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そう言って俺の腕を引っ張りながら歩き出した目の前に居る白いコートの女性。

引っ張られるまま彼女を拒絶することなく連れていかれてしまった。

駅から歩いて数分の場所に女性が住むマンションがあった。

駅前のマンションと言うだけで相当家賃が高そうだとは思っていたけれど高級マンションそのものだった。


「ここが……君の……?」

「そう。ここだよ」


俺の腕をがっちり掴んだままそう答えた。

入り口はオートロック式でエントランスには警備員が常駐している。

エレベーターに入ると5階のボタンを女性が押した。

どういう女性ひとなんだろうか、この女性ひとって。


エレベータを降りて一番奥の部屋の前で女性が立ち止まり振り返った。


「ここだよ」


そう言ってポケットから鍵を取り出してドアノブに手を掛けた。

大きくて重たそうな扉がゆっくりと開いた。


「さぁ~、上がって」

「……お邪魔します」


少し掠れた声でそう言うとまた彼女がクスクス笑った。

女性が履いていたショートブーツを脱ぎ、俺も靴を脱いだ。

まだ俺腕を掴んだまま放そうとはせず女性に引っ張られるように部屋にあるソファの前で立ち止まった。


「ここで休んでて。私着替えてくるから」


そう言ってやっと俺の腕を放すと奥に置いてあったベッドに向かった。

広いリビングと扉のない寝室らしき場所を俺は黙ったまま見渡した。

ソファの後ろにはオープンキッチンと食卓、目の前には大きな液晶テレビその奥にベッドが置いてある部屋。


「1人で住んでるのか……?」


奥で女性が白いコートを脱いでフックに掛けているのがちらっと見える。

俺は慌てて目を反らし俯いた。

いい年して女性の着替える姿を見てオドオドするなんて最低だと思ってしまった。


「疲れてない? コーヒーでも飲む?」


自己嫌悪に陥っていた俺に着替え終わって戻って来た女性が声を掛けてきた。

俺はゆっくり顔を上げて女性を見つめた。

女性は俺を見てまたクスクス笑っている。

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