばならない。倒せなくても、逃げても良いのだという状況になったと伝えなければいけない。なのに、自分の力が足りない。

 

 学園を卒業して、街一番のカンパニーを作る事が出来て、少しは成長出来ていると思っていたのに。

 

 ……なんて、情けない状況ですの……!

 

 ふがいない状況に涙すら浮かんできた。

 だが、泣いている暇など無いのだ。

 周りに職員はいれども、己の事で手いっぱいで、自分が動かなければ瓦礫の下の子たちを救えないのだから。ひいては、恩師を救えないのだ。

 だから、膝をついて、瓦礫を退かす手は止めない。けれど、

 

「誰か、手を、手を貸してくださいませ……!」


 口からこぼれてしまった。

 弱音とも願望ともつかぬ声を発した。その時だった。


「――手伝いが必要か」


 そんな声が聞こえた。


「え……?」


 振り返って見ればそこには、杖を肩に担った見覚えのある男性が――アイゼンがいたのだった。

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