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100人の英雄を育てた最強預言者は、冒険者になっても世界中の弟子から慕われてます  作者: あまうい白一
第一章

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第16話 預言者の戦い方と精霊との付き合い方


「ドミニク、大丈夫か?」


 俺は風の壁を切り裂いた杖を軽く振った後、背後で今だへたりこむドミニクに声を掛けた。

 彼は呆然としつつも、

 

「あ、ああ……」


 と小さく頷く。

 どうやら大きな負傷をしてもいないようだし、良かったと思っていると、


「お、オーティスさん……。今のは一体、何をしたんだ……!?」


 ドミニクは、俺の右手にある淡く光る杖を見ながら、そんな事を聞いてきた。


「うん? ああ、ちょっとした魔法を使っただけだよ」


 預言魔法により、自分の装備に『言葉を預けて』、強風の一撃を割れるモノに変化させたのだ。

 対象を定めて一旦言葉を預けてしまえば、その通りに変異させられる。

 預言者にとっては軽く使える魔法だ。

 

 ……まあ、そう言っても伝わらんだろうし、この騒ぎの中だからな。

 

 こんな時に解説しても要らん知識が増えて邪魔になるだろうし、余計に混乱させるだけになる。預言者がいない現状の世界だと尚更だ。故に、黙っておくが吉だし、


「何よりも、まずこの騒ぎを終わらせてから、だな」


 そう言いながら、俺は再び杖を振るった。

 それだけで、

 

「――?」

 

 上級精霊が首を傾げながら、再び放っていた風の壁を切り裂ける。

 

「さて、どんどん行こう」

 

 俺はそのまま、壁を切り裂いては進んでいく。

 

「す、すげえ。杖だけで切り裂いていってる……。しかも、身のこなしも、ありゃあ、近接戦闘に慣れてるもんだぞ……!」


 背後、すぐ近くでそう言うドミニクに反応したのは、風の壁の影響で飛来してくるものを、短双剣を振って叩き落としているリンネだ。


「それはそうですよ、ドミニクさん。アイゼン先生は格闘術の練度も高いですから。あれくらいの動きは出来ます」

「そ、そうなのか。というか話しながら防御してるリンネちゃんもすげえが――でも、あそこからは、無理だ……」

「無理って、何がですか?」

「この攻撃を切り抜けた技術は確かに凄い。――だが、あの本体はどうにもできないぞ。上級精霊は、Aランクの職業者でようやく戦えるレベルなんだから……!」


 ドミニクは慌てたような声で言ってくる。けれど、

 

「いや、戦う必要はないだろう、ドミニク」

「え?」

「ドミニクが言ったんだろう。対話を試みろって」


 そう。俺は別に戦う気はない。

 最初に言われたように、言葉の通じる距離に行こうとしているだけだ。

 

 ……この風の中では言葉も聞こえづらいだろうしな。


 だからこうして、風の壁を切って近づいているのだ。


「……そ、それは、それは下級の場合、安全に出来るからで……上級精霊は危険すぎる……! もしも正気じゃなかったら、正気でも機嫌を損ねたら……怪我じゃ済まない……」

「ま、その時はその時で。とりあえず、やってみるさ」


 精霊は意味もなく暴れたりしないし、対話するのも重要だ。

 そう思って、俺は風の壁を切り、上級精霊まで残り一メートルまで近づいた。そして、


「――やあ、ちょっといいかい?」


 声を発した。すると、上級精霊は目を擦り、パチリと開いた。その上、

 

「お、まえ、は」


 言葉を発してきた。

 思った通りだ。

 言葉が通じている。

 

 ……この上級精霊は、正気だよな。


 明らかに、目に意思があったし。


「も、しか、して……」


 と、何度か言葉を放った後で、


「――」


 無言になった。


「く……機嫌を損ねちまったか……。もしもの時は、俺が壁になって新人を逃がすくらいは……」


 と、背後でドミニクが言ってくる。

 何やら有り難い事を言ってくれているが、しかしその必要はない、と俺には分かっていた。何故なら、

 

『あー、もう! 人間さんの言葉、面倒だわ! こっちで話さなきゃやってらんない!』


 今、普通に、精霊の言葉で話しかけてきたからだ。そして――、


『というか、アナタ、預言者アイゼンよね!? あの、精霊女王を守りながら邪神と魔剣王を倒したり、現代の精霊王に魔法を教えたっていう!」

『え? ああ。そうだけど……』

「きゃー、凄い凄い! こんなところで会えるなんて! アタシ、アナタのファンなのよ!!」


 思っていた以上に、この精霊はフレンドリーで、話が通じるようであった。


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