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100人の英雄を育てた最強預言者は、冒険者になっても世界中の弟子から慕われてます  作者: あまうい白一
第一章

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第14話 最強預言者、技能の一部を発露する

 街を出て歩く事数分。


「その先っちょに薄い本が付いた長い杖がオーティスさんの武装か。魔術師なのに魔石付きの双短剣を装備しているリンネちゃんといい、二人とも、面白い装備してるなあ」

「そうか? 俺のもリンネのも、良い魔法の触媒だと思うけど」

「まあな。でも、精霊術士は精霊と契約して彼らに頑張って貰う事が多いから、中々そういった大柄な武器を持たないんだよ。オレなんか、このポーチだけだし」

「ああ……確かに。精霊術士ってあんまり武器を持たないのか」

「そうそう。リンネちゃんも、なんか魔術師系ってよりは近接戦闘系の職業みたいだしな。だから面白いコンビだと思った訳さ」

「なるほどなあ」


 そんな他愛無い、お互いの装備についての世間話をしている内に。

 俺たちは、依頼された地点――農牧地の街道から、林地を繋ぐ地点へとたどり着いた。そして、

「あそこにあるのが、件の竜巻だな」


 直ぐに俺たちは、目標物を見つける事が出来た。

 緑色の竜巻だ。ただ、


「うわあ、大きいですねえ。緑色の柱が道を全てふさいじゃってるみたいです」

「ああ、竜巻っていうよりは、小型の嵐だな、これ」


 そう。報告では竜巻とされていたが、リンネの言う通り、範囲がとても広い。

 

 半径数十メートルは余裕で越える緑色の渦巻く風が、そこに立ち塞がっているのだ。

 それなりに離れている地点にいる今ですら、風の圧を感じるし。

 

 ……確かにこれじゃあ、道は通れんし、林地の向こうにもいけんな。

 

 小石なども巻き込んで回っているし、近寄るだけでも危なさそうだ。


「ギルドの斥候曰く、この中心に精霊らしき姿を確認したってことだったな、ドミニク」

「ああ、これだけの広範囲だと、しばらく歩かないといけないっぽいから。――オレが先頭を行って、二人の道を作ろうと思う」


 ドミニクはそう言いながらポーチから一個の青色の光球――精霊を出した。そして、魔力の餌を食べさせた後、


「【精霊術:小規模防御膜リトルベール】」


 言葉を放った。すると、光球は青い光の壁となって、ドミニクの前に漂い始めた。そのあとで、うっすらとした膜を彼の周囲数メートルに展開した。


「これで、ある程度の強風は無視して進める。俺の後ろについてくれれば、この防御膜が守ってくれる。だからオーティスさん達は俺の後ろで力を温存して、中心にいる精霊が対話が可能そうだったら試みてくれ」

「了解。――っと、その前に【大地と大気よ、声をくれ】」

「……? なんだ? 防護魔法か何かを掛けたのか?」

「まあ、似たようなものだ。行こうぜ、ドミニク」

「お、おお。じゃあ、行くぞ、お二人さん」


 青い壁を前方に浮かせたドミニクは、そう言って緑色の風柱に入っていく。

 その後を、俺たちも付いていく。


 防御膜のお陰かさしたる抵抗もなく、俺たちは風の柱の中へ入った。

 中は、砂埃が舞っていて、割と見通しが悪い空間だ。

 

 ただ、ドミニクが作ってくれた防御膜は、砂を完全に防いでくれているので、来るのはそこそこ歩き辛い強風のみ、といった具合だった。

  

「おお、便利だな、この精霊の防御膜。砂が目に入らないや」

「褒めてくれてありがとうよ、オーティスさん。ただ、防げるのは砂が限界だ。あんまりデカい物や鋭くて重さがあるモノは防げないから。それは各自で気を付けてくれ」


 ドミニクはそう言ってくる。

 確かに防御膜は触れてみると柔い反発力があるが、それだけで力を入れたら指で突き破れそうなぐらいだ。

 彼の言う通り、耐久力はそこまでではないのだろう。だとしたら、


「――ドミニク、とりあえず、今すぐしゃがんでくれ」

「え……分かったけど、何故だ?」


 ドミニクは俺の言った通りにしゃがみながら聞いてくる。

 だが、その答えはすぐに分かる。


「今、頭上右上から杭が飛んでくるからだな」

「――ッ!?」


 俺が言った瞬間、

 

 ――ゴウッ!

 

 っと、先ほどまでドミニクの頭のあった場所に、極太の杭が飛来した。

 そして上から降ってきたその杭は、ドミニクの一メートルほど横に突き立った。


「あっ……あ、あぶねえ」


 地面につき立った杭を見てドミニクは、地面に膝をつき息を呑んだ。

 

「はあ……はあ……言って、くれなかったら串刺しだった……」


 顔にドッと油のような汗を浮かべた彼は、それを拭いながら俺を見る。

 

「今の、未来予知は、なんだ? どうして気付けたんだ?」

「え? 予知とかそういうのじゃないさ。ただ、周辺の精霊から声を聞いているからな。状況把握は出来ただけだし」


 俺は常に、大地や大気、舞っている砂からも言葉を預かっている。

 それは竜巻の中でも変わらない。


 大地や大気から言葉を聞いていれば、自分達の身の回りを知る事は容易だし。彼らの情報は正確だ。

 聞くだけで、物体の落下予測はほぼ完ぺきに出来る。


「え……と。オーティスさん、この風の中で、精霊の言葉を聞き取ってるのか……!?」

「ああ。位置関係とか、目で見ているより楽だからな」

「この騒音の中で? ……すげえ集中力だな、オーティスさん」

「うん? 慣れれば結構楽だぞ?」


 情報が常に入って来るので、頭を動かして考え続けているだけで良い。 

 適度に聞き流していれば、集中力も要らないし。頭の隅で聞くところと考えるところを作っておけばそれだけでいいんだし。


「それが難しそうに見えるんだがな。……いやはや、新人とは思いたくない程に、本当に優秀だ……」


 苦笑しながら、ドミニクは周囲を見回す。


「……」

 

 そして、数秒考えた後で、その後で再び俺を見た。

 

「あのさ、オーティスさん。もう、立ち上がっても大丈夫か?」

「ああ、もう平気だ」

「そうか。いや、何というか頼りっぱなしで悪いけど、本当にありがてえ人だ……」

 

 しみじみと言いながらドミニクは立ち上がって、再び進み始める。

 

 そこから風の中を行く事数十秒、


「――っと、見えてきたな」


 俺たちの数歩先を進むドミニクが指を差した。そこには、卵状の物体がプカプカと浮かんでいた。

 

「あれが、今回の竜巻を起こしている精霊だな」


 俺の言葉に、ドミニクも頷く。


「ああ。だが、あれだと下級か中級かも分からんし、どんな奴なのかも分からない。オーティスさんは、あいつが何を言ってるか聞き取れてるか?」

「いや、声は発してないな」

「分かった。なら、もうちょっと接近してみよう」

「あいよ」


 俺の返事を受けた後、ドミニクが前に数歩進んでいく。そしてドミニクと球体との距離が残り十メートル程になった時――


「さて、もうちょっと行って観察すれば、少なくとも精霊の種類くらいは分かる――って、え……?」


 ドミニクの言葉の最中、目の前の球体が動いた。

 正確には、変形というべきか。

 球体だったものが、割れて開いて、別の形を取っていく。


 少女のような人型に。

 

「おい待て……待てよ……!? この迸る魔力量に、複雑な人型を取る個体だと……!」


 それを見て、ドミニクは、声を震わせた。

 

「――ありゃあ、上級精霊だ……!」


 そして、そのまま数歩後ずさりしながら、絞るように声を発した。


「Bランク以上じゃないと勝負にもならねえ、やべえ代物だぞ……!!」


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