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100人の英雄を育てた最強預言者は、冒険者になっても世界中の弟子から慕われてます  作者: あまうい白一
第一章

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第12話 最強預言者、冒険者として初めての依頼


 錬金術師のアトリエで朝食を済ませてから宿を出た俺たちは、ひとまず街をぐるりと周って『冒険』(観光)した後、高台に上がった。


 錬金術師のアトリエの屋上だ。

 

 街や周囲を見渡せる場所はないか、とアトリエの職員に聞いたら、屋上を開放してくれた。ユリカの許可があっての特例事項とのことだ。

 あとでお礼を言っておこう、と思いながら俺は景色を見渡す。

 

「わあ、綺麗ですねえ」

「うん。のどかで良い景色だ」


 開拓の都市、という名の通り、荒れ地や森を開拓して作られた都市であるからこそ、とても緑豊かな光景が広がっていた。

  

「えっと、魔法大学分校があるのは向こうか」


 見回す中、俺は南の方角を見た。

 街からかなり離れた場所に、真っ白な外壁を持つ背の高い建物が見えた


 魔法を学ぶ場所は基本的に郊外や、都市から少し離れた場所に置かれる事が多い。

 魔法の実験をする時に、それなりに敷地面積がいるからだ。ただ、それ故に、


「こっからでも見える辺り、結構でかいんだな」

「本当ですね。途中に農牧地や小規模の住宅地もあるので、かなり距離もありますが、それでも建造物がしっかり見えますね」


 校舎らしき建物の向こうには、森林地帯があるが、そこに生えている木々と比べても、明らかに大きいものだ。

 分校といっても、かなりの大きさを誇るらしい。

 

「あそこに、メルさんがいらっしゃるんでしたっけ」


 分校の建物を見ているリンネは楽しいのか、声を僅かに弾ませながら言ってくる。


「ああ、君も何度も手紙で見たと思うが、優秀な魔女でな。学長として、頑張ってるらしいぞ」


 弟子として面倒を見ていた時から、長時間にわたって魔法を使う事が出来たし頭も良かった。火力がないのが欠点で、それは最後まで直らなかったけれども、そこを差し置いても良い魔女だと思う。


「あとで君の事も紹介しないとなあ」

 

 そういうと、リンネは目をぱちくりとさせた。


「え? そんな風に私に時間を使わなくても大丈夫ですよ? 私の名前は知られていなくても、先生に新しく助手といいますか、弟子が出来たのは皆さん知っているでしょうし」

「まあ、新しく弟子が出来た、までは話したからな」


 新たな弟子が出来た、という手紙は送った事はある。

 しかし具体的な紹介まではしていない。

 

「この機会に顔合わせしておくといい。付き合いも長くなるだろうし、優秀な人と繋がりは持っておいた方が、何をするにしても損にはならないんだからさ」


 そういうとリンネは、こちらの顔を見上げて、嬉しそうに頷いた


「アイゼン先生は、私の事を考えて下さってるんですね……。そういう事なら……ありがたく紹介を受けさせて貰います」

「ああ、是非そうしてくれ」


 などという事を話していると、街の中央から鐘の音が響いた。音の方向を見ればグローバルギルドの最上部で小さな鐘を鳴らしている人がいる。

 

「これは……正午の鐘か?」

「みたいですね。開拓の都市では、十二時になると鐘が鳴るっていうのは手紙にもありましたし」

 俺は自分が異界から持ち出してきたアイテムの一つである、時計を見やる。

 確かに、もう昼時だ。

 

「ふむ……街を巡っている内に結構時間を使ったんだな」


 広い街だから、歩いているとあっという間に時間が過ぎていくらしい。


「ともあれ昼飯を食う時間帯だが……今回はギルドで取るか。あそこの料理、結構美味しかったし」

「そうですね。開拓の都市のギルドでしか食べられない料理とかもありましたし」

 

 土地柄で名物や食べられる物も変わるのだから、この街を出る前に食べておきたい。

 そう思いながら俺たちはギルドへと向かうのだった

 

 

 昼過ぎにギルドにやってきた俺は、リンネと共に併設された酒場で昼食を取っていた。


「この果物のジュース、美味いな」

「開拓都市の名物だそうですね。こっちのお肉もそうだって言ってましたが」


 酒場の店主に開拓の都市のおススメを聞き、飲み食いしたのだが、どれも本当に美味かった。

 というか、素材そのものが美味かった。


 ……何というか、この街に来てよかったと感じるよなあ。

 

 まだ旅をして一つ目の街だけれども、そう思えた。旅というのは、そういう所でも楽しめそうだ、なんて思いながら食後のお茶を飲んでいると、


「――あ! やっぱりアイゼンさん達でしたか!」


 俺たちの隣に一人の女性が小走りでやって来た。


「良かった……まだこの街にいてくれたんですね」

「君は……昨日の受付のカティアさん?」

 

 安堵の表情を浮かべるその顔は見た事がある。

 先日、こちらの対応をしてくれたカティアだ。


「はい。カティアです。一日ぶりですねアイゼンさん」

「ああ、一日ぶりだけど、どうしたんだ?」

「いえ、向こうのカウンターからちょうど後姿が見えまして、駆けつけてきたんです。……ちょっとアイゼンさん達に手伝って欲しい事があって……」

「俺たちに手伝ってほしい事……というと、何かの依頼か?」


 冒険者となった職業者に物を頼むなんて、それ位だろうか。そう思って聞くとカティアはこくりと頷いた。


「実は、魔法大学と街の間にある農牧地で風の精霊が暴れているらしく。その対処をする必要があるんですが……人手が全然足りない状態でして。でも、ご存知かもしれませんが、精霊は魔術系統か、精霊術士系統の職業でないと対処できない存在なんですよね……だから手伝ってほしいんです……!」


 精霊の種類にもよるが、剣で切りかかっても、殴打しようとも効果がない類の精霊は少なくない。今回もそのケースなのだろうが、


「そんなに緊急的に対処を求めてくるほどには、大変な事態になってるんだな」

「はい。農牧地や、近くの果樹園も巻き起こる竜巻で荒らされそうとのことで。それと、魔法大学に向かう学生たちも何度か吹き飛ばされていまして。怪我はないのですが、このまま行くと、危険にさらされそう、とのことで」

「なるほど。それは……よろしくないかもなあ」


 魔法大学との間の農牧地では、良い作物が取れている、と手紙にはあった。

 また、農牧地近くの林には果樹園も出来ていて、美味い果実も食べられると。

 

 ……今回、この食堂で食べたものは、まさにそれらだ。

  

 荒れ地を開拓し、肥沃な地を傍に置く『開拓の都市』だからこそ、美味い農作物に、酪農品が名物になるのだと、手紙には書いてあった。

 それ故に食べようと思ったのだ。

  

 ……そういえば、そんな手紙を出してきたのもメルだったな。

 

 良い子達が自分の元に学びに来て、優秀になってくれていると。楽しそうな文章で書いていた。

 彼女が自慢としているその子たちや、折角の名物が傷つけられるのは宜しくない。だから、


「カティアさん。その手伝いっていうのは、俺達でも出来る事、なのか?」

「はい! Cランクのアイゼン様とリンネ様だからこそ、頼ませて頂いている依頼、という事になります!」


 なるほど。それならば、問題はない。


「じゃあ、その依頼とやら、是非やらせてくれカティアさん」

「あ、私も。先生のお手伝いしますよ!」

「ありがとうございます、お二人とも! それでは、どうぞこちらへ。今回の依頼の説明と、同行される方をさせて頂きます!」


 精霊術士と魔術師の冒険者コンビとして、初めて仕事の依頼をされた俺たちは、そのまま彼女に連れられてギルドの奥へと足を進めていくのだった。


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