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100人の英雄を育てた最強預言者は、冒険者になっても世界中の弟子から慕われてます  作者: あまうい白一
第一章

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第20話 預言者、冒険者として一歩成長する

後に残った、血塗れとなった林地帯を見て、俺は目を細めた。


「む……ちょっと選んだ魔法が強過ぎたか」

 

 基本的に預言魔法は、預ける言葉によって強弱が左右される。先ほどの風の刃は、そこまで強い魔法ではなかった。

 だが、魔力強化の分を考えたら、もう少し弱めの預言魔法で良かったかもしれない。

 魔獣の血は魔石の材料、もしくは土地の肥料になる為、特にばら撒いても問題はない。例え瘴気にまみれていても、倒してしまえばそれは変わらない。

 

 ……けれど見てくれは良くないからなあ。

 

 と思っていると、

 

「さ、さっきの上級精霊の竜巻以上に、すげえ、威力だ……!」


 近場にいたドミニクが呆然としながらそんな声を発した。


「Bランクの魔術師でも、早々こんな魔法は打てねえってのに。到底、そこらの精霊術士が覚えているような魔法じゃ、ないぜ……お、オーティスさんは、こんな魔法を一体どこで、どんな教本で覚えたんだ……!」


 ドミニクは若干、震えながら聞いてくる。

 確かにそれなりに強い魔法だから、そういう疑問を抱くのは当然か。 ただ、残念ながらこの魔法を覚えるのに教本を使った事はなく、

 

「今の魔法はずっと前に閃いた物かな。基礎を教えるだけ教えて貰った後、考えまくっていたら案が出たものだからさ。色々試している内に、内なる声が出てきて修得させてくれたというか」


 異界に引きこもって傷を治している間、暇だったから、自分で預言魔法の改良に精を出した。

 その結果が、今の魔法だったりする。

 

 預言魔法の基礎技術ははるか昔に亡くなった預言者から教わったり、精霊太上皇が収集したスキルの本を読みまくり、身に付けたものである。


 けれども今は、そこから改良を重ねたため、大分アレンジが入っているのだ。

  

「そ、そうか。オーティスさんは、やっぱりとんでもない人だな。スキルや魔法は普通教えられるもので、自分で改良するとか、Aランクの職業者でも中々やらないってのに。……もしかして市井の達人とか、そういう類の人に見えてきたぜ」

「いやまあ、達人というよりはギルドに行くまでの間に時間が結構あったってだけだと思うぞ」


 魔法を自分で閃いて覚える、という行為は、魔法やスキルの修得方法において例外である。

 

 ……けど、数日ぶっ通して延々と考えられる時間を確保できれば、それなりに閃けたりするんだよな。

 

 そういう時間を取る事は現実的に難しいから、例外なんだろうけれども。 


「ともあれ、だ。俺の事は置いておくとして。依頼された仕事、これで成功で良いんだよな?」

「え? ――あ、ああ。そうだな。大成功だな」


 そんな風にドミニクと話していると、


「おーい! 精霊術士のみなさーん!」


 俺たちの背後。開けた農牧地の方から、大柄の男性が走ってきた。

 誰だろうと思ってみていると、彼はこちらにくるなりペコリと頭を下げてきた。


「この度は、ウチの牧場と農地を助けて頂き、ありがとうございました!」

「ああ。貴方がここの地主さんなのか。ギルドにこの異常を報告した、とかカティアさんは言ってたけど」

「はい。ギルドと学園の方に報告をさせて貰って対処をお願いしたんです。本当に自分ではどうしようもなかったので」

「へえ、二か所に報告を出していたのか」

「お金は掛かりますがそっちの方が確実ですから。しかも精霊だけでなく、あの魔獣の大群といい、貴方達がいなかったらと思うと恐ろしい事になっていましたから、本当に良かったです……」


 などと俺と地主が話していると、


「……っ」


 隣に立っていたドミニクがふらつき、がくりと体を倒した。

 地面に倒れそうになるが、その前に、


「――っと」


 俺が肩を貸す形で彼の体を支えた。

 先ほどから微妙に足元がおぼつかなかったから、動向に気を付けていたのだが、それが功を奏したらしい。


「大丈夫か?」


 見れば顔が青い。

 明らかに疲労の色が見て取れた。


「す、すまねえ、オーティスさん。精霊と魔獣と連戦で、魔力を使い過ぎたみたいだ。アンタたちはピンピンしてるのに情けねえことだが」

「気にするな。疲労度ってのは人によって違うもんだからな」


 とはいえ、これは早く街に戻るか、しっかり休ませた方がよさそうだな。と、俺がドミニクの顔を見ながら持っていると、


「そうだ。皆さん、でしたら、ウチの農作物を食べて頂けませんか?」

「農作物?」

「はい! 魔力を回復させる作用もある名物なので、それも振る舞わせて頂きたいです! 皆様の回復にも役に立つかと思いますし」

「ほう、そんな名物があったのか」


 そういえば、農業に詳しい弟子が魔力を回復させる作物を、開拓都市で作り上げたとか手紙に書いてきたけれども。それだろうか。


「――なら、是非食べたいところだな。皆も、その方が回復できるだろうし」


 俺の言葉にリンネやドミニクもこくりと頷く。

 それを見て地主は嬉しそうにほほ笑んだ。


「おお、よかった! では、お疲れでしょうし、この近くに私の家があるので、そこで休みつつご賞味ください! ささ、こちらへ――」


 そうして、精霊術士の冒険者として感謝されるのは以前は無かった経験だなあ、と思いながら、俺は皆と共に地主の家へと招かれていく。

 冒険者として初めての依頼はしっかり成功出来たようで何よりだ、というちょっとした満足感を抱きながら。

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