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100人の英雄を育てた最強預言者は、冒険者になっても世界中の弟子から慕われてます  作者: あまうい白一
第一章

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第15話 上級精霊の力


「こんなのありかよ……! 確かに下級以上の精霊だが……こんなの難度Dどころじゃねえ! 少なくとも難度B以上だ!」


 目の前で少女のような人型に変化した上級精霊を見ながら、ドミニクは言葉を零した。


 ああして、体の構造を変えて休眠する精霊というのは存在する。

 恐らく、あの上級精霊も休眠状態だったのだろう。

 

 その状態では発せられる魔力も抑えられるため、斥候はそれを見て、下級以上だと判断したのだろう。

 ならば斥候は勿論、依頼を出したギルドも責められない。けれど、


 ……これはやべえ。

 

 上級精霊は、Bランク以上の魔力を持った魔術師で、ようやく相手になれる。

 戦闘して勝利をしたいのであればAランクを連れてこなければ、まず無理と言っていい。そんなレベルの力を持った強者だ。

 

 ……Cランク以下はとにかく戦うな、逃げろと教わってきた存在だ。

 

 そして本来は、霊山や魔力の豊富な泉など、人里離れた場所にしか出てこないような存在でもある。十年来の精霊術士である自分でも、数えるほど見たことがないモノだが、

 

 ……目の前にいるのは、幻覚じゃねえ。

 

 確かにいる。その上、

 

「くそ……こっちを向きがった!」


 その顔と目がくるっと自分達を見た。

 確実にこちらに気付いている。

 しかも近づいてきている。


 敵意があるのかは分からないが、その身に濃密な魔力と風を纏った状態で、だ。


 ……あれは、戦闘体勢、か……?!


 少なくとも、これは背を向けるのは危険だ。だとしたらやるべき事は、いつ戦闘が始まっても良いように、準備する事。

 そして、最悪の場合を考えて、


 ……後ろの、優秀で未来ある二人を逃がすための、準備をする……

 

 ギルドに雇われた職業者として、それは当然の判断だ。

 無論、自分の命をみすみす捨てる気もないが。

 

 ……まずは、精霊術で防備を固める……。

 

 そう思い、手に魔力を集め、何時でも精霊を呼び出せるようにしようとした。

 その瞬間、精霊の手がピクリと動き――


「――!」 


 精霊から放たれた、緑色の風で出来た壁が、ぶつかってきた。


「――ごふっ……!?」


 石の壁で思い切り全身を殴られたかのような衝撃がきて、ドミニクの体は吹っ飛んだ。

 そのまま、背後にあった木に激突する。


「か、は……魔力を乗せた風の打撃か……!」


 一瞬だ。僅か一瞬で、数メートルを吹っ飛ばされた。

 手がほんのわずかに動いただけで、こんな攻撃を放てるなんて。

 

 ……く……これが上級精霊の力、か……。

 

 幸いなことに吹き飛ばされたのは先頭にいた自分だけで、アイゼン達は無事だ。 

 

 ……足が無事ならば、オレが引き付ければ、どうにか逃げられるはずだ……!

 

 そう思い、逃げろ、と叫ぼうとした。

 が、それよりも早く、

 

「――」


 再び、上級精霊の手が動いた。

 そして、精霊の前方に分厚い壁が作られる。

 

 それがまたこちらを襲いに来ようとしていた。

 

 ……まずい……。

  

 回避をしなければ、ただではすまない。

 更に良くないのは、この角度で食らえば竜巻の外に弾きだされ、ここに新人二人を残すことになる。

 そうなれば、彼らの命も危ない。避けなければ。だが、

 

 ……っ……体が動かん……!

 

 先ほどの打撃で、体が痺れている。

 避けられない。

 

 そう直感した、刹那。

 ドミニクは、それを見た。


「言葉を預ける。――【杖よ 断ち割れ】」


 アイゼンが、その風の壁を淡く光る杖で切り裂く姿を。


あと少しで3万ポイントの所まで来ました!

ブクマや評価をして下さった皆様の応援のお陰です!


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