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「ホントだよ。それよりお風呂入ってきて。私も入りたいし」


そう言うと俺の腕を引っ張り立たせてそのまま風呂場へ連れていかれた。

そう言えばさっちゃんに出会ってから俺ってずっとさっちゃんにこうして引っ張られてるよな。

なんか男として情けなくないか、この状況。


「あとで着替えとか持ってくるから。それまでにお風呂に入ってなかったら私が脱がせるからね」


そう言って扉を閉めた。

スーツ姿のまま一人取り残された俺は言われる通り服を脱いで浴室へ入った。

既に湯船に湯が張ってある。

何時沸かしたのかと疑問に思いながらシャワーで頭から体からを洗い流して湯船に浸かった。


「ここに着替え置いとくから」

「あ、ああ」


扉の向こうでさっちゃんがそう言った。

風呂から上がるとさっちゃんが用意してくれたグレーのスウェットとビニールで包装されたままの男物の下着が置いてあった。

なんでこんなの一人暮らしの女性が持っているんだろう。

不思議に思いながら有難く借用した。


「有難う。この服とか下着とか」

「ああー、う、うん。いいよ。私もお風呂入っちゃうね。ゆっくりテレビでも見ててよ」


さっちゃんはそう言って奥の部屋に行きパジャマを持って風呂場に向かった。

俺はその言葉通りテレビの電源を入れて面白くもない番組を見つめていた。

髪の毛をタオルで拭きながらあたりをチラチラ見る。

生活感が感じられない、がらんとした部屋。


「どうしたの? きょろきょろして」

「わっ!」

「どうしたの!? ビックリするじゃん」

「あ、ごめん……」


俺は慌ててタオルを頭から退けた。

不思議そうに見つめる彼女。

俺は彼女の事を全く知らない。


「ねぇ……紫野ちゃんって、どういう人?」


突然そう訊かれても困るんだが。

俺は殺伐とした仕事の事や普段の生活の事を話した。


「へぇ。私とは違うんだね」

「それより、此処で一人で暮らしているのか?」

「うん。今日から」

「今日から?」

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