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「そうだよ。それまでは……違う場所にいたの。でも今日から紫野ちゃんと二人で生活するの」
おいおい、ちょっと待てって。
俺はそんなこと了承した覚えないぞ。
「さっちゃんって今幾つ?」
「ん? 17だけど」
17!? 女子高性と一緒に住むとかあり得ないし、そもそもそんなことしたら犯罪じゃないかっ。
俺はソファに掛けてあった自分のスーツを手にして立ち上がろうすると、いきなり俺にさっちゃんが抱きついてきた。
「行っちゃダメ。此処で私と暮らして? お願い。何もしないし、干渉もしない。お互いここでクラスだけのルームシェアの間柄でいいから」
「ダメだよ。女子高性と一緒に住むとか…それに俺には部屋があるから」
「戻ったらあの人と会うんでしょ? いいの? 会ったりして」
それは……、言葉が詰まった。
あの人には婚約者がいて、俺はただの遊び相手に過ぎない。
幾ら彼女の事を愛していてもその愛は届きはしない。
「戻っても……確かに……」
「なら、ここに居てよ。私、此処に紫野ちゃんがいて欲しいって本気で思ってる」
仕方がない。
戻りたくないのは本当の事だ。
どうせ戻ったらまたあのやりきれない関係を続けていくに違いない。
いい機会じゃないか。
忘れよう、あの人の事を。
「分かった。ただ、次の部屋が見つかるまでだ」
「うんっ。それでいい」
元気な笑顔を俺に振り撒いてさっちゃんは俺の腕に抱き着いた。
夜も深まり俺はソファで寝るというと、ベッドで寝てよ、と言われた。
ダメダメ。俺はソファ、君はベッド。
そう言ったのだがベッドで寝ろとうるさく付き纏う。
「知らないぞ。襲っても」
「そんな事、しないって分かってるもん」
クソ……なんか年下に、しかも女子高性に遊ばれている俺が無性に腹が立ってしまった。
彼女の強い押しに負けた俺はダブルベッド? の中に仰向けになって布団をかぶった。
さっちゃんは俺の隣に横向きになって眠ってしまった。
何も考えず、寝よう。
俺はそう思ってゆっくりと目を瞑った。




