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100人の英雄を育てた最強預言者は、冒険者になっても世界中の弟子から慕われてます  作者: あまうい白一
第一章

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第9話 預言者の力は、思った以上に感謝されている模様

「ユリカ社長。お疲れ様です。そちらの方々が、仰られていた大事なお客様ですね」

「はい。ですので、お部屋の用意をお願いします。一週間ほどお泊りになられるとの事ですが、お代は私が持ちますので」

「かしこまりました」


 錬金術師のアトリエのロビーで、俺はユリカとカウンターの職員のそんなやり取りを聞いていた。広いロビーではあるが、周辺にいる職員の幾らかの視線がこちらを向いており、


「ああ、あれが、ユリカ社長を助けたっていう精霊術士さんか」

「実は新人らしいぜ。ギルドでも噂されてたし。すげえのが二人来たって」

「社長って、少し抜けてるけどメッチャ優秀だから、そこいらの精霊術士がどうやって助けたんだろう、とは思っていたんだが……。そんな噂が出回るくらいの人なのか」 

 

 という声がひっそりと聞こえてきた。

 

「なんだかギルドと同じ状況になってきてますね、先生」

「ああ、話の出回る速度に驚きだよ」


 ギルド周辺という立地故に、伝わるのも早いのかもしれない。

 そんな事をリンネと話していると、カウンターでのやりとりを終えたユリカがこちらへと歩いてくる。

 秘書か部下か分からないが、隣に白衣姿の、初老の男性を付けて、だ。

 

「もうすぐ部屋の用意が出来ますので、しばらくここでお話をさせて貰っても宜しいでしょうか?」

「ああ、大丈夫だ。――しかしユリカは、この店の社長……だったんだな」

「はい。どうにかこうにか、やらせて頂いておりますわ」


 にこにこと笑顔でユリカは答えてくる。


「しかし、なんでまた、そんな立場の人が街の外周部にいたんだ?」


 確か、外周部に生えている薬草を取っていたけれども。それが社長の仕事だったんだろうか、と思って聞くと、


「ああ、あれは、商談に使うための薬草を採取していましたの。この辺りの薬草でも十分にポーションが作れる、という技術力のデモンストレーションも兼ねて、ですわね」

「へー、そうだったのか」


 ユリカは社長自ら商談に行くタイプだったのか。

 そんな俺たちの会話を聞いてか、ユリカの隣にいた白衣姿の初老男性がペコリと頭を下げた。


「本日はお手を煩わせてすみませんでした、ユリカ社長。そして、お力添え有り難う御座いました」

「いえいえ。これは私がやると決めた事で、やった方がいい事でしたから。それに私も倉庫の鍵を失くすというミスをしでかしましたからね。礼を言うなら、こちらのお二方にお願いします」


 ユリカの言葉にはっと目を開いた白衣の初老男性は慌ててこちらにも頭を下げてくる。


「ウチの社長を……いや、このカンパニーの商談の危ないところを助けて頂き、ありがとうございました、アイゼン様、リンネ様……! 本当に、大事な商談だったので……!!」


 言葉の端々に力がこもっている。本当に、あのカギがターニングポイントだったんだろう。倉庫が開くか開かないかで何が変わったのかは分からないが、彼らにとってメリットがあったのであれば、それはいいことだと思う。


「まあ、俺はただカギを見つけただけだから、そこまで気にしなくていいさ」


 商談をまとめたのは結局は、カンパニーの力なのだから。

 そう言うと、


「ふふ」


 ユリカが楽しそうにほほ笑んだ。


「あれ? 何か面白い部分でもあったか?」

「いえすみません。なんだか、不思議だなと思ってしまって。何だかアイゼン様を見ていると、私を鍛えてくれた人と似たような感覚というか、雰囲気がしますのよ」

「ユリカを鍛えてくれた人?」

「はい。錬金術師と社長業をやるにあたっていろいろな事を教えてくれた、師匠と呼ぶべき方ですの。『自分の事は自分でやる! 組織として役割分担していても、やれる事はやるべきだ!』と。百英雄のお一人である学長から直々に習ったのですから、その通りにしてるんですのよ。アイゼン様も学長も、こちらの力をしっかり認めてくれるところとか、そっくりなんです」


 ユリカの言葉に、隣にいたリンネの耳がピクリと動いた。百英雄という単語を聞き取ったからだろう


「ユリカの師匠が、百英雄の学長さん……?」

「そうです。私を鍛えてくれた人は、国営魔法大学の学長のメルさん、という方なんですの」


 言われ、俺は弟子の顔と名前を思い出す。


 ……あー、魔女のメルか……。


 黒い魔女の帽子と、魔女のドレスを着用して魔法の練習をしまくっていた活発な子だった。

 そういえば、学長になっているって聞いたけれど。


「君は、その英雄の教え子、なのか」

「そうですの。といっても、私は王都の本校の出ではなくて、この近くの分校の出ではありますが。彼女も、自分でやれることは自分でってことで、各地の分校を飛び回って仕事をなさっていますし。ここ数年はずっと、街近くの分校に身を置かれて、色々と教えてくださっていますのよ」

「なるほどなあ……」


 まさか、自分の教え子の教え子に出会っているとは思わなかった。しかもそれが、町一番のカンパニーの社長とか、何というつながり方をしているんだろうか。


 ……しかも、似てるとか言われるし。


 性別はもちろん、喋り方も違う気も違う気はするが。

 何か感じるものがあるんだろう。 


 ……というか、俺の弟子の影響、結構出てるんだな、この街……!


 改めて驚かされる。

 彼らは自分たちが重役について、人を動かして、世界に影響を与える立場にいるんだな、と。


 何となく、彼らを見てきた者としては嬉しさもあるなあ、なんて思っていたら、


「――あ、部屋の準備ができたようです、アイゼン様。リンネ様」


 ユリカがカウンターの方を見た後で、俺たちにそう告げてきた。そして、


「お部屋まで案内させてもらいますね」

「うん。それじゃあ、しばしの間、リンネ共々お世話になるよ、ユリカ」

「お部屋、有り難く使わせて貰いますね、ユリカさん」

「はい。是非是非、我が宿の良い部屋をお楽しみ下さいませ、アイゼン様。リンネ様」


 こうして俺たちは、有難いことにすんなりと、開拓の都市での便利な拠点を手に入れることができたのだった。


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