第24話 出立の朝
開拓都市に来てから数日が経過した。
その間、俺とリンネは街の周辺を歩きまわって観光――もとい冒険をしていた。
近場にあった未開拓地域に隣接している砦を見学したり、その観光ついでに、襲ってきた魔獣を倒したり。
そこで獲得した魔石を錬金カンパニーに売ることで報酬を得たりと、割と開拓都市では充実した日々を過ごせたと思う。
そして、その日の早朝。俺は宿の一階にある喫茶店で、リンネと共に早い朝食を食べながら、地図を眺めていた。
「ふむ。手紙に出てきたポイントも見尽くしたな。……今日の午後にでも、この街を出るか、リンネ」
「ですね先生。この街はかなり満喫しましたし。次はどの街に行きます?」
俺は、この周辺の地形が簡単に書かれた地図を眺める。
この辺りにある大きな街は、北と南に一つずつ、同じ距離で存在する。
北には海と港をもった都市があり、南には小さな森があり、それを抜けると平野がずっと続き、所々に街々があるという感じだ。
「んー……今の時期ならば南を行くのがいいかもな。地図で見た感じ、大都市に行くまでの間、宿場町の間隔も狭くて、旅もしやすいだろうし。リンネは行きたい所とかあるか?」
「私は先生の行きたい所に行きたいですね」
「それは答えになってないが……まあ、それじゃあ、南だな」
沢山の街があるということは、それだけ整備されていて歩きやすいだろうし。
馬車も通っているだろうから、歩くことに飽きたらすぐにそちらに切り替えやすいし。何より、
「南だったら、旅に出るついでに、分校へ挨拶にいけるからな」
「あ、そうですね。メルさんと会われるんです?」
「会えたら、だな。……まあ、忙しい身だろうし、軽く元気そうな姿を見れれば、それでもいいかな、と思うよ」
「先生は気遣い屋さんですねえ。ドミニクさんとか、他のギルドの職業者さんも私に聞いてきてましたよ? アイゼン先生のこと『あんなに強いのに、どうしてあんなに色々と気が回るんだ?』って」
「そんなことを言われていたのか」
こちらとしては、気遣いをしているつもりはないんだけど。
「というか、リンネはなんて答えたんだ?」
「それはもう、アイゼン先生ですから当然です!と。そうしたら、『何となく分かる』と納得してもらえました」
それは答えになってないと思うんだが、本当に納得して貰えたんだろうか。
「まあ、うん。なんにせよ、この街のギルドの人たちと仲良くなれたのなら何よりだな」
「はい。本当に皆さん、よくしてくださいましたからね。旅立ち前に挨拶をしたいところです」
「そうだな。俺もギルドの職員さんとか、この宿を貸してくれたユリカにも挨拶しておきたい所だし。まあ、色々と旅立ちの準備を進めていこうか」
「はい!」




