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100人の英雄を育てた最強預言者は、冒険者になっても世界中の弟子から慕われてます  作者: あまうい白一
第一章

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第13話 預言者、ベテラン精霊術士と再会する

 俺とリンネがカティアに案内されて向かったのは、ギルドの応接間だ。そして、


「あちらにいらっしゃるのが、今回の依頼をしたもう一方になります」


 中に入ると、そこには既に一人の男性がいた。

 それは俺たちの、知っている顔で、

 

「ドミニクさん?」

「あれ、オーティスさん達じゃねえか? つーか、前も言ったけど、俺に『さん』は付けなくて良いって」


 そう、昨日精霊術について教えてくれたドミニクだった。

 彼はこちらを見るなり少し驚いた顔になりながらも、

 

「しかし……ふむ? カティアちゃんに連れられてやって来たってことは、今回の風の精霊を鎮めるっていう依頼を手伝ってくれるっていうのは、オーティスさん達なのか」

「みたい、だな」

「そうかそうか! いきなりcランクコンビと一緒に働けるなんて、光栄だぜ!」


 ドミニクは微笑と共に、俺たちに握手を求めてくる。

 俺としても、既に顔見知りである同業者と仕事が出来るというのは有り難い事ではある。

 

「俺の精霊術士としてのスキルは、精霊の言葉が分かるってくらいしかないけれど、今回の依頼ではよろしく頼む、ドミニク」

「こちらこそよろしくだ。というかむしろ、言葉が分かる、ってのは何より心強いと思うぜオーティスさん。それに加えて、cランクの魔術師も来てくれるんだからな」


 ドミニクは俺とリンネを見ながらそんな事を言ってくる。

 昨日の一件で、そこはかとなく実力を信用されているようだ。


「結構厄介な依頼だって思ってたけど……急に希望が湧いてくる位だぜ」

「厄介な依頼……か。そうだ、カティアさん。依頼内容の詳細を教えてくれるか? まだ、概要しか聞いてなかったし」

「あっ、そうですね。ええと、では改めて説明させて頂きます」


 カティアは応接間の席についた俺たちの前に一枚の地図を広げた。

 開拓の都市から、魔法大学分校までの道のりが描かれた大きな地図だ。その中で、彼女は一か所、都市と分校の中間地点を指差した。地図上には『果樹園入り口』と書かれた場所だ。


「この農牧地と果樹園の間にある林地、そこにいる風の精霊らしきモノを、どうにか大人しくする、というものが今回の依頼になります。手段は討伐でも撃退でも、何でも構いません」


 依頼の概要を聞いて、まずリンネが口を開いた。

 

「なるほどぉ……。精霊のランクはどんなものなんです?」


 精霊には、下級中級上級、といったようなランクがある。それによって大雑把な強弱が分かる。だからリンネは尋ねたのであろう。


「それが、常にその場所に緑色の竜巻が起こっていて視認が出来ていないのですよね。最低でも下級以上ではある、というのが観察して報告を下さっている《斥候》さんの評価でした」


 竜巻を起こせる時点で弱い精霊ではないのは確かだ。

 けれど、気になった事がひとつある。それは、


「カティアさん。なんでまた、そんな竜巻が巻き起こってるんだ? 原因とかあったりするのか?」


 精霊は意味もなく暴れたりはしない。

 

 魔力を食い過ぎて暴走しているとか、ヒトが何か怒らせる真似をしたとか。そういった理由で事を起こすことはあるけれど。

 

 ……暴れるのであればそこに何か理由がある筈だ。

 

 そう思って聞いたのだが、

 

「そこも不明でした。斥候さんが農牧地の地主や、この辺りを通り道にしているひと達から話を聞いたそうなのですけども。皆さん『急にこうなった』と仰っているものですから」

「つまり……原因も不明と」

「はい。ですから、今回の依頼は精霊の鎮静化、というものですが……発生した原因も知っておきたいので。そこの調査も出来る範囲でお願いしたく思います。勿論、これは追加の仕事なので、入手された情報分の報酬は払わせて頂きますが」


 なるほど。となるとやる事は、とりあえずは二つか。

 

「精霊の騒動の原因究明と鎮静化、か」

「そうだなオーティスさん。……依頼の難易度的にはD以上、ってところか。結構高めだぜ」


 グローバルギルドが出している依頼には難易度付けがしてある。出来る事なら、その難易度以上のランクの職業者が挑むべき、という目安の物だ。

 それはギルドに依頼を出したカンパニーが付けたり、ギルドにいる判別員の協議を持って決められるのだが、

 

「これが、難度D扱いなのか?」


 カティアに聞くと、彼女は申し訳なさそうな表情で頷いた。

 

「そうなんです。物理が効き辛い精霊が相手だということと、暴れる原因が不明だという事で……。今回は一応、依頼者の意向で支給品として身体回復用のポーションをお渡しすることになっていますが、それでも高難易度です」

「だよなあ。Dといったら上から数えた方が早い難度の仕事だし。オレだって十年間、精霊術士をやってて、力を経験で補えるからこの依頼を受けたが……かなり緊張感ある仕事だぜ」


 ドミニクもそう言う。

 ただ、彼はその後で俺やリンネを見て、軽く目を見開いた。

 

「……でも、オーティスさん達はなんか緊張してないというか、凄く自然体だな」

「そうか?」

「ああ、Cランクだから当然っちゃ当然だけど、それでいて、慢心も感じないっていうか……今まで、いきなりCランク判定を貰った奴らを何度も見てきたけどさ。そういう奴らが難度Dの依頼を受けると大抵、天狗になってたり、傲慢な態度をちっとは匂わせるもんだが、それもないし」

「え? いや、慢心をする必要がないだろう?」


 正直、精霊に対して物理が効き辛いのは当然だし。

 原因が不明なのに攻撃してくるというのも、邪神一派との戦闘だと基本的にいつもの事だったから、そこまで緊張するような要素はない。だからといって、驕る意味はない。

 職業のランク判定なんて目安でしかないし、依頼の難易度だって、同じだ。

 

「難しいってドミニク達が言ってるんだからさ。気を抜かずに、やれる事はやっていこう、と思うよ」


 難度が高い、というのであれば、気を抜かずにやるべきだし。

 何より冒険者としての初仕事だ。尚更、注意を払ってやっていくべきだろうと思っている。それはリンネも同じなようで、

 

「私もアイゼン先生と同じように、気を引き締めていきますよ。余裕を持つのはいいけど、油断はしないようにっていつも言われてきましたし!」


 と、強い意思を持った瞳で言ってくる。

 そんな彼女と俺の顔を見て、カティアとドミニクは驚きの表情を取った後、笑みを浮かべた。


「何といいますか、お二人からは、傲りも感じられませんし、安心感がにじみ出ている気がします」

「はは、そうだな。二人からは新人とは思えない程の度胸と、力をビンビンに感じるぜ。しかもそれだけの魔力を持っておきながら油断してる感じも一切ないし、普通の『優秀な新人』とは違うわ。……本当に、アンタ達と組めてうれしいよ」


 二人はそう言ってくる。俺たちは冒険者として新人なのだから、この位注意するのは当然だと思うのだけども。


「そう言って貰えるのは何よりだ。……それじゃあギルドから支給品を受け取ったら、現場へ行こうか。精霊の調査と、暴走を鎮めにさ」

「はい、先生!」

「おうよ、オーティスさん」

「皆さま、どうかお気を付けて、いってらっしゃいませ……!」


 そうして、ギルドからポーションを受け取り、準備を整えた俺たちは。カティアから見送りを受けながら精霊が暴れているという現場に歩きだしていく。

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